テーマは原点回帰 さまざまな経験を経て届けられる“シンプルに美しいもの”

 サラ・ブライトマンの5年ぶりの新作『HYMN~永遠の讃歌』は、原点回帰がテーマのひとつになった。長期間にわたって厳しいトレーニングまで積んだ、宇宙飛行中止の決断がそのきっかけになったようだ。

SARAH BRIGHTMAN HYMN~永遠の讃歌 ユニバーサル(2018)

 「訓練を通して感じたのが地球の尊さだった。一方で、断念する過程で自分の人生や私たち人間の世界をもう一度見つめ直すことになり、それが原点回帰へとつながった」と語り、アルバムの最後に彼女を有名にした初ヒット曲《タイム・トゥ・セイ・グッバイ》を入れることにしたと言う。しかも再レコーディングしていて、壮大なサウンドのオリジナルとは異なる優しさと温かみに溢れた歌で、そのエモーションがアルバム全体に流れる親密感を象徴しているように思える。

 「今の世界は、ディストピア(ユートピアの反対語)と呼ばれる不安な社会が蔓延しているでしょ。だからこそ、美しくて、安心できて、心が温かくなり、ポジティヴな気持ちにもなれる。そんな音楽を届けたいと思ったの。その象徴になるのが人の声による合唱だと思い、多くの曲でクワイアと共演しているのよ」

 このコンセプトの下でサラは、ふさわしい曲を探すのに精力を注いだ。彼女の元には“いつか歌いたい”楽曲の膨大なリストがあるけれど、よりベストな曲を求めて、リサーチに2年もの歳月が費やされた。そのなかで出会った曲にYoshiki作詞・作曲の《Miracle》や、エンニオ・モリコーネがかつて西部劇のために書いた《私たちのために歌う》がある。

 「モリコーネの美しいメロディが私には回転木馬のように感じられて、ぜひ歌いたいと思ったの。ところが、モリコーネに許諾をお願いしたら、いつ書いた曲だっけ?って本人も忘れていたの。彼は、自分の曲に歌詞をつけて歌うのをなかなか許可しない人でしょ。歌詞には当然厳しくて、全然ダメ!!なんて返されて、何度も書き直すことになったのよ(笑)」

 アルバムのタイトルになった楽曲《HYMN》もある意味で原点回帰の曲かもしれない。今回再び組んだプロデューサーのフランク・ピーターソンと1990年に初めて出会った頃の思い出の曲でもある。

 「彼にプロデュースを依頼する前に、音楽的な志向を知りたくて20曲入りのカセットをもらって聴いたの。その1曲目にUKのバンド、バークレイ・ジェイムス・ハーヴェストの《HYMN》が入っていて、この曲で彼とならばうまくいくと、組むことを決断したの。それ以来、なかなかアルバムのテーマに合うことがなく、ようやくレコーディングすることが出来たのよ」

  今回いち早くアルバム制作を勧めたのもフランクだった。やはりサラの音楽に不可欠な存在なのだ。

 


LIVE INFORMATION

SARAH BRIGHTMAN 来日公演
○4/15(月) ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
○4/17(水) 福岡サンパレス ホテル&ホール
○4/19(金) 広島文化学園HBGホール
○4/22(月) 大阪城ホール
○4/23(火)・24日(水) 横浜アリーナ
○4/26(金) アピオ 岩手産業文化センター

udo.jp/concert/SarahBrightman