INTERVIEW

fhána“わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜” いつになくガーリーに昂揚する歌世界が紡ぎ出す〈あなただけの物語〉

fhána“わたしのための物語 〜My Uncompleted Story〜” いつになくガーリーに昂揚する歌世界が紡ぎ出す〈あなただけの物語〉

制作中のアルバムの成果が一足先に新味へ結び付いたニュー・シングル。いつになくガーリーに昂揚するナンバーが語る〈わたしだけの物語〉〈あなただけの場所〉――

 前作“Hello!My World!!”の発表後は次なるアルバム『World Atlas』を制作中のfhánaが、新シングル“わたしのための物語~My Uncompleted Story~”をリリースする。TVアニメ「メルヘン・メドヘン」のオープニングを担う同曲は、ストリングスの目まぐるしい旋律を伴っていつになくガーリーに突き抜けた疾走チューン。カップリングには厳粛なデジタル・クワイア風の“snow scene”と、都会的なグルーヴを紡ぐtowanaの初作詞曲“ユーレカ”が用意され、アルバムを控えたタイミングながら、バンドの新味を惜しみなく表した作品に。ここ数か月の制作期間の成果を踏まえ、本作を語る4人の言葉はどれも根拠のある自信を窺わせるものだった。

fhana わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~ ランティス(2018)

 

あなただけの物語

――“わたしのための物語~My Uncompleted Story~”はアニメのどういった部分を楽曲へ抽出しようとされました?

佐藤純一「魔法学園同士の魔法バトルの大会みたいな、そういうバトル要素もある魔法ものだとfhánaは過去に『ウィッチクラフトワークス』の楽曲を手掛けているんですけど、その“divine intervention”の発展版みたいなイメージのオファーがあったんです。それに対して、結果的には熱さもありつつ、サビは渋谷系的なメジャー7th感もあり、より可愛いらしい仕上がりになったと思います。歌詞にも表れているんですけど、『メルヘン・メドヘン』の主人公は自分の居場所がない女の子で。友達もいないし家族ともうまくいってない、本を読んでいるときだけが安らげる、そういう女の子が魔法学園に入って、魔法少女として成長していきながら自分の生きる場所を作っていくみたいな、そういう成長物語的なところもあるので、〈自分の場所を作っていく〉というのがこの曲のテーマですね。fhánaもデビューから今年で5年目なんですけど、アニソン・シーンとか、それ以外も含めてfhánaの生きる場所、輝ける場所をがんばって作ろうとしてきたこの5年とも重なるし、誰しもが意識的にせよ無意識にせよ、学校なり、会社なり、家庭なりで自分の生きる場所を作るために戦っている。それが上手くいかないこともあるかもしれないけど、歩んできた人生は自分だけの物語で、間違いなんかじゃない。そういう意味で〈わたしのための物語〉――つまり、聴いてくれる人全員の〈あなただけの物語なんだよ〉って伝えられるものにしたくて」

――音の面のコンセプトは?

佐藤「歌詞に〈Wow Wow〉ってあるんですけど、まずその〈Wow Wow〉縛りがあったんです(笑)。でも〈Wow Wow〉ってある種、伝統的な歌謡曲のワードでもあるなと。〈Wow Wow〉を入れる意図にはライヴでお客さんと盛り上がるっていうのがもちろんあるんですけど、80年代あたりのアイドル歌謡の香りも出せたらなと思って」

――ストリングスがふんだんに使用された曲ですが、背後でテクノ・ポップ風の電子音も鳴っていたり。アレンジはバンド名義ですが、これは佐藤さんのデモにyuxuki wagaさんとkevin mitsunagaさんのアプローチが入ってきてという?

yuxuki「ギターは佐藤さんと相談しながらスタジオで決めたんですけど、メインのリフは最初から打ち込みで入ってたから、それを弾けるようにアレンジして。その代わり、好きにやっていいよってところはホントに好き勝手やって。ソロとかグチャグチャですよね。〈楽しい~!〉って感じが出てる(笑)。スタジオワークとしてはここ最近ですごく上手くいった曲ですね」

――kevinさんはいかがです?

