歌い出しのかつてないほどの力強さ。オートチューンがパッと抜けて耳に滑り込んでくる〈たった一人走る時〉というフレーズのリアリティー。冒頭の“RUN”から感じ取れる覚悟と寂寥感に打ちのめされる。メジャー4作目はゲスト一切なし。すべてをひとりで作り上げた真のソロ・アルバムになった。映画やドラマの主題歌もDJツール然とした激シンプルなアシッドもオールド・スクールなハウスも2ステップなガラージも開放的な体を成しているが、それ以上に誠実に自分(の音楽)と向き合ったパーソナルな印象が強く(少なくとも僕にはそう聴こえる)、言葉も音も身に沁みるように自然と入ってくる仕上がりに。剥き出しの声で〈自分だけがいる〉と歌う“DEAD WAX”の美しき寂しさに揺さぶられる。