音楽を言葉で表現することは音楽を生業とする方のみならず、例えばSNSで音楽を聴いた感想を発信する聴き手にも重要となった。本書は読み手が悠久の時を経て残ったクラシック音楽を体験するだけでなく、今の時代背景を反映した現代音楽やポストクラシカルも体験する勇気を与え、音楽を表現する言葉について指針を示している。著者のインタビューではペルトは〈祈り〉の音楽としてシューベルトに価値を見出す。シルヴェストロフはロシア政治について言及し、ペルトと共通して心休める音楽としてシューベルトをあげている。また、武満徹にデューク・エリントンについて原稿を依頼した経験譚も興味深い。