ジャズとロックを両またぎする4人組の雑多で乱脈なサウンド

 コントーションズへの日本からの回答。あるいは『ノー・ニューヨーク』の正当な嫡子。4人組インストゥルメンタル・バンド、igloo(イグルー)の『Synapse Confusion』を聴いて、そんな形容が脳裏をよぎった。だが、聴き進めるうちに翻意した。そのような固有名詞を持ち出さずとも、彼らの音楽がエッジーで独創的であることに変わりはない。ジャズとロックとニュー・ウェイヴとサイケをまたぐような雑多で乱脈なサウンドは、幅広い層に訴求力を持つだろう。

Igloo 『Synapse Confusion』 Grand Fish/Lab(2023)

 iglooは、THE FOOLSのメンバーでもある若林一也のプロジェクトから発展したバンドだ。一騎当千のプレイヤーから成る4人組、その演奏は一分のぬかりもスキもない。メンバーは若林一也(サックス)、田島拓(ギター)、岡部琢磨(ベース)、KAZI(ドラム)。

 若林の野太いサックスは、ジェームス・チャンスやジョン・ルーリーにも劣らぬ吹きっぷり。フリークトーンやサブトーンを用いたブロウは、野生動物の咆哮のようである。岡部琢磨のベースは演奏をぶっとく貫き、KAZIのアグレッシヴなドラムは背後から煽り立てる。田島拓のギターは、破壊的で衝動的なプレイで魅せており、リフ一発でリスナーを黙らせる。凄みと鋭さが桁違いだ。

 前作『PARASITE SYSTEM』から八か月。ハイペースでのリリースは、バンドのコンディションが良好な証拠に違いない。スタジオ録音ではあるが、限りなくライヴでのテンションや熱量が持ち込まれている印象だ。一方、スローな曲では叙情性が滲み、起伏と抑揚に富む構成が功を奏している。

 ただならぬ緊張感と臨場感で貫かれながらも、決してうたごころを忘れない。尖鋭的でありながらも、後味はポップ。そんなアルバムだと思う。ファースト・アルバムをスプリングボードとして大きな跳躍/飛躍を遂げた彼ら。そのキャリアを語る上で、記念碑的な位置づけとなるだろう傑作が産み落とされた。あらためてその発表を言祝ぎたい。