INTERVIEW

Charと共演する18歳のシンガー・ソングライター、Maica_nの〈秘密〉とは?

Maica_n『秘密』

Charと共演する18歳のシンガー・ソングライター、Maica_nの〈秘密〉とは?

徳島で育った18歳のシンガー・ソングライター、Maica_n(マイカ)が、本日6月5日(水)にミニ・アルバム『秘密』でデビューした。ギタリストである父親の影響で幼少の頃からビートルズやザ・バンドといった60~70年代のロックやポップスに親しみ、中学生でオリジナル曲の制作を開始。同時期に徳島の秋フェス〈エコカメプロジェクト〉のオープニング・アクトに大抜擢されて注目を集めた。つい先日には茨城・VOICEで行なわれたイヴェント〈水戸復活祭〉に出演し、Charと『秘密』にも収録されたシュレルズのカヴァー“Baby It’s You”を歌い、その堂々たるパフォーマンスが話題になったばかりだ。

自身の手による4曲のオリジナル曲とカヴァー1曲の全5曲からなる『秘密』は、彼女の瑞々しくも豊かな感受性が光る歌詞と滑らかなメロディー、クールでいて芯の強さも感じさせるヴォーカルがひとつになったもの。軽やかで洗練されたポップスだが、日々生き辛さを感じている10代や20代の聴き手の心の深くに刺さるであろう何かが確実にあったりもする。この春、大学生になったばかりのMaica_nに話を訊いた。

Maica_n 秘密 HERE、PLAY POP(2019)

星野源の言葉、ビートルズのコード進行からの影響

――Maica_nさんは徳島育ちなんですよね。

「はい。生まれは佐賀県で、小学校3年生から去年までずっと徳島県にいました。自転車ですぐのところに海も山もあるし、田んぼも家のまわりにあったので、本当に自然のなかで育った感じですね」

――音楽を好きになったのはお父さんの影響が強かったそうですね。

「はい。父がギタリストで、家にいるときはいろんな音楽をかけていたので。あと、父がリビングで弾いているギターを普通に聴いたりしてたので、そこから自然とギターに対する興味を持った感じです」

『秘密』収録曲“Dance With Me”。映像のディレクションは千原徹也(れもんらいふ)が担当
 

――ギターを始めたのは何歳から?

「小学校2年のときに父が子供用のギターを買ってくれて。最初は難しくてあんまり弾いてなかったんですけど、小学5年か6年のときに家で父がビートルズの“Blackbird”を弾いていて、それを聴いたときに〈自分もこの曲を弾けるようになりたい!〉って思ったんです。すごく、かっこよかったんですよ。

それで、その場で頼んで、手取り足取り教えてもらって。一生懸命練習して。1曲弾けるようになったら、やっぱり楽しくなるじゃないですか。それからギター・ブックを買って、コード表を見ながらコードを覚えていって、ちょっとずつ弾けるようになったら自分の知ってるJ-Popの曲とかを弾いて歌ってみたりもするようになった。それから歌うことも少しずつ好きになった感じですね」

――資料には、Maica_nさんが好きで聴いてきたアーティストの名前が書かれてあって、〈ビートルズの青盤・赤盤をはじめ、ザ・バンド、ダニー・ハサウェイ、エリック・クラプトン、シェリル・クロウ、ボズ・スキャッグス、ロン・ウッド、ジェームス・テイラー、リッキー・リー・ジョーンズなどに影響を受けて育つ〉とあるんですけど、これってお父さんの影響ですよね?

「はい。父がビートルズとかザ・バンドとかを好きでよくかけてたのを一緒に聴いていて、それは自分のいまの音楽にも繋がってる気がしますね。特にビートルズは、コード進行にビートルズ感というようなものがあるじゃないですか。その部分に影響受けてるところがあるかなって思ったりしてます」

――でも小学校や中学校でそういう音楽の話ができる友達なんて、なかなかいなかったでしょ?

