ここ数作は外部プロデューサーを迎えてアルバムを制作してきたワイルド・ナッシングだが、約5年ぶりの5枚目となる本作は、デビュー作以来となるセルフ・プロデュース。彼の特徴であるドリームポップを奏でつつ、今作は80年代のダンス音楽を彷彿させるリズムを強調した曲が目立つ。例えるなら〈ネオアコ・バンドが奏でるダンス・ミュージック〉といった趣だ。とはいえ聴こえるサウンドは2020年代のフィルターを通過しており、何より密室感と開放感の狭間を行くような感覚がいかにも彼らしく魅力的ですね。決して懐古主義にはならず、新しいインディー・ダンス・ロックの姿を示した快作だ。