INTERVIEW

ジョフロワ・クトー インタヴュー「生涯ずっとブラームスとともにありたい」 ブラームスに魅了されたピアニスト

©LA DOLCE VOLTA

生涯ずっとブラームスとともにありたい

 ブラームス好きというピアニストは多いが、ジョフロワ・クトーのように10代前半からずっとブラームスに惹かれている人は稀ではないだろうか。

 「6~7歳から遊び半分でピアノを弾いていましたが、13歳のころにブラームスの《6つの小品作品118》に出合い、すっかり魅了されてしまいました。もっと知りたい、奥に何かがあるという気持ちが募り、ピアニストとしての道を目指すようになったのです。恋をしたときの思いと同じです。以来、ブラームスを弾き続け、いまや自分の音楽と化し、全作品が大好きです」

 子ども時代は体操選手を目指して練習に励んでいたが、腕を故障して体操は断念、ピアノひと筋となった。数年後、ブラームスの《7の幻想曲作品116》を演奏してパリ国立高等音楽院に入学を果たし、その後ピアニストの道が開けたのは2005年に参加したブラームス国際コンクール。ここで優勝の栄冠に輝いた。

 「ブラームスの作品ばかりのコンクールで、もう受けるしかないと思いました(笑)。ブラームスが作品を書いたチロルの湖畔の街での開催です。私はパリ音楽院でミシェル・ベロフのクラスで学んだのですが、彼は作品の内奥に宿るものを探求する姿勢を教えてくれ、ピアニストとしての成長を助けてくれました」

GEOFFROY COUTEAU ブラームス:ピアノ独奏曲全集 La Dolce Volta(2016)

 そんなクトーがブラームス『ピアノ独奏曲全集』(6枚組)をリリース。これらを作曲年代順に録音し、聴き手とともに作曲家の変遷をたどろうとしている。

 「ジュリアス・カッチェン(アメリカ、1926~1969、ブラームスのピアノ独奏曲と協奏曲をすべて録音)へのオマージュのような形で作りました。コンクールのときのプログラムは、彼が1964年にロンドンのウィグモアホールで演奏したときの選曲にならいました。ブラームスは室内楽もすばらしい作品を多数残していますから、今後は室内楽も録音していきたい」

 クトーのブラームスは、重厚で厳格で北国特有のほの暗さに包まれた従来のブラームス観をくつがえす叙情的な演奏で、タッチもリズムも特有の繊細さが特徴。各音の奥に微妙な静けさが宿っている。とりわけ美しいのはCD6に収録されている作品116~119。こうした小品こそクトーの本領発揮。美しい詩が浮かび、絵画的世界へといざなわれていくようである。

 「可能なら、ブラームスの映画を作りたい。オリジナルの楽譜を研究し、作曲家として人間としてのブラームスを調べ、あらゆる面でのブラームスが自分のなかに根付いていますから。今後は歌曲の伴奏にも挑戦したいですね。いまは室内楽の録音が進行中で、チェロ・ソナタを録音したばかり。私は生涯ずっとブラームスとともにありたいと思っています」

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