名曲の交響曲“未完成”に注目したい。これまでに聴いたことのないアグレッシブで鮮烈なサウンドで、緊迫した雰囲気が漂う。優しいアンダンテの第2楽章でも棘とげしく慟哭すら感じられる。この作品がこれほど空恐ろしいとは。愛らしいイメージの交響曲第5番も、ここではそれを覆す高揚感に満ちた熱演。出だしから快速で、気持ちよい音色のフルートの活躍とガット弦がかき鳴らされる様が爽快。第2楽章の木管楽器の美しいアンサンブルも聴きどころ。エラス・カサドはチェンバー・オーケストラを前にすると、立体的でキレのある素晴らしい音楽を引き出してくれる。