(C)2016Twentieth Century Fox

差別を乗り越えるアクションの破壊力

 エンストした自動車の中・外・下に座り・立ち・寝転ぶ三人のヒロインの、表情とポーズとファッションがかっこいい。その場違いなほどの余裕が示す通り、彼女らはエンストをあっけなく直し、通りかかった白人警官を手玉にとって先導させ、それを追って無茶なスピードで車をぶっ飛ばす。場面のことごとくが場違いな要素でありつつ、その場違いが生み出す痛快な笑いを満載して、映画は走り始める。

 NASAに雇われた三人の黒人女性が、60年代米国の人種差別、女性差別の両方と闘いながら歴史を塗り替える仕事をぶちあげる。彼女たちの存在そのものが場違いであっただろうそんな時代の、その場違いさを逆手にとって映画のパワーにしているのが、この映画だ。ハワード・ホークスの数々のコメディを傑作にした数多くの場違いな場面(『僕は戦争花嫁』の女装したケーリー・グラント!)を継承する、堂々たる正統ハリウッド・コメディがこの映画だ。

 たとえば、両手いっぱいに書類フォルダを抱えたタラジ・P・ヘンソンが、ハイヒールのまま唖然とするスピードで走り抜ける。黒人専用トイレまでの800メートルの距離と、山のような書類の計算のタイムリミットとの闘いが、借り物競争みたいなアクションで描かれるのに噴き出しつつも、観客はたっぷりと元気を注入される。

 トイレという場所で、そんな思いがけない行動・アクションが格差や差別をぶち壊す場面が、この映画には多い。それは差別を壊すだけではなく、差別を超えた相手への理解や共感さえも、映画に導入してくる。例えば、トイレの鏡を介した印象的な会話(ここでのカメラの切り返しが、素晴らしい!)

 ところで、原題の『Hidden Figures』には二重どころか三つの意味が「隠されて」いる。それに気づいた観客は、その三つがこの映画のテーマも形成していること、そしてそのどれもがこの映画独自のコメディの手法で表現されていることを、納得するに違いない。

映画「ドリーム」
監督:セオドア・メルフィ
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
音楽:ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォールフィシュ
出演:タラジ・P・ヘンソン/オクタヴィア・スペンサー/ジャネール・モネイ/ケビン・コスナー/キルスティン・ダンスト/ジム・パーソンズ/マハーシャラ・アリ
◎9/29(金)TOHOシネマズシャンテ他、全国ロードショー!
配給:20世紀FOX映画(2016年  アメリカ 127分) (C)2016Twentieth Century Fox
www.foxmovies-jp.com/dreammovie/