川谷絵音のソロ・プロジェクト〈美的計画〉への参加が話題を呼んだシンガー・ソングライターによる初アルバム。フォーク・シンガーのようなノスタルジックな雰囲気と、R&Bシンガーのようなレイドバックしたタイム感を兼ね備えたヴォーカルは存在感があり、ネオ・ソウル、エレクトロ、ロックとさまざまなトラックを乗りこなすスキルも十分。内に秘めたエモーションを感じさせる刹那的な歌詞も特筆すべきで、ヘヴィースモーカーの彼とのぎこちない関係性を歪んだギターと共に歌う“ヘビースモーク”と、ボカロPでもあるくじらが参加した煌びやかなトラックでダンスフロアの一夜を描く“透明な黒と鉄分のある赤”は特に耳に残る。シティ・ポップにもネット系にもリーチできる、2020年代型J-Popの担い手だ。