INTERVIEW

新鋭メタルコア・バンド、Sable Hillsが抱く野望 「メタルは迷える人たちこそが聴くべき音楽」

Sable Hills『EMBERS』

(左から)Takuya、Rick
撮影協力:shibuya SANKAKU(詳細は記事末尾へ)
 

去る8月7日にリリースを迎えたSable Hillsのファースト・フル・アルバム、『EMBERS』が好評だ。2015年、東京に生まれたこの新鋭メタルコア・バンドの核は、フロントマンのTakuyaと、すべての作曲を手掛けているギタリストのRick。彼らふたりは実の兄弟であり、それぞれ24歳、22歳という若さでもある。ただ、『EMBERS』という高水準作品からは、若々しい激情のほとばしりばかりではなく、メタルの歴史を踏まえた重みや、ひと世代上のバンドかと思わせるような深みも感じられる。今回はその首謀者ふたりに、バンドの基盤にあるものから未来に向けての野望に至るまでを語ってもらった。

Sable Hills EMBERS Ember(2019)

 

これが俺たちの道だ!

――アルバム・リリース直後から、かなりの反響を得ているようですね?

Takuya(ヴォーカル)「率直に感じるのは、これまでは自分たちと同じ若い世代に聴いてもらえてるという認識があったんですけど、今回はより幅広い年齢層というか、自分たちよりも上の層に届いているという実感があって。TwitterとかInstagramでのシェアの数だけじゃなく、SpotifyとかYouTubeの再生状況を見て、聴いてくれてる人たちの割合までもデータとして把握できているので」

Rick(ギター)「そういう数字まで確認できるのは時代性でもありますよね。実際、いままでと比べて反響の大きさは全然違います。初のフル・アルバムだから、というのもあるとは思うんですけど」

――これまでもコンスタントにEPのリリースを重ねてきましたよね。それを考えると、もっと前にフル・アルバムを出すことも可能だったはずだと思うんですが。

※『Resurrection』(2016年)、『Absolute』、『Elements』(いずれも2017年)

Rick「そうですね。まさに満を持してという感じで、だいぶ待ちました。なかにはEPとかを出さずにいきなりフル・アルバムを出すバンドもいると思うんですけど、やっぱり自分としてはファースト・アルバムってすごく重みのあるものという意識があって。スリップノットにしてもスレイヤーにしても、歴史に残るファースト・アルバムを出してきたじゃないですか。だから、自分たちも1枚目は絶対にそういう重みのあるものにしたい、という想いが強かったんです。それと以前は、たとえば僕の作曲面についてもまだ未熟なところがあったりもして(笑)。カッコいいって言ってくれる人もいましたけど」

Takuya「確かにファーストEP(『Resurrection』)とか、(良くない意味で)すんごい曲も入ってるもんね(笑)」

Rick「うん(笑)。まだ自分のなかで音楽性も定まってなかったというか。もちろん好きな音楽や芯となる部分はあるにしても、自分の色、確固たる自分、みたいなものを当時は見つけられていなかったと思うんです。いまみたいに一聴して〈おっ、メタルだ!〉って感じじゃない曲も結構あったし」

『Resurrection』のタイトル・トラックを演奏する2016年のライヴ映像
 

――要するに今作に至るまでの約4年間のなかで、個々の色もバンドとしてやりたいことも定まってきた、ということなんですね?

Takuya「そうですね。自分のヴォーカル・スタイルにしても、以前は誰かの真似事みたいなことばかりひたすらやってたな、といまになって感じるんです。誰々っぽく歌うとか、誰々っぽいフレーズとか、そういう発想だった。だけど今回は……まだまだ完全じゃないんですけど、ようやく自分自身の色やスタイル、メッセージの打ち出し方を見つけられはじめたんじゃないかと思ってます」

Rick「最初の頃はあんまりメロディーという部分に重きを置いてなくて、どちらかというと重いフレーズ、重いブレイクダウンだったり、ヘヴィーさを重視してましたね。その頃から比べたらヴォーカルのクリーンなメロディーも増えましたし、ギターでメロディアスなフレーズを奏でることもすごく多くなっていて。聴き比べてもらえれば一目瞭然というくらい、メロディー要素は増えましたね」

Takuya「そんな変化があるなかで、有難いことに、バンドとしてもいままで以上に先が見えてるというか、希望を持てる状態になっていて。ちゃんと目標を定めて、しっかりと先を見据えながら活動プランを組むことができるようになってきてるんですね。そこで歌詞も、英語で、なおかつスクリームなのでわかりづらいところはあると思うんですけど、もっと〈伝えたい〉という欲求が強くなってきています」

Takuya
 

――今作では、たとえばどんなことを伝えようとしているんでしょうか?

