INTERVIEW

fhána“僕を見つけて” いつになくパーソナルな詞世界と呼応し、怒涛の展開を見せるロック・バラード。4人が久々の新作に込めたメッセージとは?

fhána“僕を見つけて” いつになくパーソナルな詞世界と呼応し、怒涛の展開を見せるロック・バラード。4人が久々の新作に込めたメッセージとは?

嵐のように加速するロック・バラードが体現するのは、いつになくパーソナルな歌世界。そこに映された〈誰かに見つけてほしい人〉へのメッセージとは――?

 シングル“わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~”に始まり、昨年はサード・アルバム『World Atlas』と5周年記念のベスト盤『STORIES』のリリースに、日本国内でのライヴに加えて海外でのイヴェント出演、さらには楽曲提供といった個々での課外活動など、今年にかけて精力的な動きを見せていたfhánaが、久々のニュー・シングル“僕を見つけて”を完成させた。TVアニメ「ナカノヒトゲノム【実況中】」のエンディング・テーマである同曲は、一癖ある展開が聴き手のエモーションを掻き立てる流麗なロック・バラード。そして、いつになくパーソナルな質感の詞世界が印象に残る一曲だ。〈らしさ〉と〈意外性〉を湛えたカップリングの2曲も含め、新作について4人に話を訊いた。

fhána 僕を見つけて ランティス(2019)

 

——“僕を見つけて”は「ナカノヒトゲノム【実況中】」のエンディング・テーマで、佐藤さんの作・編曲ですが、佐藤さんはアニメの音楽全般を手掛けられてますね。

佐藤純一「この話が動き出したのは去年の秋ぐらいなんですけど、劇伴があって、さらに挿入歌アルバムがあって、主題歌があって、そのオープニングが声優さんの曲(畠中祐の“not GAME”)で、エンディングがfhánaっていうところで、全体的にじわじわと作っていく感じだったんですね。で、この曲のワンコーラスのデモが出来たのは去年の12月頭とかかな? 泣ける感じでいいなぁって思っていたんですけど、さらにはfhánaとして久々のアニメ・タイアップのシングルだったんで、そこでどういうものを出すか、という話もあったんですよね。以前の“星屑のインターリュード”みたいに、エンディングだけどちょっと早いテンポの軽快な曲のほうが良いんじゃないか、っていう意見もあったんですが、そのときの僕はこういう名曲風……これが名曲かどうかは時代が判断するとして、名曲的な雰囲気のミッドテンポの曲を作りたい気持ちだったんです。fhánaは5周年のベスト盤も作って、記念のライヴもやって、これからもどんどん攻めていく気持ちもあるんですけど、もっとどっしりした存在になってもいいんじゃないかと」

——それでこういった方向性に。

佐藤「はい。あと、個人的な話になるんですけれども、僕、ずーっと〈ポンちゃん〉っていう猫を飼っていたんですね。その子が年末にお亡くなりになりまして。18歳を超えていて大往生なので、後悔はないんですけど……自分の娘みたいでもあり、友達みたいでもあり、っていう存在がいなくなったことは結構くるものがあって、そんな喪失感を抱えつつフルサイズに取り掛かって、この新曲はレクイエムだな、って気持ちになったんですね。ただ、その“僕を見つけて”ってタイトルはもちろん『ナカノヒトゲノム【実況中】』ともリンクしていて。このアニメはゲーム実況者たちが主人公で、彼らはネット上で活動しているわけですけど、いろんな人に自分を見つけてほしいと思っているんじゃないのかなと思ったんです。承認欲求ですよね。でも、〈自分のことを見つけてほしい〉っていうのは何もネット配信者だけじゃなくて、誰しもがそういう気持ちを持っているんじゃないのかなあと思って。一人の世界で好きなことをやっていても、他人に見つけてもらって、関わりを持って何かが生まれないと虚しいっていうか、意味がないというか。そういうふうに〈繋がっていくこと〉と、〈レクイエム〉とが重なって、〈僕のことを見つけてほしい〉っていう気持ちと、〈大切な誰かとの出会いと別れがあったからこそ、いろんなものを得ることができて、自分の力になったんだ〉みたいな、そういう気持ちを歌う曲へと最終的に着地していった感じです」

