(左から)磯本雄太、井上花月、鈴木迅、川島健太朗
 

Laura day romanceのデビュー・アルバム『farewell your town』が話題となっている。サンシャイン・ポップの系譜に連なるハーモニー、瑞々しくウェルメイドなメロディー、詩情に満ちたフォーキーな演奏は、インディー・ロックのファンから大いに歓迎されたことだろう。さらに、外出自粛でアコースティック・サウンドの需要が急上昇……なんてデータもあるそうだが、不安を包み込むような歌とサウンドは、もっと広いニーズとも合致しているのかもしれない。初作にしてエヴァーグリーンと呼びたくなるポップネスは、どこか新人離れしたものがある。

2017年に大学で知り合い結成されたLaura day romanceは、渋谷系への憧れから洋楽に精通する一方、シャムキャッツやHomecomingsの背中を追うように青春のギター・ポップをかき鳴らしてきた。しかし、〈架空の街を舞台にした短編集〉をテーマにした『farewell your town』では、若さゆえの勢いに頼る代わりに、ある意味で職人的とも言えるソングライティングを実践している。こんなに早く成熟のターンを迎えるバンドも珍しい。

そんな彼らのパーソナリティーや、音楽的なヴィジョンについてはもっと語られるべきだろう。例えば、『farewell your town』がビッグ・シーフの影響下にあると知れば、作品の印象もガラリと変わってくるはずだ。バンド結成のいきさつから、大人の階段を数段飛ばしで駆け上った背景まで、メンバー4人に話を訊いた。

Laura day romance 『farewell your town』 lforl(2020)

 

アメリカン・ポップスがひとつの指標

――『farewell your town』をリリースして少し経ちますが、反響はどうですか?

井上花月(ヴォーカル/タンバリン)「聴き込む感じの作品になったので、どんな反応が来るのか不安もあったんですよ。でもチラホラ聞いた限りでは〈落ち着いて聴ける〉とか、ちゃんと作品を受け取ってもらえている印象ですね」

川島健太朗(ヴォーカル/ギター)「あとは時期が良かったのかもしれない。意図はしてなかったけど、家で音楽を聴く時間が増えたことで、より伝わりやすくなった部分もあると思います」

――アルバムのティザー映像も、そういう状況を活かしたものになってましたね。

井上「Zoomでミーティングしたときに、これを使ったら面白そうだと案が出たんです。ただやっぱり、他のアーティストさんも同じことを考えていたから……」

川島「早くやるしかないって(笑)」

『farewell your town』のティザー映像
 

――ミュージック・ビデオといえば、最初のEP『her favorite seasons』(2018年)に収録された“lovers”の映像は改めていいですね。部屋に飾ってあるレコードが最高じゃないですか。ビーチ・ボーイズ、バーズ、ハーパース・ビザール、ニック・ロウ、ライラック・タイム、ロケットシップ、アロー・ダーリン……それに大量のペイヴメント。

一同「(笑)」

――洋楽好きとしては興奮しました。いい趣味してるなって。

鈴木迅(ギター)「(バンド内で)特にレコードを持っているのが僕と川島で」

川島「MVの監督にありったけのレコードを持ってこいと言われて(笑)」

鈴木「そうそう。僕らとそんなに遠くない作品を持ち寄って、MVの小ネタになればっていうのはありました」

2018年のEP『her favorite seasons』収録曲“lovers”
 

――あそこに飾られたレコードは、バンドの音楽性を象徴しているものと言えそうですか?

鈴木「どうだろう。僕のなかには(影響が)根深くありますし、どこかで自然に出ているかもしれないけど、必ずしもそういうわけでもないですね。ビーチ・ボーイズは大きいけど」

――でもわかる気がします、みなさんにとってビーチ・ボーイズが重要なのは。

鈴木「ビーチ・ボーイズのようなコーラスがいいバンドは、回り回って若いインディー・バンドにも影響を与えていると思うんですよ」

川島「僕は高校までずっとイギリスの音楽ばかり聴いていて。大学で鈴木と出会ってからペイヴメントやウィルコなどを教えてもらったんです。それからビーチ・ボーイズもそうだし、キャロル・キングとかシンガー・ソングライター系も聴くようになって。アメリカのポップスはバンドのなかでもひとつの指標としてあると思います」