kevin「さっきおっしゃってたテクノ・ポップっぽい音とか、電子音系が主な担当ですね。今回は佐藤さんの家に行って、直接イメージを説明してもらいながら音を調整したのがいつもと違った点で。意志疎通がラクなので、いつもより佐藤さんの頭にあるイメージを具現化しやすかったし、精度も高くできたのかなと」

――歌はどうですか?

towana「〈Wow Wow〉の照れ臭さを飛び越えたらあとは歌いやすかったです。作品的にも、サウンド的にもそうだし、歌詞にも〈キラキラ〉って入っているので、その感じを出したいと思って歌った感じです」

――全体的に、fhánaとしてはこれまでにないぐらいにガーリーな歌詞ですよね。

towana「fhánaの曲は〈僕〉っていう一人称が多いんですけど、今回は〈わたし〉だし、アニメ自体も〈美少女〉って感じだから、いつもよりは可愛らしさみたいなものを出してもいいのかなあって。それが歌い方にも反映されていますね」

――結果、言葉もサウンドも光量の多い印象になりました。

佐藤「光だけでなく、ギターがノイジーだだったりとコントラストをつけてますね。あと、基本的にサビは二つのコードの繰り返しで、意外とシンプルだったりするんですけど。渋谷系っぽくもあるし、リズム的にはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの“You Made Me Realise”っぽくも(笑)。Corneliusの“New Music Machine”とかもそうですけど、メジャー7thで1度・4度・1度・4度を繰り返す気持ち良さがありつつ、トリック的にメロディーの音程は変わらず転調させたりもしてるんですけど、アニメの主題歌でこういうメジャー7th進行をやっている曲は意外とない気がしたんで、作り手としてはそこも楽しんでいるポイントですね」

 

ひとつの区切りの前に

――では、続いて同時収録の2曲ですが、まずは【アーティスト盤】の“snow scene”。

yuxuki「タイトル曲が超ポップだったんで、全然違うものを作ろうかなって。デジタル・クワイアをやろうと思って声を重ねまくって、北欧っぽい雰囲気にしたらこうなりました。歌は16~18トラック重なってるんですよね。ベースは5本、ギターも20本ぐらい重なってて。重ねることであの厳かな雰囲気を作った感じです」

佐藤「コーラスは低い部分も男性の声じゃなく、towanaの声を加工して作っていて。高い部分はファルセットできっと出るだろうって、ものすごく高い部分がありますね(笑)。ハーモニーの部分もあれば、あえてユニゾンになってまたパッと広がったりとか、そういう緩急も考えつつ作りました」

――歌に関してはどうですか?

towana「曲の雰囲気に合うように、空気成分多めの歌い方で。ただ、あまりにもコーラスが多くて、だんだん自分の歌っている音がどれかわからなくなる現象が起きて、フラフラになりました(笑)」

――kevinさんの役割は?

kevin「僕の担当でいちばん目立つのは曲の前半部分とかに入っているリズミカルなノイズですね。たまたまビョークっぽい質感のものが作れて、個人的に気に入っています(笑)。それを、もともとyuxukiさんが作ってた違うタイプのノイズと合わせて」

――歌詞はいつもの林英樹さんにどういうオーダーを?

yuxuki「曲を作っているときにそれこそ北欧の、雪の降っている町みたいな架空の画を想像していたんですけど、そこに佐藤さんから、〈故郷の田舎町に取り残されてしまった人の歌〉っていうアイデアが出て。主人公の友達は夢を追い掛けてなのか都会に出て行ってしまってて、自分だけがその町に残っている。それでも自分はこの町で生きていくっていう歌詞にしようということで。それを受けて、冬の風景の厳しさを通してそのなかにある決意、強さみたいなものを表現しようかなと思って、それを絵画的にというか、抽象的に、アブストラクトな感じで書いてくださいってオーダーしました」

