INTERVIEW

Tempalayの創世記が、いま始まる

新時代を告げる新作『21世紀より愛をこめて』を語る

(左から)藤本夏樹、小原綾斗、AAAMYYY

2010年代後半のサイケデリック・ポップを先導してきたTempalayが、ニュー・アルバム『21世紀より愛をこめて』を完成させた。

昨年7月にそれまでサポートだったAAAMYYYが正式加入。新体制の初作として発表された『なんて素晴らしき世界』収録の“どうしよう”がBTS(防弾少年団)のRMにSNSで取り上げられ、バズが起こったことも記憶に新しい。海外アーティストのオープニングのみならず、国内の著名アーティストからの対バンオファーも増え、バンドを取り巻く状況はこの一年でドラスティックに変化した。

前作のリード・トラックである“どうしよう”や“SONIC WAVE”も含んだ全12曲のアルバムは、暴力的かつ退廃的な雰囲気はそのままに、これまで以上に〈美しさ〉にフォーカスを絞ったような一枚。ジャンルの融解が前提となったその先で、各楽器の音色をブラッシュアップすることにより、小原綾斗のソングライティングの魅力がより露わになっていて、曲によってはスタンダード感すら漂う。

PERIMETRONと山田健人が共同で制作した“のめりこめ、震えろ。”のミュージック・ビデオでメンバーは戦士のような恰好をしているが、かつて“革命前夜”を歌ったバンドが、いよいよ革命の朝を迎えようとしている。それはきっと、日本の音楽シーンにとっての新たな時代の幕開けにもなるはずだ。

Tempalay 21世紀より愛をこめて SPACE SHOWER(2019)

自分が生きた時代=平成の雰囲気を閉じ込めた(小原綾斗)

――『なんて素晴らしき世界』は〈地球の誕生から滅亡まで〉を描いた作品でしたが、SF的な世界観が引き継がれていたり、インタールードだった“THE END”のフル・ヴァージョンが収録されていたりと、『21世紀より愛をこめて』のコンセプトも前作の延長線上にあるのかなと感じたのですが、実際いかがでしょうか?

小原綾斗(ギター/ヴォーカル)「いや、関連性は特になくて、今回は今回で別のコンセプトがあります。前作が〈始まりから終わり〉だとしたら、今回は〈いまこの瞬間から未来へ〉みたいなコンセプトなので、ある種地続きなのかもしれないですけど」

『21世紀より愛をこめて』ティーザー

――連作とかではないけど、共通するムードはあるというか。

小原「昔ボイジャー探査機にレコードを乗せて、宇宙人に向けて飛ばしたという話があるんですけど、ロマンチックだなと思って、それにインスピレーションを受けて作ったので、今回もSFチックではありますね」

――この作品を宇宙船に乗せて飛ばすようなイメージがあった?

小原「そうですね。平成が終わったタイミングで、自分が生きた時代の雰囲気をそこに閉じ込めて、どこかで誰かがその匂いとかを感じてもらえればという。まあ、CDってそういうものですよね。元号が変わるタイミングで、何となく残さなきゃいけない気がして」

――そういうコンセプトって、メンバー同士の普段の会話から出て来るものなんですか? それとも、そこに関しては綾斗くんが考える?

小原「完全に一人で、悶々と(笑)」

藤本夏樹(ドラムス)「僕は単純に楽曲に対してどうアプローチするかだけを考えてました。平成に思い出がないわけじゃないですけど(笑)、そのコンセプトを聞いて、〈じゃあ、音楽をこうしよう〉とはあんまりならないと思うので」

AAAMYYY(シンセサイザー)「同じです。私はわりと歌心のほうに心が向いてしまう性質ではあるので、デモの段階では歌詞がないから、曲としてのアプローチに集中して、歌詞ができてからは、より深い世界観を理解して、消化しようとする、そういう作業でした」

 

〈おどろおどろしいもののなかの美しさ〉をテーマに作りたかった(小原綾斗)

――AAAMYYYさんが正式メンバーとして加入して2作目になるわけですが、曲作りの工程自体は変わらないですか?

