アメリカ本国で公開されると、瞬く間に初日3日間の公開初週の興行収入が約150億円を数え、前代未聞とも言える記録を打ち立てつつある映画「ブラックパンサー」。同じマーベル作品としては「デッドプール」の成績を超え、「アベンジャーズ」に次ぐ歴代2位なった。さらに、アメリカでは公開2週目でボックス・オフィスの売り上げは約4億ドルを突破し、アメリカの映画史上4番目にランクインすることが決定に。若手黒人映画監督であるライアン・クーグラー監督がメガホンを取り、アフリカに位置する架空の国家、ワカンダ王国を舞台にした本作。チャドウィック・ボーズマンやマイケル・B・ジョーダンといった気鋭の黒人俳優や、ルピタ・ニョンゴ、アンジェラ・バセット、そしてフォレスト・ウィテカーら、ブラック・ムーヴィー界を支えてきた実力派俳優・女優陣も多数出演していることでも注目を集めている。

また、「ブラックパンサー」が大きく世間を騒がせているトピックのひとつに、その音楽があることを忘れてはならない。なぜなら、映画のテーマ曲は、現在のヒップホップ・シーン、いや、音楽シーンの〈キング〉とも呼ばれるケンドリック・ラマーが担当したものだからだ。そして、ケンドリックとその所属レーベルTDEのボス=アンソニー・“トップ・ドッグ”・ティフィスが映画「ブラックパンサー」にインスパイアされて制作したアルバム、その名も『Black Panther: The Album』を公開に合わせてリリース。

本稿では、インターネット・ラジオのblock.fmにて、6年以上にわたってヒップホップ専門番組〈INSIDE OUT〉を放送しているディレクターのDJ YANATAKEと、番組のパーソナリティを務める音楽ライターの渡辺志保の2人が、映画「ブラックパンサー」と絡めつつ、『Black Panther: The Album』を解説する。

『Black Panther: The Album』 Top Dawg/Aftermath/Interscope/ユニバーサル(2018)

 

ヒップホップ的にも語れる映画「ブラックパンサー」

渡辺志保「公開に先駆けて『ブラックパンサー』の試写会に伺ったんですけど、とにかくすごく引き込まれました。ワカンダ王国の持つプリミティヴさとフューチャリスティックさのバランスが、すごく高次元で組み合わさっていて。コスチュームも素敵だったし、もちろん音楽に関しては言うことなし、というか」

DJ YANATAKE「いままでマーベル作品に関してよく知らない人もすごく楽しめるし、ストーリーの軸となる善悪の部分も含めて楽しみやすいしね。本当にアメリカではいま、すごい反響を呼んでいて、アメリカの子供たちに与える影響もすごくデカいんだろうなと思ったな。子供たちが『ブラックパンサー』に連れて行ってもらえるってことで、踊りながら喜んでいる動画なんかもあったよね」

渡辺「そうですね。ブラックパンサーは有色人種のヒーローということで、今後、ハリウッドによるアジア人ヒーロー作品なんかも観られるのかなあ、と少し期待しちゃうかも」

YANATAKE「何より、ヒップホップ的にもいろいろ語れる内容になってるし、個人的には近年におけるベスト映画だな」

渡辺「劇中、“All The Stars”がすごく良いタイミングでかかって、最後にはケンドリック・ラマーの名前もコンポーザーとしてバーン!と出てくるじゃないですか。ライアン・クーグラー監督って、86年生まれとまだ若くて、アメリカ西海岸のオークランド出身なんですよね。ケンドリックも同じアメリカの西海岸出身で、年齢も監督とほとんど変わらないんですよ。そこで、本作のテーマ曲をケンドリックに委ねたということは、クーグラー監督にとってもひとつの達成感があったんじゃないかなと思いました」

※ケンドリック・ラマーは87年生まれ

『Black Panther: The Album』収録曲ケンドリック・ラマー & SZA“All The Stars”