Takuya「タイトルになっている〈EMBERS〉は、火、種火という意味合いの言葉なんですね。で、アルバムの表題曲のミュージック・ビデオを作ったんですけど、そのなかで僕が松明を掲げながら暗い道を歩いてるシーンがあって、その松明が象徴してるのが、〈希望〉なんです。その希望を携えながら、暗闇――つまり真っ暗な社会、先が見えない道を進んでいこうとすると、まわりから黒い手みたいなのが伸びてきて襲い掛かられそうになるんですよ」

――悪い大人たちが行く手を阻もうとするわけですか?

Takuya「その通りです(笑)!」

Rick「要するに、逆境を象徴してるんです」

Takuya「阻まれながらも確たる強い意志を持ってそれを跳ね除けていく、みたいな。僕くらいの年齢は、(学校の)卒業だとか就職だとか、人生の岐路に立つひとつの時期で。でも、そこで〈これが俺たちの道だ!〉とアピールできるようでありたいわけです。それが今回はできたんじゃないか、と」

 

〈Back To 2000s〉なヴィンテージ感

――本心から言いたいことを歌詞にすることと、楽曲にメロディー要素が増えてきたこと。双方は無関係ではないように思うんですが、どうでしょう?

Rick「確かにそういう部分はあると思います。自分で聴いていても、ちゃんとメロディーがある部分の歌詞って心に響いてくるものだし」

Takuya「歌う立場からしても、感情が入りやすい」

Rick「うん。だからきっとそういう意味でもメロディーを増やしたいな、という想いが強くなったんじゃないかと思いますね」

Rick
 

Takuya「〈EMBERS〉は、残り火という意味合いもあるんですけど、そういうふうに、聴いてくれる人たちのなかにも炎のようなものが残っていてほしいな、と思いながら作っていました」

――それは消え切っていない情熱、みたいなものでしょうか?

Takuya「ええ。例えば、10代の頃に持っていた情熱を、20代になって就職したり社会に出ていったりしたことで失ってしまった人も、残念ながら少なからずいるはずで。もちろんずっと持ち続けている人もいるはずだけど、一度失いかけた人たちにもそれを取り戻してほしいと思うんです」

――10代の頃というと、おふたりにとってはそんなに前の話ではないですよね。確かに、いろいろなことが起こる年頃でもある。そういう年代特有のリアリティーというのも、このバンドにとっては意味が大きそうですね。

Takuya「それはありますね。時代背景とまで言うと大袈裟ですけど、実際、アルバムを制作するなかでそういうものからの影響が当然のようにありました。身内に起こった出来事だったり、日常のこと、ごく身近な人たちとの関わりとか……。例えば“Countless Hours”という曲は、アルバムのなかでいちばんメロディックでクリーン・パートも多いんですけど、これは自分の愛する人たちに向けて書いたものなんです」

――先ほど、ファースト・アルバムは重みのあるものにしたかった、という発言がありましたが、今作はアートワークにも重厚なヴィンテージ感のようなものが伴っているように思います。

Takuya「そうなんですよ! 実は僕たち自身、Sable Hillsのメタルを視覚的に表現してもらえるデザイナーをずっと探していて」

Rick「自分たちが影響を受けてきた作品もそうですけど、やっぱり、メタル・アルバムのアートワークって単なるデザインではなくて、それ自体がアートなんですよね。そういう重みのある絵みたいなジャケットにしたいとずっと思ってたんです。ただ、それがいまどきの流行りというわけでもなければ、ものすごく予算があるわけでもなく(笑)」

――その結果、ERROR! DESIGNというスペインのデザイン・チームが手掛けることになった。

Takuya「ええ。ずっとInstagramとかで、いろんなバンドのアートワークだったり、マーチ(=マーチャンダイズ)のデザインだったりとかをチェックしていて、そのなかでERROR! DESIGNが手掛けたマストドンのTシャツか何かを見つけたんです。彼らはアルバム・ジャケットというよりはそういうTシャツとかマーチ関係、ポスターなんかを手掛けることが多いんですけど、作品を見て〈これだ!〉と全員意見が一致したんで、いきなりメールを送って話を持ち掛けたんです」