小原「変わってないですね。これまでも今回もそうなんですけど、僕らプリプロをやらないので、レコーディングが終わるまでどんな作品になるのか誰もわかってないんです。なので、コンセプト的なものを話してもあんまり意味がないんですよ。

曲の色味とか、そういうことは共有してて、今回で言うと、〈おどろおどろしいもののなかの美しさ〉をテーマに作りたかったので、リファレンスの曲を出したりはしたんですけど、〈このアルバムはこういう想いがあって〉とかは言わないですね。それは野暮だし、恥ずかしいですから(笑)」

――〈おどろおどろしさのなかの美しさ〉は、これまでの作品にもあった感覚ではあると思うんですよね。

小原「それは自分から滲み出た毒素の結果だったと思うんですけど(笑)、今回はそこを意識的にフィーチャーしたので、それはこれまでとは全然違って。

気持ち悪い、違和感の残るものと、美しいもののちょうど間は何だろうと考えて……こういうアウトプットになったってことですね。今回はコンセプトがはっきりしていたので、1曲目から順番に作っていったんです。いままではもっとばらついてたというか、無意識だったんですけど」

――リファレンスとしては、どんなアーティストを挙げたんですか?

小原「いろいろ挙げたんですけど、特にルイス・フューレイと、久石譲の『菊次郎の夏』(99年)と『ソナチネ』(93年)のサントラは大きくて、〈こういうものを混在させたい〉と。根底にそのイメージがありつつ、そのうえでTempalay的なビートやメロディーが乗れば、いままでと違うものが作れると思ったので、そういったことは伝えましたね」

ルイス・フューレイの75年作『Lewis Furey』収録曲“Husler's Tango”

――新しいインプットというよりは、自分のライブラリのなかから、今作のイメージに合うものを引っ張り出してきた感じ?

小原「むしろ後付けというか、曲ができた後に、これをどう伝えればいいのかを考えて、さっきの名前が出てきた感じです。自分の曲はすでにアウトされてて、それを説明するためにリファレンスを挙げたという順番ですね」

 

違和感は残したいけど、腑には落ちたい(小原綾斗)

――1曲目から作ったという話でしたが、イントロダクション的な“21世紀より愛をこめて”があって、実質的なオープニングが“のめりこめ、震えろ。”ですね。メロディーはすごくポップなんだけど、トラックは作り込まれていて、何ともTempalayらしい。

小原「この曲は岡本太郎さんへのラヴレターみたいな曲で、キャッチーではあるんですけど、より攻撃的な、破壊力のある曲にしたくて。ベースやドラムはわりとまとまりがないというか、ギターでしかリズムがわからないようなアンサンブルになっていて、でもなぜかストレートに感じる、そういう構造になったかなと。一筋縄ではいかない、理解できないものの上に成り立っていたいというか、そういう表現をしたくて」

『21世紀より愛をこめて』収録曲“のめりこめ、震えろ。”

――〈毒なら身になる、毒から身を成す〉というフレーズは、岡本太郎の著書「自分の中に毒を持て」から来てると思うんですけど、〈迎合するのではなく、一人ひとりが毒を持て〉というあの本と同様のメッセージをこの曲からも感じることができます。リズムに関しては、どうやって構築していったんですか?

藤本「これは合宿で作った曲で、デモの段階からそんなに崩した記憶はないんですけど……サビのリズムとかはほぼ決まってるなかで、曲として成り立つギリギリのラインを模索して、ベースをどう乗せていくかでいちばん苦戦した気がします」

――曲作りの段階からサポートでベースを弾いているKenshiroくん(Aun beatz)と一緒にやってるわけですよね?

小原「ほぼほぼそうですね。3連の感じはデモの時点であったんですけど、アンサンブルの絡みとして、〈ここが一個ずれるとものすごく気持ち悪い〉みたいなことが起きるので、違和感があるんだけど、心地いい場所を探すみたいな、そういう作業を延々としてました。違和感は残したいけど、腑には落ちたいので(笑)」

――〈変拍子やポリリズムを入れよう〉みたいな発想ともちょっと違うと。

小原「ポリにするとかは僕はあんまりわからないんで、感覚的な話ではあったんですけど、感覚を共有して、アウトしてもらう作業に結構時間をかけました。

リファレンスとして、ブラジルの音楽のプレイリストを作ったりもしたんですけど、あんまり意味ないなと思って。それをもっと数学的に解説できたら伝わるんでしょうけど……難しかったです。もっとそれを理解してから手を出さないと、下手なことになっちゃうんで」

――表面的に真似するだけになっちゃう?

小原「そうそう。なので、そこはこれからの課題ですね」

 

ライヴ感を音源に持ってきたかった(藤本夏樹)

――“のめりこめ、震えろ。”のシンセに関しては、リズムや音色の面でどんなことを意識しましたか?

