INTERVIEW

SOLEILと歩くTOWER VINYL SHINJUKU

タワーレコードのアナログ専門店で、それいゆが出会ったレコードは?

SOLEILと歩くTOWER VINYL SHINJUKU

3月21日、タワーレコード新宿店の10階に開店したアナログ専門店〈TOWER VINYL SHINJUKU〉。Flagsの最上階という利点を活かした、大きな窓から光が差し込む明るく開放的な雰囲気はレコード・ショップとしては異色だ。そのオープンな雰囲気や充実した品揃えで、レコード・マニアや〈これからレコードで音楽を聴いてみたい〉という方、あるいは〈どんなお店なんだろう?〉と気になった方など、たくさんの音楽ファンが足を運んでいるとか。

同店のスタート・ダッシュ的な盤となっているのが、開店前日にアナログがリリースされたSOLEILのセカンド・アルバム『SOLEIL is Alright』。60sガール・ポップやビートルズ風、モータウン、サーフ・ロック、フレンチ・ポップ、フィル・スペクター風……と、主に60年代の音楽への深い愛情が詰まったそのサウンドは絶対にアナログで聴きたくなるもの。TOWER VINYLでベスト・セラーとなっていることにも思わずうなづいてしまう。

そんなSOLEILは〈NO VINYL, NO LIFE.〉ポスターに信藤三雄撮影の写真で登場している。これをきっかけとして、SOLEILのヴォーカル・それいゆにTOWER VINYLの店内を見て回ってもらった。取材中はもちろん『SOLEIL is Alright』がスピン。自慢のサウンド・システムから大音量でそれいゆの歌が流れ出す。

お店を見てもらいつつ、それいゆにインタヴュー。リリースされたばかりの『SOLEIL is Alright』のアナログについては、「まだ聴いてないんです(笑)」と言う。「普段ご自宅でレコードを聴かれますか?」と訊くと、「一応プレーヤーは持っているんですけど……たまーに聴く感じですね(笑)」との答えが。そのマイ・プレーヤーについては、「自分のレコード・プレーヤーが欲しくて、誕生日に買ってもらったんです。音が良いやつじゃなくて、ポータブルの、パンダの形の(笑)。でもやっぱり、音が悪いので……」と苦笑い。パンダ型のキュートなレコード・プレーヤーで聴く『SOLEIL is Alright』も、それはそれでなんだか良く聴こえそう。

言うまでもないことだが、アナログ盤には〈大きい〉というモノとしての特徴がある。自身の顔が大きく印刷された『SOLEIL is Alright』のジャケットを見ながら、「実際(の自分の顔)より大きいと思って」と笑うそれいゆ。また自身の作品がアナログでリリースされることについては「不思議です。ありがたいですけど、(過去の)すごい方々が並んでるなかに自分のアルバムも置かせてもらってるのが不思議で」と、音楽の歴史がぎゅっと凝縮されたような店内を眺めながら語る。

それいゆに「ご自身でレコードを買いますか?」と尋ねると、「お小遣いで買ったことはまだないんです。ふふふ(笑)。でも、自分が聴きたくて買ってもらったものはあります」と言う。気になるそのレコードは、「私の知り合いなんですけど(笑)、あヴぁんだんどっていうアイドルのレコードを買ってもらいました」。SOLEILのライヴではあヴぁんだんどの宇佐蔵べにがDJをするなど、両者は親交が深いことでも知られている。それいゆ家のパンダ型プレーヤーにはあヴぁんだんどの7インチ盤が常に乗っているのだろうか?


この日取材に同行したSOLEILのプロデューサー/ベーシストのサリー久保田にTOWER VINYLについて訊くと、「こんな広いところは見たことがないですね」と驚いた様子。「海外のお店も結構狭いところにあるし、日本のレコード屋さんとあまり変わらない印象です」。その横でそれいゆが「(レコード屋は)すごい狭い」とうなづく。

海外のレコード・ショップについてもう少し久保田に訊いてみる。

「海外は屋外でフリー・マーケットがあって、出店みたいなレコード屋が集まって売るんです。盤はいっぱいあるように見えて同じものが多いし、意外とどこで買っても値段は変わらなくて。あと、去年ロサンゼルスのお店に行ったんですけど、そこは60年代のものやサイケなものばかり扱ってました。でも、そんなに安くなかった気がする(笑)。レアなものの値段は東京とあんまり変わらない感じで」。

ところで、SOLEILの最新作『SOLEIL is Alright』にはスカートの澤部渡が楽曲を提供している。澤部の参加について久保田は、「もともとスカートの音楽がすごく好きだったので、澤部くんに(曲を)頼みたいなと思ってて」と語る。澤部が作詞作曲した“卒業するのは少しさみしい”は、そのものずばりの卒業ソング。CDがリリースされたのは昨年9月だったため、「〈ちょっと時期が合わないかも〉と言ってたんですけど、いま(取材を行った3月末)はちょうどいい時期になりましたよね」。

つい先日それいゆは中学校を卒業したばかりだとのことで、なんとなくセンチメンタルな曲のようにも思えるが、そこはSOLEIL。ビートルズの“A Hard Day's Night”風のアレンジによって、カラッと乾いたモノラル・サウンドがパワフルな気持ちの良い一曲に仕上がっている。

『SOLEIL is Alright』収録曲“卒業するのは少しさみしい”
 