「学校でそういう音楽の話をしたことはないですね。音楽の話は友達とあまりしなくて。したとしてもみんなが好きなグループの話とか。まわりの友達は嵐とかNEWS、GReeeeN、FUNKY MONKEY BABYSなんかを聴いていて」

――学校ではそういう話をして、家に帰ると家族とダニー・ハサウェイやエリック・クラプトンの話をする、みたいな?

「いやいや、親と一緒に聴いてただけで、そこまで詳しく理解して聴いていたわけではないです(笑)」

――中学のときはエルヴィス・プレスリーを好きになってよく聴いていたそうですね。

「エルヴィス・プレスリーの映像をYouTubeで初めて観たときに、すごくかっこいいなと思って、それからいろんな動画を観たり、ベスト盤を買って聴いたりしていました。ロカビリーの音楽のノリがいいなぁと思って、ストレイ・キャッツも好きになって。関連動画でそうやって自分の知らなかった音楽を発見するのが、すごく楽しかったんです」

――いまは最近の音楽も聴いたりするんですか?

「あ、いまの音楽ももちろん好きです。エド・シーランが大好きで。あとはジョン・メイヤーも。日本では星野源さん。星野さんの書く文章とかも好きで、特に言葉のチョイスの仕方に影響を受けてると思います」

 

普段は自分を出さないタイプ。だから、曲を作ることで思っていることを表現しはじめたのかな

――Maica_nさんが曲作りを始めたのはいつですか?

「中学2年生くらい。詞を先に書いて、あとからそこにコードやメロディーをつけていく作り方が多いです。メロディーが先に浮かぶこともありますけど、詞を先に書くことのほうが多いです」

――いま自分はこういうことを思っていて、それを書き留めておきたいというのと、それを伝えたい、みたいなところが、表現欲求の元になっている。

「そうですね。私は普段あまり自分の意見を言わないことが多くて、どちらかというと友達でも誰でも相手の意見を優先するところがあって。もちろん譲れないことがあれば言いますけど、基本的には自分をあまり出さないタイプ。なので、曲を作ることで自分が思っていることを表現しはじめた、っていうところはありますね」

――Maica_nさんのブログやTwitterの投稿を読むと、目に映るものに対しての気持ちの動きがとても素直に書かれていて。〈これ、好き!〉〈キレイ!〉〈かわいい!〉といったときめきの感情を大事にしているように感じます。

「〈これ、すごいな〉とか〈きれいだな〉と思ったことをみんなにも知ってもらいたいという気持ちは確かにあります。けど、曲を書いているとなんとなく暗い曲になっちゃうことが実は多くて、それは普段人に話さないぶん、自分の陰の部分が曲に出ちゃうのかなって思ったりする。ただ、楽しいことにしても辛いことにしても、そのときの気持ちを大事にしたいというのはいつも思っていて。それって2度と味わえない気持ちかもしれないので、何か思ったことはできるだけメモしたりノートに書き留めたりしていて、たまにそれを見返しながら曲に膨らませることもありますね」

――『秘密』の5曲を聴いて思ったのは、まず声の質感がすごくいいですね。明るすぎないし、元気すぎない。ある意味クールというか落ち着いた感触なんだけど、でもさっき話されていたような心の動き、ときめきのようなものがそのなかに確かにあるのがわかる。Maica_nさんは自分の歌声をどんなふうに捉えていますか?

「話しているときの声はまわりの友達とかよりも低いほうだと思っているんですけど、歌うとちょっと声が変わるというか、自分がイメージしているよりも高いのかなって。録音した曲を聴くと、いつも自分で聴こえている声と全然違うように思えて、最初は慣れなかったです。思っていたほどハスキーではなくて、どっちかというとクリーンな声なんだなっていうのは、最近思いました。いろんな人に〈スッと入ってくる声だね〉って言ってもらえて、自分でもたまにそう思うことがあるので、それはよかったかなと」