AAAMYYY「Tempalayは綾斗がおどろおどろしさを求めてくるので、そこを考慮しつつ、でも聴いてて心地いいという、ひたすらそれに徹しました。私がスパイス的なものを入れないと、綾斗が満足しないんです(笑)。

あとは〈ギターとシンセの掛け合いを意識してるのかな?〉と思ったので、中間を行くことはやめて、美しさとおどろおどろしさのどちらかであることにフォーカスして、音は作りました」

――ギターに関しては、“SONIC WAVE”のように派手なリフで攻めるタイプの曲は少ないですよね。

小原「今回はただただパワーコードみたいな曲がいままででいちばん多くて、わかりやすいリフ的なものは少ないかもしれないですね。ただ、鍵盤では出せないニュアンスがギターで出せるから、実験的なこともいろいろしてて、特にコード感は意識しました。それこそルイス・フューレイとかはコード感が気持ちいいというか、気持ち悪いというか、その感じは結構意識してたかもしれないです」

『21世紀より愛をこめて』収録曲“SONIC WAVE”

――夏樹くんは自分のプレイやアプローチに関しては、どんなことを意識しましたか?

藤本「ドラムの音は全然違って、いままではヴィンテージ機材メインだったんですけど、今回はハイファイ寄りにしたんです。それで組んでみた結果、物足りなくていろいろ遊んだりもしたんですけど、主軸はハイファイなドラム・セットで、それを実際に叩いてフレーズが変わったりもしたし、そこは絶対的に違います」

――なぜハイファイなドラム・セットにしようと思ったのでしょうか?

藤本「スタンダードなものに近づけたかったというか、曲自体がおどろおどろしいので、それに対してバランスを取ってもいいのかなと。前作の時点で、それまでにやりたかったことをやれた感じもあったので」

――例のBTSの件も含めて、バンドの状況が広がりを見せるなかにあって、もちろん急に売れ線を意識するわけではないにしろ、より広く届けようという意識も芽生えた?

藤本「そういう意識もあったとは思うんですけど、それよりもライヴ感を音源に持ってきたいという個人的な気持ちが大きかったですね。最近のTempalayのライヴは前よりよくなってる実感があって、前まではライヴの熱量を抑圧して音源にするのがクールだと思ってたけど、わりとそのまま出す曲があってもいいかなって。なので、“のめりこめ、震えろ。”の最後はわりと自由に叩いて、それがOKテイクになってるし、ダイナミクスに関して言うと、“脱衣麻雀”とかもそうですね」

 

〈なんじゃこりゃ?〉みたいなものが最終的にはスタンダードになる(小原綾斗)

――その一方では、“人造インゲン”のようなビート・ミュージック的なアプローチもあるのがおもしろい。

藤本「あれはスネアの上に割れたシンバルを乗せて、変な音にしてます。まあ、“そなちね”とか“Queen”とかは前までと同じテンションで録ってて、やっぱりかっこいいなと思ったり、俺のテンションが曲ごとに入り込んでるだけなんですけどね」

――AAAMYYYさんは自分のプレイやアプローチに関して、どんなことを意識しましたか?

AAAMYYY「〈音源で聴いて、いい音である〉ということにプライオリティーを置いて、前作から引き続き、今作も全部実機を弾いてます。

あとはギターがシンプルになったというか、単音をきれいに聴かせる曲が多い印象だったので、私はそれを邪魔せずに、足りないところを埋めたり。ベースがすごいアイコニックというか、リフ的な要素もあったので、リフの足し算はしないように心掛けて……あまり人が気にしてないところを鳴らすというか(笑)。

余白を埋めちゃうのはいい部分と悪い部分があると思うんですけど、いい塩梅でできたかなと思います。“そなちね”は生ピアノに好きなエフェクターをかけて、高揚感の力添えができたかな」

――“そなちね”はリファレンスの話で出た映画の「ソナチネ」がモチーフになってると思うんですけど、奇妙な構成ではあるものの、メロディアスで、スタンダード感のある曲ですよね。さっき夏樹くんにしたのと同じ質問で、綾斗くんとしてはより開かれたものを作るという意識はどの程度ありましたか?

小原「えー……2%くらいはあったかもしれないです。まあ、2%であり、100%でもあるのかも。要するに、求められるものがわかってくると、その真逆をやりたくなるんで、そういう意味で意識はしてるから、ある意味100%。

今回に関しては、無責任なものは作れない状況になってきて、誰に言われたわけでもない使命感を勝手に抱いてはいたので、広い層に届くものを結果的に作れた感覚はありますね」

――さっきの岡本太郎の話じゃないけど、毒を持って、自分にしかできないものを作ることが、結果として開かれたものを作ることに繋がるというか。

小原「そうですね。結局〈なんじゃこりゃ?〉みたいなものが最終的にはスタンダードになるので、いかにそれを説得力を持って提示できるかどうかだと思うんですよ。ただめちゃくちゃにやっても何の説得力もないけど、一見めちゃくちゃなものにちゃんと説得力を持たせることで、半歩先に立つことができるというか」

――太陽の塔なんて、〈なんじゃこりゃ?〉がスタンダードになった象徴ですよね。

小原「そういう意味では、いま自分たちがどういうふうに見られていて、どうあるべきなのかを、今回はちょっと意識したのかもしれないですね」

 

令和元年は創世記です(小原綾斗)

――“のめりこめ、震えろ。”や“そなちね”と同様に、“美しい”も本作を代表する一曲だと思います。この曲はどんなイメージで作られたのでしょうか?

