(左から)井上銘、RIO

ただ今20歳の、規格外のウクレレ奏者がRIOだ。ハワイの楽器であるウクレレを自在に演奏する様に触れると、彼が一体どういうバックグラウンドを持つ人物であるかがよく見えてこない。ようは、彼がそれだけウクレレを自分の楽器とし、我が道を行っている……。

日本に生まれたものの小学生からインターナショナルスクールに通い、ウクレレを買ったのはハワイに家族旅行した際。そして、幸いにも小学4、5、6年生の時は父親の仕事でホノルルに住み、実地でウクレレを学んだ。現在は小曽根真からも才能を認められライブにも呼ばれているが、そんな彼がついにアルバム『RIO』をリリースする。そのプロデュースは、俊英の名を欲しいままにするジャズギタリストの井上銘。両者同席のもと、RIOの羨ましくもある豊かな経験と、ウクレレの可能性を伝える『RIO』について語ってもらった。

なお、彼は2015年に『I ~around~』というアルバムを出したことがあるが、今作こそやりたいことが十全に叶った真のデビュー作であるという認識を本人は持っている。

RIO 『RIO』 TWIN MUSIC(2021)

 

ウクレレは魔法の絨毯――RIOに息づくハワイのアロハスピリット

――ハワイ在住時は、現地のウクレレマスターみたいな人に習ったわけですか。

RIO「ハワイの人って基本ウクレレを皆持ってるんですよ。僕の場合、日本人でウクレレを持って歩いていると、〈キミ一緒に弾こうよ〉と、すごいナチュラルに誘ってくれるんです。それで最初は二人で弾いていると、そこに〈何々?〉という感じで他の人たちが混ざってくる。その中にめちゃすごい人もいるんですよ。それで、いろんな方と一緒に弾くことによって、知識を与えてもらいました。皆、どんどん教えてくれるんです。それが、ハワイのアロハスピリットなんですね」

――そういう環境に学ぶと、他の楽器に浮気するようなこともないですね。

RIO「もう、ウクレレしか、僕の周りにはありませんでした」

――では、ハワイに住んだ時からウクレレ奏者になりたいと思ったんですか。

RIO「そうですね。〈楽しいおもちゃ〉という最初に持った時の気持ちは変わらないですけど、どんどん教えてもらい、それを家に帰って練習し、〈ああすごいすごい、こんなことができるんだ〉という感じで時間は経っていきました」

2020年の“白日”のパフォーマンス動画。King Gnuのカバー

――そして、中学生になる年に日本に戻ってきたんですか。

RIO「そうですね。一度戻ったんですが、海外にいろいろ呼ばれるようになったんです」

――ハワイにいる時から、知る人ぞ知るという存在になっていたんですね。

RIO「いやあそれは分からないですけど。ハワイで弾いていると、〈ウクレレを学びたい〉という海外から来た人とも知り合うんです。それで、〈日本の子なんだったら、僕は台湾に住んでいるので来て欲しい〉といった感じで、結構アジアの方から誘っていただいたりしたんです」

――言葉(英語)には困らないですしね。

RIO「そうですし、基本ウクレレがあれば問題ないです。喋れなくてもいけますよ」

――ウクレレはパスポートのような感じですか。

RIO「ほんと、そんな感じです」

――現在、他の楽器を弾いたりはするのでしょうか。

RIO「ギターやベース、バイオリンやチェロもちょっと。弦楽器は結構触っていますね。今まで基本ウクレレ一本で来たんですけど、頭の中では常にバンドの音が鳴っているんですよ。〈他の楽器の特性を知っておくといいよ〉と言われて、それで触ってはいます」

――でも、いろいろ弾いてもやはり〈ウクレレはいいな〉となるんでしょうか?

RIO「そうですね。ウクレレは出会った時から、様々な所に連れて行ってくれる魔法の絨毯のようなものです。本当にウクレレのおかげで得た出会いは沢山ありますし、ウクレレはまだ知られていないので、もっと広く知ってもらいたい。そして、ウクレレのいろんな可能性を開拓していきたいという気持ちを持っています」

――ウクレレの一番の魅力とはなんでしょう。

RIO「僕の中では、とにかく可能性がある楽器です。多分ギターよりウクレレの方がまだ未知の可能性があると思います。

まあ、楽器それぞれに魅力はあると思うんですが、僕にとっては今までずっと続けてこられた大好きな楽器というのが、ウクレレ。ほんと、それだけなんです」

――ハワイで習った以外はずっと独学できたのでしょうか。

RIO「そうです。ハワイの人たちは基本タブ譜とかを使わないので、弾いているのを目で見て、それを真似て弾いていきます。

僕はハワイでウクレレ以外にもう一つ重要なことを学んで、それが先ほど言ったアロハスピリット――アロハ魂なんですね。それは〈謙虚〉というか、〈人に無償の愛を与える〉というものです。僕がハワイにいた頃、ウクレレをどんどん教えてもらったというのも、皆にそういうスピリットがあるから。僕がウクレレを持って誰かのライブに行くと、一緒にやろうよとステージに上げてくれるんです。そんな温かい気持ち、アットホームな気持ちをハワイの人たちは音楽を通して見せてくれました。それは、今も僕の中に息づいています」

――それは、RIOさんのウクレレの音色を聴いても分かるような気がします。

RIO「ありがとうございます」