――そして、大満足の仕上がりに。

Takuya「そうですね。さっきおっしゃっていた、ヴィンテージ感というのも重要なポイントだったんです。最近、アパレルでも流行ってるじゃないですか。10代とか20代の子たちが古着っぽいものを着てたり。それってやっぱり、ファスト・ファッションを普段から着てる子たちからしたら、逆にそういうヴィンテージ感が新鮮だからなんだろうと思うんです。80年代とか90年代に流行ってたもの、むしろレトロなくらいのものが逆に革新的だったりする」

Rick「うん。逆に新しいと思います、いまの時代には」

Takuya「僕たちのリスナーの若い子たちにとっても、そう映るんじゃないかなって。音の面でも、世代的に僕たちは2000年代初頭のメタルコア、たとえばアズ・アイ・レイ・ダイングやキルスウィッチ・エンゲイジ、パークウェイ・ドライヴとか、そういうバンドがガンガン出てきた頃にぎりぎり間に合っていたんですけど……」

――多感な頃に触れたそうした音楽がバンドをやる動機になった、と?

Takuya「そうですね。ところが2010年代に入って、音楽的にもアートワーク的にもデジタルな、モダンなメタルコアが流行り出して。今作は〈Back To 2000s〉みたいな、その時代の要素を参照している感覚もあるんです」

『EMBERS』収録曲“Juggernaut”

 

メタルは迷える人が聴くべき音楽なんじゃないか

――つまりその時代がルーツであり、今作にとってのキーワードにもなった。ところで、兄弟で一緒にバンドをやるというのは、自然な流れで?

Rick「超自然でした(笑)。もともと、僕はバンドをやってなくて。兄は高校の軽音部でラム・オブ・ゴッドとかのコピー・バンドをやっていたんですけど、そのバンドが発展してオリジナル曲をやりだした時期に、メイン・コンポーザーが抜けることになったんです。で、彼らのまわりに曲を作れる人間が僕しかいない、と。それで無理やり入れられました(笑)」

Takuya「もう、半強制的に。お前しかいないから頼む、みたいな感じで(笑)」

Rick「なかなか強引でしたね。そのメンバーが辞めたことなんてべつに僕には関係ないし(笑)、他人事のはずなのに」

――でもまあ、他人ではないわけで(笑)。おふたりは少年期から、同じ屋根の下で同じような音楽を聴いて育ってきたんですか?

Takuya「まったく同じと言っていいですね。CDを買えば貸し借りもしてたし、YouTubeの関連動画を観ながら一緒にディグったり」

Rick「兄弟でディグってましたね。そこからずっと続いてきたわけです」

――さて、この先に向けてはどんな野望や願望を抱いていますか?

Takuya「今回のアルバム・タイトルが意味するのは、あくまで種火なんです。で、その種火は僕たちが作ったわけじゃないですか。これからはその火をバンドの力だけじゃなくて、バンドをサポートしてくれるレーベルや、リスナーの人たちと一緒に、いかにもっともっとデカい炎にしていくか。それが重要だなと思ってます」

Rick「そのためにもやっぱり、まずはメタルのフェスに出たいんです。いままでもいくつかフェスとかイヴェントには出てきたんですけど、僕ら自身が足を運んできたようなフェスにはまだ出たことがなくて。そういう場に、オーディションとかで勝ち抜いて出ていくんじゃなく、名を連ねるべきバンドとして自然に名前が出てくるような状況を作っていきたい、という気持ちがすごくあります」

Takuya「もう少し言うと……小学校の頃、習い事とかをしても全然身が入らなくて、自分が何をやったらいいのかまるでわからない状態だったんですね。で、中学ではサッカー部に入ったんですけど、サッカーをやってはいても、なんか心のなかに空洞がある感じで。音楽については、中1の時に初めてiPodを買って、BUMP OF CHICKEN、ELLEGARDENとか邦楽の人気なバンドを聴いてカッコいいなと思ったところで止まってたんですよ。

