“サルヴェ・レジナ”を聴けば、礼拝堂で祈りを捧げるトスカの姿が眼前に浮かぶようだ。ゲオルギュー、本領のプッチーニ。歌曲の世界でも蔵される特別な魅力を聴き手に存分に振る舞ってくれる貫禄の歌いぶり。たっぷりと声を使い、濃淡を自在にコントロールする。〈歌心〉に満ちる濃厚な味わいを携えた楽想がふんだんに現れ、ドラマを表現する粒揃いの楽曲。アルバム名に採られた“あなたに”は16歳時の作品。早熟な筆にほとばしる抒情への一途な憧憬に驚かされる。「トゥーランドット」に取り掛かりつつあった晩年期にまで渡り、どの曲にも深く耳を傾けたい。2024年のプッチーニ没後100年に、忘れがたい一枚。