――歌声がスッと入ってくるのは、Maica_nさんの作る楽曲がメロディー・オリエンテッドだからというのもあると思うんです。メロディーの流れに言葉がすごく自然に乗っている。それって幼少の頃からお父さんとよく聴いていた60~70年代の音楽の影響によるものなんでしょうかね。

「うーん、それだけじゃないと思いますけど、でも必ず影響は受けてるなと思いますね」

 

自分の知らなかった自分に出会えるのも音楽のおもしろさ

――『秘密』の各楽曲についてお訊きしますね。まずリード曲でもある“Dance With Me”。グルーヴィーで、柔らかな歌声がすごく気持ちよくリズムに乗っている。リズムに歌をどう乗せるかみたいなことは、拘ったりしますか?

「自分が歌っていて気持ちのいいリズム、歌いやすいリズムっていうところで自然に作っているだけで、そんなにそこに焦点を当てて作っているわけではないですね。特別に拘ってるわけではないです。ただ、“Dance With Me”はダンスって言葉が入っているし、〈一緒に踊ろう〉みたいな曲なので、カラダがリズムに乗らないとダンスには繋がらないなと思った。だからリズムがしっかりしたものにしようと思ったんですけど、そんなにしつこくなくサラっとした感じで〈一緒に踊らない?〉みたいに問いかける感じにしたかったので、力んで歌ったりはしてないですね」

――そうですね。どの曲もまったく力んでなくて、柔らかい。ファンキーな感覚もありながら涼し気で、そこがいいなと。

「ありがとうございます」

――2曲目の表題曲“秘密”はR&Bタッチのミッド・テンポ曲で。アレンジは富樫春生さんが手掛けてますが、サウンドに関しては富樫さんとやりとりしながら作っていったんですか?

「自分で初めに作ったデモはアコギと声だけだったんですけど、そこから富樫さんが膨らませてくださって。富樫さんがアレンジしたものを聴いたとき、自分が漠然と思い描いていた曲のイメージとほぼ一緒だったので、本当にびっくりしたし、感動しました。そんななかにも富樫さんのアイデアの斬新さも感じられて……例えば間奏のギターがジャーンってロックな感じで入ったりとか、そういうところに個性がすごく出ているなって。もう本当に〈ありがとうございます!〉って感じでしたね」

――この曲のMaica_nさんの歌詞には独特の色気がありますね。〈微かにいけない香り〉というフレーズとか、すごくいい。

「(照れ笑い)。この曲はすごく思い入れがあって、タイトルの通り、自分のなかに秘めたもの、誰にも言えなかった気持ちを書いたものなので、そういうところで色気のある曲になったなと自分でも後から思ったんですけど、書いてるときはそういうつもりはそんなになくて。普段の自分はまったく色気がないので、こういう曲が出来て逆によかったかな(笑)。新しい自分が見れた気がしますね。曲を書いていると、そういう自分の知らなかった自分が自然に出てくることがあって、そこも音楽のおもしろさかなって思ったりします」

――3曲目は“Hanakoさん”というポップな曲で、gomesさんがアレンジを担当されてます。歌詞のなかに〈Hanakoさん〉とは一度も出てこないけど、このタイトルはどこから?

「これは都市伝説の〈トイレの花子さん〉からきてるんです。ある学園ドラマがあって、そこに出てくる女の子がクラスに馴染めなくて、お弁当をトイレでひとりで食べているシーンがあって。それを観ていて沸き起こってきた気持ちを曲にしようと思って書きはじめたんです」

――初めのほうで〈どうかどうか放っておいて どうかどうか〉と歌っているけど、終わりのほうでは〈みんな見えてるなら ねえお願い 私の目を見て聞いてね 忘れないから〉と、その裏表の微妙な気持ちを声にしている。

「そうなんです。そういう複雑な気持ちが混ざっている。本当はトイレでひとりで食べるのは寂しいけど、ひとりでいるところを見られるといろいろ言われるから放っておいてほしいという気持ち。それと、強がっているけど本当は自分を見ていてほしい、このままだと気持ちが折れちゃう、といったような気持ち。その狭間でどうしたらいいのかわからなくなっている、という感情を書きました」

