凄腕キャトルマン(連弾)兄弟の現在形

 1台のピアノを4手で自在に操る独自の〈キャトルマンスタイル〉で音楽シーンを席巻し、まもなく結成12年。約3年半ぶりとなる4thアルバムでは彼らを象徴する〈4〉に因んだオリジナル曲がずらり。例えば四季をモチーフに夜想曲~追想曲~小夜曲~円舞曲と趣を変えて続く“4つの愛の小曲集”は弟・圭土の作。

 「それぞれのソロ演奏や、内部奏法もあり、色々な情景の浮かぶ曲だと思います。自分がソロを任された部分は特に入念に練習しましたね(笑)」(守也)

 兄・守也がギリシャをイメージして書いたという“ムッシュ・グレコ”も4つの情景から成る組曲。

 「これも最初は“帰道”と“足早”だけだったけど、間に“石畳”と“路地”を挟んで4部作に。民族楽器のブズーキを思わせるフレーズとか、ピアノだけでうまくギリシャの舞踊曲っぽさ、文明の交差するエーゲ海の多彩な文化の雰囲気が出ていると思う」(圭土)

レ・フレール 『4 -Quatre』 ユニバーサル(2014)

 そんなワールド・ミュージック的なアプローチも本アルバムのテーマ。“スペイン舞曲”は、圭土がスーパー・ヴァイオリニストのヴァスコ・ヴァッシレフと結成したユニット〈Viano〉から生まれた楽曲の連弾版。

 「Vianoのスペイン・コンサートで初めて披露した曲。ブギウギは別として、これまでのアルバムには日本をイメージした曲が多かったけど、この3年半の間に会ったいろいろな方々との出会いに刺激されて、今回は様々な国の要素を意識的に取り入れてみた。“クアトロマーノス”はタンゴのリズムを取り入れた曲ですし」(圭土)

 フランス語の軽い挨拶言葉さながらにリズム遊びのような楽しい“Cou cou!”(守也)もあれば、2部作“賛歌 四海兄弟”(圭土)では〈人類愛〉を説き、加えて守也作の“夢”や“颯(かぜ)”には和のテイストも感じられる。

 「ソロ・プロジェクトでピアノ以外の楽器編成を経験したこともいい勉強になったと思う。連弾は二人で自然に始めたことでしたが、これからも追求していきたい」(守也)

 作曲はそれぞれ別に行うが、連弾するのはどちらか一方の家のピアノで。アルバム制作中は家族の予定をぬって、お互いの家を何度も行き来したとか。

 「おかげさまで姪っ子にもしょっちゅう会ってます。たまに〈お帰りなさい!〉って言われる(笑)」(守也)

 「僕も甥にしょっちゅう会えるので嬉しいです。兄弟なので僕らに解散はあり得ない。お互いに爺さんになっても一緒に連弾していると思う」(圭土)

 レ・フレールの歩みは止まらない!