そんな時、〈バンドが好きならこれを聴いてみなよ〉って父親からメタリカの『St. Anger』(2003年)のCDを手渡されたんです。それを聴いた時に、心の隙間が埋まったというか。初めてヘヴィメタルっていうものに触れて、それまで聴いてきた音楽とは違うアグレッシヴで暴力的な音を聴いて、心に空いた穴が埋まったみたいな気持ちになったんです。だからメタルに救われたとまで言ってしまうとちょっとアレですけど、その経験から自分が思うのは、メタルって、自分自身の人生が上手くいってないとか物足りなさを感じてる人たち、何かをまだ探してる人たちこそが聴くべき音楽なんじゃないか、ということなんです。

そういう経験があるからこそ、僕らが同じように迷える人たちにとっての道しるべみたいな存在になっていけたらいいな、と思っていて。このアルバムもその種火になればうれしいなと。そういう意味でも、〈EMBERS〉という言葉にはすごく思い入れがあるんです」

Rick「そこでの考え方は一致してますね。というか、タイトルを付けたのは僕なんで(笑)。結構、想いが詰まってます。〈EMBERS〉には、〈種火〉の〈ここから広がっていく〉という意味合いと、その反対とも言える〈残り火〉の〈初心に戻る〉ような意味合いもあるわけで。

僕自身、中学・高校時代に比べるとメタル離れしていた時期もあって、モダンなものも含めて幅広く聴くようになってたんですけど、こうしてバンドを続けていくなかで、やっぱり自分の根底にあるのはメタルなんだってことをすごく痛感させられるんですよ。いろいろ新しいことにもチャレンジはするんだけど、何よりしっくりくるのは自分が最初に影響を受けたメタルなんだな、と。そうやって自分に〈火〉をつけてくれた音楽に、やっぱり帰結するというか。その〈火〉は決して消えないものなんです」

Takuya「うん。消えないし、誰にも消せないものですね」

 


LIVE INFORMATION

Sable Hills presents "EMBERS" RELEASE TOUR
9月7日(土)大阪Pangea
出演:Sable Hills/HONE YOUR SENSE/WORLD END MAN/BLOOD STAIN CHILD/Suggestions/Vision of Fatima/Olpheus

10月22日(火)仙台enn 3rd
出演:Sable Hills/Earthists./DECEMBER EVERYDAY/Embody The Chaos/Drop After Dawn/ISSUMAEL

11月16日(土)愛知・名古屋 車道LINK
出演:Sable Hills/Sailing Before The Wind/FUMES

11月17日(日)静岡UMBER
出演:Sable Hills/Sailing Before The Wind/SAINTZ/mildrage/GIVEN BY THE FLAMES

11月24日(日)東京・渋谷club asia
出演:Sable Hills and more

Victim of Deception presents "SUMMER OF DECEPTION"
9月15日(日)東京・渋谷CYCLONE & GARRET
出演:Sable Hills/Victim of Deception/HER NAME IN BLOOD/JILUKA/HOTOKE/Azami/LAST DAY DREAM/Mirrors/FOAD/DEVILOOF/DEXCORE/PXLLY/Graupel/Sailing Before The Wind/FALLINGASLEEP/HOTVOX/TEMPLE/HONE YOUR SENSE/A Ghost of Flare/IN YOUR FACE/Broken By The Scream/POSTHUMANITY

PUNK AROUND THE WORLD Vol.118
9月23日(月)愛知・豊橋club KNOT
出演:Sable Hills/MAKE MY DAY/From The Abyss/FUMES/A Barking Dog Never Bites/The Number Zero/Crows Alive

COUNTERPARTS × SILENT PLANET JAPAN TOUR 2019
10月9日(水)東京・渋谷CLUB ASIA
出演:Sable Hills/Counterparts/SILENT PLANET/FOAD/Earthists./Stranded/MurakuMo(OA)

★ライヴ情報の詳細はこちら

 


INFORMATION

shibuya SANKAKU
2019年7月にオープンされた総合エンタテインメント・スペース。〈ミュージシャン、オーディエンス、スタッフの集う三位一体の場所〉という想いを込め〈SANKAKU〉と命名。

東京都渋谷区渋谷3-13-9 エトワールUビルB1
050-5361-1466
https://shibuyasankaku.com/

関連アーティスト
40周年プレイリスト
pagetop