――そういうちょっとシリアスな内容でありながら、サウンドは暗かったり湿ったりはしてなくて、軽やかなポップスになっているのがいいですね。そして4曲目はビートルズも歌っていた“Baby It’s You”のカヴァー。Maica_nさんはギター・ロック的なアレンジに変えて歌ってます。

「事務所の社長に勧められてカヴァーしてみました。女性ヴォーカルのスミスというバンドのヴァージョンがビートルズのとは全然違ってロックな感じがすごくいいなと思って、カヴァーしました。自分はあんまりロック・テイストの曲をやったことがなかったので、新しい挑戦としてやってみようと。いろんな人から〈いいね〉と言っていただけて、少し自信がつきましたね」

LAのロック・バンドのスミス(イギリスのザ・スミスとは別バンド)による“Baby It’s You”カヴァー。69年にリリースし全米トップ5ヒットに
 

――そして5曲目“タバコと私”。ボサノヴァ・タッチの曲ですね。これも富樫さんがアレンジされてますが、Maica_nさんが初めに書いたときからボサノヴァっぽいものだったんですか?

「そうです。たまたま父がボサノヴァっぽい曲を聴いていて、〈このコード、どうやって押さえるの?〉って訊いて、教えてもらったコードをもとに作りました。歌詞が初めにあったんですけど、こういうボサノヴァっぽいメロディーが合いそうだなと思って」

――恐らく弾き語りで作ったときは小品的なものだったと思うんですが、富樫さんのアレンジでピアノやストリングスが入ったことによって、ジャジーで優雅な曲になりましたね。

「本当にそう思います。大人っぽい雰囲気になったなって」

 

誰かの気持ちや生活に寄り添う音楽でありたい

――さて、そんな『秘密』を聴いて、僕はこう思ったんです。Maica_nさんはきっと自分にとても正直に曲を作りたい人なんだなと。でもその一方で曲はポップだし、自己完結しているようなところがない。聴く人にとっての気持ちいい音楽をしっかり追求しているんだなと。そのへんのバランスって、自分なりに考えたりしますか?

「はい。そこが一番難しいなと思っていて。聴きやすいようにしよう、ポップにしようって思いすぎちゃうと、薄っぺらくなったりもするんですよね。本当に言いたかったことが伝わらなくなっちゃう気がする。でもだからといって暗かったりすると聴く人も疲れちゃうだろうし。そのバランスを考えながら、試行錯誤して作ってます」

――その難しいところにしっかり向き合って、戦いながらひたむきに作って表現している人なんだろうなと思いました。これからどういう存在になっていきたいと思っていますか?

「自分が曲を作りはじめたきっかけの根本にあるのは、誰かの気持ちが少しでも軽くなったり、良い方向に気持ちが向かうようになればいいなってことなんですね。自分の歌を聴いた人が、救われた気持ちになったり、少しでもしんどいことを忘れられたらいいなって。なので、誰かの生活のなかの一部であれるような音楽をやっていければいいなと思ってます」

――いまは社会や人間関係、恋愛、セクシャリティとかいろんなことで不安を抱えている人がたくさんいて、何かとみんなが生き辛い世の中ですが、いま言っていたように、Maica_nさんの音楽はそういう人の気持ちを和らげたり救いになったりするものだなと思います。

「ありがとうございます。まずは、ただ純粋に音楽を楽しんでほしいというのが一番で。それで少しでもその人の気持ちが軽くなったら嬉しいです」

 


LIVE INFORMATION
『秘密』リリース・イヴェント

6月5日(水)タワーレコード池袋店
6月6日(木)タワーレコード名古屋パルコ店
6月7日(金)タワーレコード NU 茶屋町店
6月8日(土)タワーレコード神戸店
6月9日(日)タワーレコード京都店
6月14日(金)タワーレコード札幌ピヴォ店
6月15日(土)タワーレコード福岡パルコ店
★詳細はこちら

関連アーティスト
pagetop