アイリッシュ/フォーク・パンク専門レーベルのUNCLEOWENが仕掛ける音楽の宴は、もはや毎年の〈フジロック〉で恒例になりつつある。これまでレーヴェン、オンダ・ヴァガ、スキニー・リスターといったバンドが精力的に、そして場合によってはゲリラ的に連日ライヴを行い、苗場の地を揺らしてきた。
パンクの精神と感性を持った世界各国のフォーク・ミュージックのショウケースとも言えるこの〈UNCLEOWEN枠〉を、楽しみにしているフジロッカーはきっと少なくないだろう。そんな人たちの期待に応えるべく、同レーベルが今年の〈フジロック〉でお披露目するのが、紅一点シンガーのバーバラ率いるロンドン在住のバーバレラス・バン・バンだ。今年3月に登場したタワレコ限定のコンピ『Folk Rock』に参加していたので、すでにご存知の方もいるかもしれないが、改めて彼女たちのことを紹介しておきたい。
〈Bang Bang〉だなんて、耳にしただけで思わずワクワクしてしまうバンド名を持ったこの5人組は、2011年に産声を上げる。イタリアからロンドン入りし、ダンサーとしてさまざまな舞台に立ってきたバーバラが、より自由な表現を求めてバンド結成を思いついたことからすべてが始まった。
「すぐにメンバーを募って新しい音楽を鳴らしたわ。当時は自分がどんな音を鳴らしたいのかわからなかったから、本当に多くのミュージシャンたちといろいろなタイプのサウンドを試したの。そして最後に集まったのが、いまの個性豊かな5人。5つの個性がぶつかり合って完成した私たちの音は、もう〈芸術の爆発〉といった感じね!」(バーバラ:以下同)。
リトアニアやラトヴィアなどそれぞれ異なる土地で育ち、さまざまなキャリアを持つメンバーが集まったバーバレラス・バン・バンは、結成以来、ヨーロッパ各地のフェスで演奏しながらその存在をアピール。そして、7月16日に初の単独音源集『Barbarrela's Bang Bang』を日本限定でリリースする。
「ユーロ・ジプシー・フォーク、またはグレゴリアン・ジプシー・ゲットー・パンク」と語る全9曲は、ギター、ダブル・ベース、アコーディオン、パーカッションによるアコースティックでトラディショナルな演奏を基調としながら、激しいテンポ・チェンジやシアトリカルかつゴシックな装飾を纏い、何が飛び出すかわからない奇抜なおもしろさがある。異常に熱量の高いインプロは、このバンドが生粋のライヴ・アクトであることを如実に物語っていると思うのだが、どうだろう。
もちろん、声色を変えながらダイナミックに抑揚をつけていくバーバラのヴォーカルも圧倒的だ。アクロバティックとも表現されるその歌唱は、本人いわく「エディット・ピアフやグウェン・ステファニーと比べられることがあるわね(笑)。ワーオ!」とのこと。
さて、〈フジロック〉では3日間、毎日ライヴを行うそうだ。演奏のみならず、写真の通りヴィジュアルも含め、楽しさと妖しさが入り混じったカーニヴァルのような世界観で私たちを楽しませてくれるに違いない。日常から切り離された雰囲気の会場に、さらなる異空間を作り出す——そんなステージを期待したいところ。
「ハーイ、フジロッカーズ! パーティーの準備はできてる? みんなが夢中で飛び跳ねられるように、バーバレラスが〈Bang Bang〉させてあげるからね!」。
どうやら、彼女たちはすでに準備万端のよう。今年のベスト・アクト最有力候補として、観逃すわけにはいくまい。
▼関連作品
左から、レーヴェンの2011年作『Svensk Kultur』(Rafven/UNCLEOWEN)、2012年にリリースされたオンダ・ヴァガの編集盤『Moshi Moshi: Best Album For Japan』(UNCLEOWEN)、スキニー・リスターの2013年作『Forge & Flagon』(Sunday Best/UNCLEOWEN)、2014年のコンピ『Folk Rock』(UNCLEOWEN)
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