小原「これは僕の勝手なプレイバック・ソングです。自分が平成をドンピシャで生きたなかで感じた空気感とか匂いを閉じ込めるとしたら、どうしたって自分の半生を振り返るわけですけど、僕にとっては幼少の情景とか心象的なものとかがずーっといちばん美しいんですよ」

――〈子供の頃みた心象が/未だにこびりついて離れないの〉という歌詞の通りだと。

小原「ずっとそれを超えよう超えようとしながら生きてるんです。そのために人と一緒にいるというか、何かを一緒にお祝いしたり……この感覚上手く伝えられないんですけど、〈あのとき楽しかった〉とかそういうことでもなくて、よくわからないんだけど、でもあの感覚をなかなか超えられない。だから、感動したりすることもあんまりないんですよ。曲を作って、歌詞を書くことで、ちょっと満たされた気分にはなるんですけどね」

――そんな大事な曲にストレートに“美しい”というタイトルがついているわけですが、これはもしかしたらいろんな人に言われているかもしれないけど、ゆらゆら帝国の“美しい”(2007年)に対するオマージュだったりもするのでしょうか?

小原「いや、全然ないです。“美しい”っていうタイトルの曲いっぱいあるじゃないですか?」

――そうなんだけど、ゆらゆら帝国は平成における日本のサイケ・バンドとしてシンボリックな存在だし、“美しい”が入っている『空洞です』というアルバムはある種の時代の区切りを刻んだ作品だったと思うから、今作ともシンクロする部分を感じたんですよね。

小原「そもそも〈美しい〉という言葉が好きで、いつか使いたかったんです。前に“New York City”(2017年作『5曲』収録)という曲を作って、あれは誰にでも訪れる最高の瞬間を書いたんですけど、“美しい”は完全に僕にしかわからない美しさなので、このタイトルがいちばんしっくりきて。

あの感覚を忘れるのが怖い、みたいなところもあるかもしれないですね。いろんな場所でライヴして、会場も大きくなってきて、ある種満たされてはいるんだけど、でもそれはそれで怖いことだから、必死に忘れまいと思って書いたのかもしれない」

――超えたいけど、忘れたくない。個人的な曲であっても、そのアンビヴァレントな感情が閉じ込められているからこそ、第三者が聴いてもすごく美しい曲なんだと思います。夏樹くんは、この曲をどう受け止めていますか?

藤本「その感情って怖いくらい自分ともめちゃめちゃ近いから、普通にそうやって捉えていいんだと、いま話を聞いて思いましたね」

小原「僕小っちゃい頃に道路の標識の鋭角から線が見えて、それを超えて歩くことが普通の日常だったんです。いまはもう見えないんですけど、沢村一樹さんはいまも見えるらしくて、それは幼少の感覚が取れてない人だって、『ホンマでっか!?TV』でやってて。その話を夏樹にしたら、夏樹も昔その線が見えてたらしくて。そんな人初めて会ったんですよ」

――話を聞いても全然ピンと来ない……これでAAAMYYYさんも見えてたら驚きですけど。

AAAMYYY「私は電柱を過ぎるごとに瞬きしてました」

小原「それただの遊びでしょ(笑)?」

――(笑)。子供の頃の感覚は成長とともに消えていって、画一化していっちゃうわけですけど、そういう自分にしかない感覚を作品にすること自体が、とても美しい行為だなって思います。

小原「うん、そうかもしれないですね」

――最後は“おつかれ、平成”という曲で締め括られていて、実際に平成が終わり、令和が始まりました。以前取材をしたときに、〈2018年はバンドの転換期だった〉という話をしてもらいましたが、2019年は、令和元年はバンドにとってどんな年になりそうですか?

小原「創世記ですね。決しておごりではなくて、僕らみたいな音楽が価値を得られるようになるんじゃないかと思うし、みんなもっとクリエイティヴに対して貪欲になっても大丈夫だということを提示できたらと思いますね。

確実に、この一年か来年くらいで日本の音楽シーンはガラッと変わると思うんですよ。ぶちかまします、今年は」

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