――一方、【アニメ版】に収められているのは“ユーレカ”です。

yuxuki「この曲は、小松未可子さんの作品に参加したときにご一緒した井上泰久さんにサックスを吹いてもらっていて」

佐藤「サックスが入るとシティー感が出ますよね。ギター・ソロの部分には街のフィールド・レコーディングっぽい音も入っていて。“snow scene”が〈取り残された人〉の曲だとしたら、こちらは都会、〈都市に出てきた人〉の歌。シティー感のあるものにしたいと思ってサックスを入れたり、ポスト・トラップ感を意識してTR-808のハイハットを入れたりしたアーバン・ブルースです。あと、この曲はfhánaのなかでも音数の少ない曲なんですけど、録音からすごくこだわって、良い音で録れたなっていう。歌もギターも超良い音です」

yuxuki「良いアンプを用意してもらって、マイキングからアンプやギターのヴォリュームの設定まで詰めて。録り音に失敗しても化学調味料でごまかせるんですけど、やっぱりそもそもの素材を綺麗に録ったほうが、ミックス後の音もさらに良いので」

佐藤「“Hello!My World!!”を出してからアルバム作りが本格化するなかで、いままで以上に録り音にこだわりはじめて、試行錯誤していたんですよね。で、“ユーレカ”はいちばん最後に録ったということもあり、それまでのノウハウを活かして、ミックスも含めて成果が発揮できたかな、って」

――あと、この曲で注目なのはtowanaさんが初めて歌詞を書いているという点で。towanaさんが歌とどう向き合われてるのかが出ているように思いました。

towana「自分のことを書きたいと思っていたわけではなくて、この曲の主人公――〈都会に出てきた人〉のことを思って書いたんですけど、まあ、自然と〈自分〉が出ちゃうところもあったんでしょうね(笑)。これまでは歌っていて〈自分だったらここにこういう言葉を乗せたいな〉とか考えることもあったので、それを自分の思い通りにできたっていう点で書く作業はすごい楽しかったです」

佐藤「僕の感想レヴェルですけど、歌詞はある意味で純文学っぽい、私小説っぽいものになったなあって。〈歌詞を書きたい〉って話は結構前から出ていたんですけど、いままでは全部林さんが書いてて、すごくコンセプチュアルにやってたんで、タイミングを計ってた部分があるんですよね。で、いま作っているサード・アルバムはひとつの区切りだし、ここからまた新しいことをどんどんやっていこうっていう時期の最初の一歩としてやってみるのもfhánaのストーリーとしていいんじゃないかと思って。初めての作詞だから心配もありましたけど、最初に上がってきた時点で〈良いんじゃないですか?〉みたいな言葉しか出てこなかったですね。towanaから〈ホントに良いと思ってるんですか?〉って疑われるぐらいに(笑)。本人はどう思ってるか知らないけど、さっき話に出ていた〈towanaの歌い手としてのコアな部分〉がそのまま出てる感じがするなあって思いましたね」

――サウンド面のトライはいかがですか?

佐藤「シンプルなものを作りたかったっていうのがずっとあって、かつリズム重視で、メロもしっかり泣けて、みたいな感じで。サビなんかはJ-Pop的なマイナー・コード感もあっておもしろいバランスなんじゃないかなと」

――kevinさんは、この曲の制作はいかがでした?

kevin「普段はソフト・シンセで作ることが多いんですけど、この曲ではハード・シンセを使っていて。ソフト・シンセだと〈ちょっと音が細いね〉って話になったので、実機のシンセサイザーを鳴らしてレコーディングするっていう手法を取ったら、いい感じにむっちりして、太めの質感になって。なんか肉感的になるんですよ。そういうやり方でちょっとシティー感のあるシンセを入れたりしました。あとはフィールド・レコーディングの素材を5個ぐらい重ねて、間奏の〈街の音〉の質感を出したりしています」

佐藤「意外とあの街のSEはこだわって作っているんで(笑)」

kevin「バスのクラクションだけの音声ファイルがあったりするんです(笑)。佐藤さんから何回も〈NY〉ってキーワードが出て」

――アルバム制作の成果も反映された今作は、幅の広い3曲になりましたね。

kevin「アニメの主題歌から入ってきてくれた人が、カップリングも聴いて〈fhána、こんな広い方向性でやってるんだ〉って思ってくれたらいいですよね」

――そしてアルバムのほうも期待してます。

yuxuki「めっちゃ良いですよ。楽しみにしていてください」

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