Aqua Timezの終了後に太志が新たに立ち上げたのは、絵と詩と音楽で表現する叙情的なパレード。そこには、彼自身の姿がこれまで以上に投影されていて……

自分自身のことを歌おう

 みずからの人生や日常から紡ぎ出された〈歌〉、そして、そこに込めれた情景を映す〈絵〉。元Aqua Timezのヴォーカリスト、太志のソロ・プロジェクト=Little Paradeは、〈情景が浮かぶ詩、絵、それらを合わせた音楽を制作し、作品やライヴを披露していく〉ことをコンセプトに掲げている。その根底にあるのは、太志自身の感情や生き方そのものだ。“千の夜をこえて”(2006年)、“虹”(2008年)などのヒット曲を生み出したAqua Timezは、2018年11月の横浜アリーナ公演をもって解散。18年のバンド活動に終止符を打った太志は、すぐに次の音楽活動に移行するのではなく、「〈やらなくちゃいけない〉という気持ちをなくそうと思って」と、アルバイトをしていたという。

 「人生の半分くらいAqua Timezをやってきたし、すぐに次の活動をしようという気になれなくて。解散した翌月にUVERworldの日本武道館公演でスタッフのバイトをやったんですよ。ライヴが終わって撤収作業して、九段下から電車で帰って。ステージに立てていたありがたさもわかったし、寂しさもあったんですけど、そういう時間が必要だったんですよね。ギターを触って曲を書きたくなったのは、解散して半年後くらいです。最初に出来たのは“ユニコーンのツノ”と“群雨”。特にテーマは決めていなかったんだけど、バンドを解散した後の自分のことを歌った曲になりましたね、自然と」。

 その後も〈生きてる日々〉をテーマに少しずつ曲を書き貯めた太志。さらにイラストレーター/デザイナーのMakoto Tonoとの出会いを経て、2019年の秋、音楽と絵を融合させたプロジェクト、Little Paradeの始動に至った。

 「バンド時代はタイアップもあったし、テーマをもとに曲を作ることが多くて。そこで得たものもあるんですが、Little Paradeでは自分自身のことを歌おうと思ったんです。そのときの自分の状態を歌詞とメロディーに落とし込むというか。それが良いかどうかは聴く人が判断すればいいし、それ以上のことを考えると難しくなっちゃう気がしたんですよね。もちろん趣味でやろうなんて思ってなくて、〈いままでの曲に負けないものにしたい〉という気持ちもありました。プロジェクトにした理由は、せっかく活動を始めるんだから、今までにやったことがないことに挑戦したくて。物語や絵、映像を含めて音楽を表現したかったし、そのほうがより伝わるのかなと。いまも模索してますけどね」。

 昨年11月に行われた生配信ライヴでは、Aqua Timezの楽曲とLittle Paradeの楽曲をどちらも披露。MCで太志は「これから何曲作っても、Aqua Timezの曲は1曲も減らない」「Little Paradeでいろんな表現に挑戦していく。それがAqua Timezがすごかったことの証明になるから」と語った。それはまさに、〈これまでのキャリアを携えたまま、先に進んでいきたい〉という表明だったと思う。

 「〈新しいプロジェクトを始めたのに、なぜ前のバンドの曲を?〉という声もあるかもしれないけど、Little ParadeでライヴをやるときはAqua Timezの曲もカヴァーしたいという気持ちが芽生えるだろうし、それを無理に消し去るつもりはなくて。〈Aqua Timezの曲は歌わない〉と決めつけるのは良くないと思うんですよ。たださえ今の社会にはルールがたくさんあるんだから、自分で自分にルールを課すことはないかなと」。