タワーレコードの全国のスタッフが、己の〈耳〉と〈直感〉だけを基準に世間で話題になる前のアーティストの作品をピックアップし、全店的なプッシュへと繋げる企画〈タワレコメン〉。これまで、相対性理論、神聖かまってちゃん、クリープハイプ、cero、KANA-BOONといった現行シーンの最前線で活躍する錚々たるアクトをいち早く発掘しており、現在は月1回のペースで洋楽と邦楽のオススメ作品を紹介しています。Mikikiでは、そんなタワレコメンのアーティストを選出する極秘会議に潜入! タワレコメンは一体どうやって決まるの!? そんな疑問にお答えするべく、独占レポートをお届けします! まずは2014年9月度の〈洋楽〉編!!


 

8月某日。タワーレコード本社の会議室に、午前中から続々と人が集まってきます。本社や各店のスタッフ、店長など……いずれも〈耳に自信アリ〉な音楽通の猛者ばかり。会議室内にはCDコンポが置かれ、どうやら各推薦者のオススメ作品を全員で聴きながらタワレコメンを絞り込んでいく模様。ノミネート作品に関する資料が配られ、いざ会議がスタート!

トップバッターは、シドニー発のトロピカルなインディー・バンド、グリスウォルズのアルバム『Be Impossive』。ヴァンパイア・ウェークエンドあたりの折衷感に近いバランスを持ったキラー・チューン“Beware The Dog”や、パッション・ピットばりのマジカルなシンセ・ポップ“Down And Out”など、佳曲がいっぱいです! 早くも有力候補といったクオリティーのサウンドに、会場のみなさんの反応も良好。

続いて、カリフォルニアの5人組バンド、マーチャンダイズのアルバム『After The End』を試聴。USのバンドでありながら、UKの名門レーベル〈4AD〉が送り出す新人で、すでにNMEやPitchforkといった海外メディアからも注目を集めている存在です。サウンドも往年のニューウェィヴやネオアコを現代に蘇らせたような風情で、スタッフからは「スミスっぽくていい感じ!」との声も。

お次は、今夏の〈SUMMER SONIC〉でも来日した注目のディーヴァ、バンクスのデビュー作『Goddess』。推薦したスタッフからは、「インターネットやFKAツイッグズと一緒に売り場を作りたい!」との具体的なプランも飛び出したように、エッジ―かつアトモスフェリックな音作りと凛とした歌声が素敵ですね~。

そんな会場の雰囲気をガラリと変えたのが、「これぞUKロック!と言いたいサウンド」とのコメントと共に紹介されたキャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンのニュー・アルバム『The Balcony』。レディオヘッドのマネジメントによるプッシュもあるとのことで、これから知名度が広がりそう。アッシュ直系の青臭いメロディーが炸裂する先行シングル“Fallout”には「潔くて分かりやすい!」との感想が聞かれました。

次に再生されたのは、すでに店舗で紹介したところ反響が大きかったというナッシュヴィル出身の注目バンド、コロニ―・ハウスの最新作『When I Was Younger』。担当者は1曲目“Silhouettes”のキャッチ―さにノックアウトされて入荷を決意したとのことですが、たしかにすぐにでも歌えそうなメロディーがいい感じ。ヴォーカルとギターの2人は、クリスチャン・ミュージック系の大御所、スティーヴン・カーティス・チャップマンのご子息とのことで、本国USから先に火が着くか!?

続いては、Mikikiでも紹介したことのある日系R&Bシンガー、ジェネイ・アイコの新アルバム『Souled Out』。オルタナティヴR&Bの流れに乗ったふんわりと感傷的なトラックと、その空間に溶け込んでいくようなしっとりと妖艶な歌声。絶品です。「売り場では先ほどのバンクスとも絡められるのでは?」とのアイディアも飛び出しました。

ジェネイ・アイコの2013作『Sail Out』

ここで、〈世間で話題になる前〉かは微妙(?)ながら、今秋の日本デビューでさらに勢いづくこと間違いなしのニュージーランド発女性シンガー・ソングライター、キンブラのセカンド・アルバム『The Golden Echo』が紹介されることに。ミューズのマシュー・ベラミーやフォスター・ザ・ピープルのマーク・フォスターが参加するなど、ゲスト陣も豪華な同アルバムだけに、間違いないクオリティーの楽曲がバンバン飛び出しました。

お次は、推薦スタッフが「フロントマンのルーク・スピラーの雰囲気は、フレディー・マーキュリーやキース・リチャーズにも通じる!」と大きな賭け(?)に出たストラッツのデビュー・アルバム『Everybody Wants』。タワレコの店内放送でも映えそうな痛快なサウンドは、なかなかの好感触でしたよ!

最後は、UK発の新世代ソウル・バンドであるママズ・ガンのサード・アルバム『Cheap Hotel』。2009年のファースト・アルバム『Routes To Riches』がタワーでも高セールスを記録した彼ら。担当いわく「セカンド・アルバムは若干足踏み状態でした……が、今回の新作は最高の内容です!」とのことで、熱い訴え通りのファンキーかつグル―ヴィーな楽曲はカッコイイの一言! 今秋には来日公演の開催も決定しており、話題を集めそうです。

ということで、これにて全ノミネート作品を聞き終わり、ようやくタワレコメンの該当アイテムを絞り込む作業へ突入。その方法はというと、単純明快な多数決! レベルの高いアルバムが集まっているせいか、アタマを抱えるスタッフもいたほどの混戦となりましたが……いよいよ次ページにて結果発表!!