©Kiyoaki Sasahara

コンサートマスターとして、リーダーとして八面六臂の活躍

 2008年ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団第1コンサートマスターに就任し、翌年指揮者なしのベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラのリーダーを任された日下紗矢子は、13年読売日本交響楽団コンサートマスターにも就任し、さらにソロ活動も多い。現在は日本とベルリンを年に何度も往復する超多忙な身だが、さまざまな重責を楽々とクリアし、仲間と音楽することを目いっぱい楽しんでいる感じだ。

 「私、大変なことがあるとすぐに寝るんです。5分あればコロッと寝られる。何があっても寝れば大丈夫」

 こういう自然体のタイプだから仲間も安心して任せられるのだろう。だが、演奏の場では集中力が物をいう。この室内オーケラの新譜はグリーグの「ホルベルク組曲」弦楽四重奏曲第1番(弦楽合奏版)とシベリウスのヴァイオリンのための組曲。常に彼らの録音はリハーサルの3日目と本番を録音に当てているため、集中力と緊張感が音にみなぎる。

 「全員が短時間での録音に集中しないといい結果は得られません。指揮者がいませんから私がリーダーとしての立場上、全員をまとめる役ですが、10年前は大変でした。いまは各々が責任感をもって臨みます」

日下紗矢子,KONZERTHAUS KAMMERORCHESTER BERLIN グリーグ:ホルベルク組曲作品40、弦楽四重奏第1番ト短調作品27/シベリウス:ヴァイオリンと弦楽のための組曲作品117 King International(2019)

 グリーグは弦楽合奏版の編曲も担当した。

 「コントラバスが入るわけですから、それをどう配置するか編成を変えただけで基本的な面は変えていません。構成も確固たるものを備え、曲想が明確ですし物語性に富んでいますのでそれを生かしています。弦楽四重奏曲を弦楽合奏で演奏するのはアンサンブルが難しいですね。ソリスティックなところをどう表現するか、テンポの変わるところをどうするかなどじっくり考慮しました。とても聴きやすくていい曲ですよ」

 一方、シベリウスの組曲に関しては…。

 「10分くらいの曲が必要でしたので選曲しました。さわやかで清涼感のある作品だと思います」

 日下紗矢子はライナー・クスマウルのもとで研鑽を積んだ時期にヴァイオリン作品以外の勉強もすることに目覚め、シンフォニーや弦楽四重奏曲を聴くようになる。それがコンサートマスターへの道につながる。

 「さまざまな作品に目を向けるようになりました。クスマウル先生が次のステップへと連れていってくれました。いまはバロック・ヴァイオリンも学び、バッハやビーバーなどを演奏するときはバロック・ヴァイオリンを使用しています。拍感の大切さが実感できますし、リズム、アーティキュレーションも学べます」

 常に勉強あるのみの姿勢を崩さない。12月にはこの室内オーケストラと来日公演も控えている。リーダーとして10年目の絆の深さを披露する絶好の機会だ。

 


LIVE INFORMATION

日下紗矢子 ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ2019ツアー日程
○12/06(金)14:00開演 神奈川・フィリアホール
○12/08(日)15:00開演 福岡・宗像ユリックスハーモニーホール
○12/09(月)19:00開演 東京・東京文化会館小ホール
○12/14(土)14:00開演 兵庫・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
○12/15(日)16:00開演 群馬・昌賢学園まえばしホール大ホール
www.melosarts.jp/melos-arts/concert/