ちょうどTOWER VINYLにはカクバリズムのポップアップ・ストア〈カクバリズムデリヴァリー〉が出店中で、所属アーティストたちを本秀康が描いた立て看板が並んでいる。そこにはもちろんデフォルメ化された澤部の姿も。「曲を書いてもらったときにCDをいただいて、それからスカートの曲をよく聴くようになりました」とそれいゆ。スカートの好きな曲につい尋ねると、「え~。どうしましょう? 全部好きで……。ちょっと聴いていいですか?」とそばにある試聴機でスカートのアルバム『20/20』(2017年)を真剣な表情で聴きはじめる。

その横で久保田は、「定番なんですけど、僕は“CALL”が好きですね。去年の年末に(作編曲家の)吉田哲人くんの〈涙〉ってイヴェントに澤部くんが弾き語りで出て、“卒業するのは少しさみしい”を歌ってくれたんですよ。それがすごく良かったんです。感動しましたね」と語る。

数分後、試聴機のヘッドホンを外したそれいゆに「決まりました?」と訊くと、「全然決まらない……。どうしましょう?」と困り果てた様子。稀代のメロディーメイカー、スカートの作品のなかから〈これ〉という一曲は決めがたいよう。「じゃあ、全曲お気に入りということで!」と声をかけると、それいゆは「結局そうなりますね(笑)」と笑う。


J-Popの中古盤を見ているそれいゆに昔のアイドル・ソングについて訊いてみる。

「あんまり聴かないです。でも、お母さんは松田聖子さんの歌が好きですね(笑)。家でたまーにかかってるので、何曲か知ってます」。

J-Popコーナーでは、それいゆはタモリのアルバム『タモリ』(77年)がどうも気になる様子。レコードを手に取り、「えっ。これがあのタモリさん? いつもサングラスをしてるからわからなかった」と驚く。その後ろにある未CD化の『タモリ3 -戦後日本歌謡史-』(81年)を見て、「そんなにレコードを出してるんですか? (どんなアルバムなのか)単純に気になります(笑)」と言う。

そんなわけで、『タモリ』を店内のオーディオで聴いてみることに。「(聴くのが)楽しみ」と語るそれいゆ。ジャケットに写る眼帯を付けたタモリのバスト・ショットを見て、「タモリさんの目を初めて見たかも」と言う。

『タモリ』は、〈初めて日本語を聞いた外国人の耳に聞こえる日本語の物真似〉という設定の〈ハナモゲラ語〉による“ハナモゲラ相撲中継”や、中国語・韓国語・英語などをデタラメに真似た“第一回テーブル・ゲーム世界選手権大会 於 青森”(〈四ヶ国語麻雀〉として有名)などが収録された作品。タモリの〈密室芸〉が収録されたレコードで、純粋な音楽作品というわけではないが、レコード文化の奥深さを物語る一枚だ。

予想とは違ったであろうレコードの音に苦笑いするそれいゆ。そのまま続けて久保田がおすすめするレコードも聴くことに。「定番を聴いてみたら?」と久保田が差し出したのは、ロック史に刻まれる名盤、ビーチ・ボーイズの『Pet Sounds』(66年)だ。

まずはB面の1曲目“God Only Knows(神のみぞ知る)”から。TOWER VINYLではALTECのA5という劇場用ヴィンテージ・スピーカーからストア・プレイの音を流しているのだが、その音を聴いた久保田は「やっぱり音がいいですね」としみじみ語る。

それいゆはジャケット写真が気になるようで、「サムライだ」と裏ジャケットを眺めながらつぶやく。66年1月に来日した際、東映京都撮影所で撮られたと言われているその写真には、ビーチ・ボーイズのメンバーが侍の衣裳を着た姿が写っている(ちなみに、『Pet Sounds』制作中だったブライアン・ウィルソンは不在)。それを見ながら「(オマージュで)それいゆちゃんがヤギに餌をあげている写真を撮るのもいいかもね」と久保田。

最後に、この日久保田がTOWER VINYLで見つけたレモンドッグの“起きなよスージー”(74年)を試聴。初期のビートルズ調のロックンロール・サウンドが店内に響きわたる。

レモンドッグの“起きなよスージー”について久保田は語る。

「〈ネオ・マージー・ビート〉っていうんですけど、ちょっと時代遅れ感のある70年代の音楽で。グループ・サウンズが終わった後、世の中的にはハード・ロック全盛だったわけですけど、こういうロックンロール・バンドも結構いたんですよね。ガレージ(・ロック)好きの間では有名なバンドで、よくDJがかけてますね。ちょうどキャロルと同じ時代なんです」。

7インチとしてはそれなりの値が付けられている盤だが、久保田は「なかなかないので」とそのままお買い上げ。

取材の最後、それいゆにTOWER VINYLの感想を訊いてみた。

「レコード屋さんってあんまり入りやすくない感じですけど、ここはすごく開放感があって明るくて、入りやすそうだと思いました」。

TOWER VINYLのコンセプトは〈敷居は低く奥が深い〉。そう掲げられた言葉どおりの印象をそれいゆも持ったよう。

スカート、タモリ、ビーチ・ボーイズ、レモンドッグと、この日SOLEILがTOWER VINYLで出会った音楽は時代も国も音楽性もバラバラ(タモリのレコードが音楽作品かは措くとして)。だが、そんなバラバラな点と点がレコードというものを介して一本の線で繋げられたようにも感じる。TOWER VINYLとはそんな音楽のおもしろさや豊かさ、多様さを体験できる場ではないだろうか。


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