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YUUKI MIYAKE『EP-1』人気のボカロPがシンガー・ソングライターとして構築した個性的なアトラクション!

YUUKI MIYAKE『EP-1』人気のボカロPがシンガー・ソングライターとして構築した個性的なアトラクション!

人気のボカロPがシンガー・ソングライターとして構築した個性的なアトラクション!

 骨太なギター・サウンドとオルタナティヴな感性を有したボカロPとして名を上げ、Eveやウォルピスカーターへの楽曲提供、湯木慧の楽曲アレンジといった仕事でも知られるMI8k(みやけ)が、本名でもあるYUUKI MIYAKE名義でシンガー・ソングライターとしての活動を開始。その第1弾作品となるEP『EP-1』を完成させた。

YUUKI MIYAKE EP-1 YUUKI MIYAKE(2019)

 17歳の時に自分のギターを手にしたというMIYAKE。その頃はギターの師匠の教えを守ってファンクやブルースを聴き漁っていたが、20歳の頃に師匠の言いつけを破って邦楽を聴くようになり、知人に薦められてボカロソフトとPC一式を購入。〈踊るロック〉的な昂揚感を備えた“ラブ&デストロイ”などの人気曲を生み出してきた。

 ただ、今年1月にMI8k名義で発表した最新ボカロ・アルバム『CUPID POWER』に自身歌唱によるセルフ・カヴァー曲を収録していたように、彼は以前から歌にも取り組んできた。

 「セルフ・カヴァーを出すようになってだんだん自分の声をどうしたらいいのかわかるようになってきて、ボーカロイドを使うことにこだわる必要はないのかなと思うようになって。自分は歌い手の意匠を感じる作品が好きなので、自分が思うように作れるかどうかは別として、まずはチャレンジしてみようかなと」。

 かくして生まれた『EP-1』には、それぞれ〈場所〉〈ストーリー〉〈メッセージ〉〈ラヴロマンス〉という4つのテーマに区分された2曲ずつ、計8曲を収録。〈場所〉に分類される1曲目の“@COCKPIT”は、トイレを飛行機のコクピットに見立てたスキット風の小品で、トイレの表示板を模したジャケットと連動しつつ、ここから作品の世界観に没入させる仕組みだ。

 「僕にとってはトイレが家の中でも一番プライヴェートな空間だし、落ち着くので、何もしないのにいることがよくあるんですよ。そこでボーッとしながらNASAが公式で出している打ち上げ関連の音源を聴いてたら、〈ここコクピットみたいだな〉と思って(笑)。このトラックをスタート地点に『EP-1』をひとつのアトラクションとして楽しんでもらえたら嬉しいと思って作りました」。

 〈大衆の敵〉ことジョン・デリンジャーから「自分が普段生きていて感じないような粋な男のロマン」を感じて刺激を受けたという悪たれロックンロール“浮世デリンジャーデイズ”は〈ストーリー〉、死者が大切な人を思う気持ちを描いた“BISHOP”、EVO+に提供した“F.A.U”の歌詞/アレンジを変更したうえでセルフ・カヴァーしたバラード“Fool As Usual”は〈ラヴロマンス〉と、テーマに沿いつつ多彩な曲調が並ぶ本作には、伝統的なロック感と現代的なセンスが共存している。

 「ポルトガル・ザ・マンとやビッグ・データをはじめ、ここ2、3年で聴いて好きになった音楽のいくつかにはギターを手にしてから聴いていたようなオーセンティックなロックのスタイルの中にメロディーや展開の現代的なキャッチーさやサウンド面での新しさがあって、今回はそういう部分を意識したりメロディーや歌詞、アレンジの内容に合わせながら自分がその曲のその部分で本当に録らなきゃいけないテイクを録ってシンプルかつ幅を持たせた作品がいくつかできたらと思ったんです。制作中のお楽しみタイムが損なわれることも特になく、気持ち良く完成しました」。

 特に心を打つのが〈メッセージ〉の2曲。依存心に悩む友達を見て書いたという“ひみつのテーマ”は、「毎日苦しくてもう自尊心なんてありゃしないよって人に本来持っているプリミティヴなエネルギーを思い出すきっかけになってほしい」という気持ちを込めたナンバー。そして“いつかの終わりへ”は〈もう一度僕を救ってください〉という歌詞から始まるバロック・ポップ。ここには彼が音楽を志した原点と、シンガー・ソングライターとして音楽を希求し続ける理由の両方が刻まれている。

 「僕は両親に対して今でこそ野となれ山となれくらいに思ってるんですが、二人から受けた教育や二人の他者に対する姿勢は申し訳ないが、僕が生きていくうえではあまりお手本にならないものばかりで、そんな彼らに対して一時期はすごく嫌悪感を抱いていて、そういう時期にコールドプレイ、ナイン・インチ・ネイルズ、リンキン・パークとか自分の好きな音楽をひたすら聴いて、憧れて……ってしてたら何かもういろいろどうでもよくなって。それで父親と住んでいた家を出て、祖父母のところに行ったんです。実際には自分の行動によるものなんでしょうけど親の姿を見て育ってしまった自分と向き合う覚悟をするエネルギーを得たというか、そのときの僕にとってはそれが〈音楽に救われた〉ってことだったようで。“いつかの終わりへ”はいちばん最近に書いた曲なんですけど、制作中、自分の人生を省みて自暴自棄になりそうになって、いまだに自分は昔のことに振り回されているんだなってすごく情けなくなってそれをきっかけに絡まっちゃってた心の紐を自分のまた好きな音楽とともにゆっくり解いていきその時の日記を読み返しながら自分の感情の動きを観察して誰かに向けて発信するメッセージとして作りました」。

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