——それをいつもの林英樹さんが歌詞としてしたためて。

佐藤「そうですね。あと、この曲はフルで聴くとわかると思うんですけど、結構長くて後半は全然違う展開になるんですね。はじめはシンプルな構成で、4分半ぐらいで終わる感じだったんですけど、なぜか突然、あの後半の展開を思い付いて。前半4分半までは〈永遠の別れ〉を歌っていて、でも最後の2分は〈再会〉について歌っているんですよね。物理的にはもう会えないけど、精神的にはまた会うことができる。そんな祈りが込められているんです。〈遠くから届く、祈りと光〉って、キリスト教っぽくもありますけど、〈再会〉っていうのは東洋っぽくもありますよね。思うのは、個人的にすごくインパクトの大きい出来事があったときに作ったものって、それが色濃く宿るんだなってことで。だから、今回は結構、いままでのfhánaの曲よりもパーソナルな、でもある意味で広いメッセージ性を持っているの気がしていて。それでシングルのマスタリングが終わった直後に、京都アニメーションの事件が起こって。fhánaの“青空のラプソディ”は京アニ制作の『小林さんちのメイドラゴン』の曲だし、『涼宮ハルヒの憂鬱』や京アニ版の『CLANNAD』も、僕がアニメに目覚めたり、fhánaの結成のきっかけになった作品だったりする。fhánaとは関わりの深い、そして日本を代表するアニメ制作スタジオがあんなことになってしまって……。安易に事件のことと、楽曲とを結び付けるのは良くないとは思うんですが、もともとレクイエムとして作っていただけに、どうしても失われたクリエイターの皆さんや、その作品を愛する人たちに向けて歌っているようにも感じてしまって。いまもまだ整理ができていないですが、制作の過程で本当にいろいろなことが重なって出来上がった曲です」

——そうした深みのある詞世界を支えるサウンドは、ストリングスが全編に入ったドラマティックなアレンジです。

佐藤「そうですね。そういう曲にしたくて。後期のビートルズっぽい曲……ビートルズっていうか、オアシスなんですけど(笑)」

——オアシスは私も感じました。

佐藤「出だしのコードがカノン進行なので、もう“Whatever”みたいなストリングスにしようと思ったり。僕は音楽家としては、やっぱりメロディーメイカーだと思ってるんですけど、ストリングスって歌に対するカウンター・メロディーなんですね。だから、ストリングスってもうひとりのヴォーカルみたいな感じなんですよ。towanaというメイン・ヴォーカルの主旋律に対して、4人とか8人の合唱隊がカウンター・メロディーをずっと歌っているみたいな感じで、アレンジしていてすごく楽しいんですよ」

——ヴォーカルに関しては、towanaさんが連載の原稿で、〈アニメで聴けないところは台風の目になった気持ちで歌いました〉って書かれてましたね。

佐藤「MVやライヴを観ていただきたいのですが、展開が変わる後半2分間、楽器陣はすごく激しい動きで演奏しているなか、towanaはスッと立ったままあまり動かずに歌っているんです。この曲はtowanaのヴォーカルもすごく良いですよね。音楽的に言うとロック・バラードですけど、そんなしっとりした曲じゃなくて、スウィングしているんですよ。で、やっぱね、towanaはリズムがめちゃめちゃいいんです。towanaはリズム感も、声質も、ライヴとかヴィジュアル的な佇まいとかも含めて、似たタイプの人ってまずいないですね。研ぎ澄まされた日本刀のようなヴォーカリストなんですよ」

——べた褒めですね(笑)。歌ったご本人としてはいかがですか?

towana「この曲は、得意ジャンルかって言われたら、どちらかというと難しいほうだと思います。バラードって誤魔化しがきかないし、単純に長いし(笑)。歌うのはちょっと大変でした」

 

kevinラッパー化計画

——では、続いて“真っ白”について。これはyuxukiさんの作・編曲ですが、フレッシュで青いギター・ロックですね。

yuxuki「そうですね。これはまさに10代感というか、モラトリアムな感じをやりたいなと。それぐらいの子たちに向けての曲でもありますね。曲のイメージ的に、“僕を見つけて”じゃないですけど、自分に気づいてほしいというか、何かしたいみたいな気持ちはあるんだけど、でも踏み出せないみたいな、ある意味でピュアな気持ちを曲にしてみたような感じですね。で、レコーディングは錚々たるミュージシャンにやってもらっていて……」

——どなたですか?

yuxuki「NONA REEVESの小松シゲルさんとか須藤優さん、要はバリバリ上手い人たちなんですけど、ちょっとデイヴ・グロールみたいな感じでとか(笑)、イメージだけ伝えて、〈じゃあ録りまーす〉ってあえて1、2テイクぐらいで一瞬で録り終えました。もう勢いで、って感じですね。歌もそうでした」

——そして“Unplugged”は、fhánaとしては2曲目のラップ曲で。

佐藤「そうですね。“reaching for the cities”以来で。いま、kevinのラッパー化計画が進行中なんです」

kevin「〈エヴァ〉みたいな言い方だ(笑)」

佐藤「最近“reaching for the cities”をライヴでやるときに、もともとtowanaが歌っていたラップの部分をkevinが担当して、掛け合いみたいにやったりしているんですね。あと、〈World Atlas Tour 2018〉のツアーのときに“今夜はブギー・バック”のカヴァーをやって、そこでもtowanaとkevinがラップで掛け合ったりしていて、〈これはいけるな〉と」

