様々なバックグラウンドの老若男女が集った〈Collective〉

〈ミュージックコレクティブ〉を掲げるシンガーソングライターのXinUが2024年3月24日に〈都市型プチフェス〉と銘打った音楽・アート・マーケットが楽しめるイベント〈XinU presents Collective〉を開催した。会場は2021年にできたばかりの下北沢ADRIFTだ。ゲストはアーティストのぷにぷに電機とHIMIに加え、かねてより縁のあるSELECTOR-TATSURU、君嶋麻里江の2人のDJで、XinUが声をかけて実現した座組だという。フードやマーケットもこだわっており、例えばXinUと縁が深い群馬・桐生のクラフトビールショップ〈Bryü〉、古着などの〈RELIC TOKYO〉、XinUのスタイリスト十亀千波による〈X closet〉、GUTSONとのコラボアートの展示やガチャの販売など、まさにフェスと言うにふさわしいイベントだ。この日はソールドアウト公演で、開演前の15時の時点で会場前には人だかりができていた。

会場に入るとSELECTOR-TATSURUが7インチレコードを爆音で流し、休日らしい温和なムードの下北沢の街と対照的にミラーボールが煌々と輝く濃密なクラブの雰囲気が充満していた。親子連れも多く、おそらく日常では集うことがないであろう様々なバックグラウンドを持った人々が老若男女問わず集った日曜の昼下がり、こういう場にオーディエンスとしていられるのは心地よい。

 

自由なノリで実力を発揮したXinU(Acoustic Set)

スティングの“Englishman In New York”にポリスの“見つめていたい”、Original Loveの“接吻”といった不動の名曲が流れた後、XinUが1人でステージに登場し、「待っててくれてありがとう! Collective始まります!」と宣言。早速アコースティックセットで“もうやだ”からスタートした。ギターを弾きながら都会的な孤独感を情感たっぷりに芯の通った声で歌い、空気は一気にXinUのものに。続く“オモイオモワレ”ではレイドバックした曲調に合わせて拍手は自然と4拍で打っていたところからバックビートのみへ切り替わり、一体感が生まれる。

「あらためましてXinUです。こんばんは!」と挨拶し、「XinUが〈親友〉になりたいアーティストを呼んでます。ふざけてるようですけど本気です」と思いを語る。その場にいる全員を含めて作り上げる空間、それが〈Collective〉だということだろう。

“楽園”では制作にも携わる武藤勇樹がキーボードで参加したことで清涼なサウンドに磨きがかかり、そこにXinUが歯切れのよいリズムで滑らかに言葉を連ねていく。ギターを手放して立ち上がったXinUは「まだどこでもやってない新曲をやります」と言って新曲を披露。ある近しい人物を思い浮かべながら書いたという非常にパーソナルな一曲だという。素早く言葉を詰め込む瞬間も織り交ぜたテクニカルな譜割が印象的で、確かな新境地を感じさせた。

“やまない雨”は、XinUがルーパーを使って1人でアカペラコーラスを重ねるスタイルだ。曲の終盤ではピアノも加わり、自ら作り上げたハーモニーに乗って自然体で歌う。

続く“合図 EYES 合図”はアッパーな冒頭のリフの時点で拍手が起こる人気曲だ。XinUの声で再現したトランペットのアドリブ(実は咄嗟に出たものだったとか)や庄司陽太のギターソロにも大歓声が巻き起こる。それもそのはずで、とにかくADRIFTの音響が素晴らしいのだ。XinUは〈雨も止み/冬も終わり〉の合間に〈今日降らなかったね〉とアドリブを入れるなど、ノリにノッている。

最後は自身で作詞・作曲・プロデュースを手がけた新曲“愛おしいままで”を歌い切った。終始安定した歌声で魅了し、パフォーマーとしての実力も十分に見せた。