COLUMN

【特集:OPUS OF THE YEAR 2017】グッチ・メイン『Mr. Davis』 復活したオリジナル・トラッパーが本領発揮した大作

JONATHAN MANNION

またまた黄金期を迎えたオリジナル・トラッパー

 そもそも〈トラップ〉はサウンドではなく、リリックの内容に伴う区分であった。それが具体的なビートを示す言葉と認識されていったのは、ショーティ・レッドやゼイトーヴェンの手によるクランクの進化型ビートが脚光を浴びた2005年頃。そして、彼らのビートをアトランタの王道サウンドとして定着させたオリジネイターこそ(ヤング・)ジーズィやグッチ・メインであった。それから10年以上が経ち、彼らもアラフォーの域に突入しているわけだが、一段上のボスキャラ的な地位をキープし続けているジーズィの硬派なヴェテラン感と比べ、何度となくトラブルを引き起こして裁判や懲役刑で活動を停滞させてきたグッチは、それゆえに現在もある種のストリート感を保ち、例えばリル・パンプと絡んでも違和感がないくらいの若さをシーン内で保ち続けているように思える。

 そのまんま『Trap House』(2005年)という表題のアルバムを引っ提げて表舞台に登場したグッチは、ジーズィとの“Icy”や“Freaky Gurl”などトラップ・ホップの古典をアトランタ・ローカルで量産し、2007年にメジャー・デビュー。全米TOP10入りした『The State vs. Radric Davis』(2010年)をピークに旬のラッパーとしてブレイクした。が、その前後からは何度も逮捕を繰り返して活動は安定しないものに。2013年に銃やマリファナ所持での逮捕~服役以降は公式アルバムも途絶えてキャリアを危ぶまれていた(その間も夥しい数のミックステープを出していたのだが)。

 が、そこから2016年に出所してからの活躍は目覚ましく、カムバック作『Everybody Looking』の大ヒットやリル・ウージー・ヴァートとのコラボEP『1017 vs. The World』、さらには〈マネキン・チャレンジ〉で拡散されたレイ・シュリマーの全米No.1ヒット“Black Beatles”への客演などにより、新しい世代のリスナーからもリアクションを得ることに成功。すっかり痩身になったアイスクリームおじさんは、先日の結婚やその過程を追ったリアリティーTVの人気も手伝って、何度目かの全盛期を謳歌している最中なのだ。

GUCCI MANE Mr. Davis GUWOP/1017/Atlantic(2017)

 そんな絶頂ぶりをパッケージしたのが、このたび日本盤も登場したニュー・アルバム『Mr. Davis』である。ミーゴスを迎えた久々の大ヒット“I Get The Bag”を手掛けたメトロ・ブーミンやサウスサイドを中心に、TM88、マーダ・ビーツ、キュービーツ、そしてマイク・ウィル・メイド・イットら現行トラップを推進する腕利きたちがゾロゾロ参加。旧知のゼイトーヴェンも当然のように控えているのが頼もしい。客演には“Party”の返礼となるクリス・ブラウンやタイ・ダラー・サイン、ウィークエンド、モニカらが名を連ね、ラッパーではビッグ・ショーン、スクールボーイQ、エイサップ・ロッキー、ヤング・ドルフ、レイ・シュリマーのスリム・ジミら各地の大物たちがエントリー。そんな豪勢な陣容が、伝統的なサザン・ラップのアクの強さと現行トラップの刹那的なノリの間を行くグッチならではの個性は際立たせている。

 ……かと思えば、この本が出る頃にはサウスサイドと2日で10曲作ったという新作『El Gato The Human Glacier』も登場している模様。地元の活況を支える兄貴分として、彼が2018年もシーンを賑やかにしてくれるのは間違いないだろう。

 

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