——トラックはどなたが?

kevin「Aメロ部分のループを僕が作って、佐藤さんがイントロ、サビ、Dメロ、間奏や、後半の盛り上がりなど全体を作曲しました」

——歌詞はtowanaさんとkevinさんの共作で。

kevin「ラップ部分に関しては佐藤さんに添削してもらいながら僕が書いていて、歌になるところはtowanaさんに書いてもらうっていうやり方で作ってます」

towana「ラップの部分を受けて、私がサビとかそれ以降とかを書いたんですけど、kevin君の歌詞がなかなかOKにならなくて、結局レコーディング当日までかかって。なので、私はレコーディングに向かう足で書いていました。もうちょっと早くほしかったな……(kevin、苦笑)」

——苦情が出ています(笑)。

佐藤「ディレクションをするほうも結構精神力を使うんですが……、ちゃんとOKラインのクォリティーまで持っていかないといけないので、何度もリテイクを出しました。で、これはなんで“Unplugged”かというと、『ナカノヒトゲノム【実況中】』がゲーム実況者だから、逆にこっちはネットから離れようと。いまってSNSでの〈いいね〉で承認欲求を満たしがちですけど、そうじゃなくて、インターネットとかSNSから離れたリアルな人と人との繋がりとか、目の前にあるリアルな匂いとか光、風の感触とか、そういうものも大事だよねっていう、アコースティックな幸せを見つめ直したいよねっていう意味の“Unplugged”なんです」

kevin「そのテーマにきちんと沿った歌詞にするのが難しかった(笑)。作詞の経験がなかったのもそうですけど、加えてラップっていうところで、韻の踏み方も同時に考えなきゃならなかったから、すごく時間がかかりました(笑)」

佐藤「でも、時間を掛けたぶん、すごくいいものが出来たと思います。ちなみにtowanaが書いたメロディー部分の歌詞は一発OKです。towanaがすごいなと思うのは、“ユーレカ”で初めて歌詞を書いてもらったときから、全部の言葉がちゃんとひとつのテーマに収束していっている感じがあるところで。なおかつ、林君的な表現っていうか、fhánaっぽい世界観も踏襲してるけど、すごいサラッとしたtowanaらしさとか、あるいはちょっと脆い感じみたいな、でもその脆さが強さみたいな感じが言葉に宿っていて。今回の“Unplugged”のtowanaが書いた歌詞もすごく良くて、僕が好きなのはDメロの、〈まやかしの理想が呼んでいる~バラバラのハート〉ってところ。録りながら泣きそうになって、思わずトークバックで、〈ここ、めちゃエモいねえ……〉ってtowanaに伝えましたね(笑)」

towana「その〈バラバラのハート〉は、メロを聴いていて、ここはこのフレーズだって出てきたところで。いつもはストーリーを作って、それに沿って頭から順番に書くんですけど、たまにこのメロのこの部分はこの言葉じゃなきゃいけないっていうのがポンポンって出てくるんです。だからその言葉に向かって帳尻を合わせるときもあって、Dメロの部分はそういう書き方だったので、それが伝わっているのかなって」

kevin「あと、towanaさんの歌詞のなかで〈ゆらゆら〉っていう表現が何回か使われているんですけど、音楽的にすごく揺れているビートの曲なんで、そこにも合っていていいなって。それと、俺の歌詞のなかに〈Pray〉って言葉が入っているんですけど、ちゃんとそこも汲み取って、〈祈るように〉と入れてくれているから、すごいなと思って」

佐藤「あと歌も、最後の盛り上がり、サビメロが変わって畳み掛けるようになるところは、towanaがステージの前に出てR&B的に歌い上げて、外国人のお客さんがワーッとなっているような、何となくNYみたいなところでライヴしているのを想像しながら作っていたんですが、そのイメージ通りだったかなと」

yuxuki「レコーディング中、ずっとブルックリンって言っていたもんね(笑)」

佐藤「ギターを録るときもそういうこと言っていたし。あとはやっぱり、ベースですね。ベースがめっちゃ歌っている。今回は3曲とも須藤優さんで、普段はゴリッとした音作りなんですけど、この曲では柔らかめな、丸い音にしてもらって、歌い上げるように弾いてもらって、それがすごい良いんですよね。ギターも、〈ジョン・メイヤーが来日したって感じでお願いします!〉って(笑)」

——というところで、久々の新曲たちを振り返りましたが、今後の予定は? リリースはもう少し短いスパンだと嬉しいです(笑)。

佐藤「どうでしょう? まずは年末のツアーですね。ぜひ遊びにきてほしいです」

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