はじめまして! 本日よりMikikiにてブログを書かせて頂く事となりました池田と申します。

僕はタワーレコード新宿店でNew ageというコーナーのバイヤーを長年務めておりますが、〈そもそもどんなコーナー?〉って方も多くいらっしゃると思いますので、自己紹介がてら、コーナーの成り立ちなどお話しようと思います。

 

タワレコのNew ageコーナーの始まりは1995年3月に、今の場所に新オープンした渋谷店にアヴァンギャルド・コーナーが大々的に登場した事です(「STUDIO VOICE」の1995年4月号に渋谷店にアヴァンギャルド・コーナーが出来る事を著名人が対談形式で紹介した記事が載っていました)。

当時はマニュアル・オブ・エラーズ、ロス・アプソン、クララ、クラブ・スカルといったアヴァンギャルド~モンド・ミュージック専門店が非常に注目を集めており、様々なジャンルより逸脱した音楽をジャンル関係無く聴く行為を始めるリスナーが増えてきた時代でした。

新宿店がオープンしたのは1998年ですが、新宿店でもNew ageというコーナーの中にアヴァン・ポップ/アヴァンギャルド/モンド/現代音楽などを紹介するコーナーがスタートしました。

 

実際どういった音楽を置いている(いた)かと言うと、

■90年代後半~ジム・オルークやトータスらのシカゴ音響派

トータス“Swung From The Gutters”のパフォーマンス動画

■パスカル・コムラードやクリンペライに代表されるフランスのトイポップ

パスカル・コムラード“Russian Roulette”のパフォーマンス動画

■池田亮司、mego、raster-notonなどのポスト・テクノ~テクノイズ

池田亮司〈The Transfinite〉の動画

■ドイツのKaraoke Kalkやmorrなどのエレクトロニカ

カラオケ・カークからリリースされたヴンダーの98年作『Wunder』収録曲“Look Out For Yourself”

■デレク・ベイリー、ジョン・ゾーンなどのフリー・インプロヴィゼーション~アヴァンジャズ

etc.

デレク・ベイリーの2001年のパフォーマンス動画

上記はごく一部ですが、ロック、ジャズ、クラブなどの従来の範疇からはみ出した活動を行うこういったアーティスト達の作品を集めてコーナー展開していました。

当時こういった音楽がインターネットの個人持ちが当たり前になる少し前、評論家やディストリビューターによって日本に徐々に紹介される様になりました。そして、タワレコのNew ageコーナーもそういった情報の受け皿/発信地となっていった訳です。

また、新宿店では上記のルーツともいえる、現代音楽、電子音楽、ノイズ、モンド・ミュージック、アンビエント、ジャーマン・エクスペリメンタルetc.も併置する事で、立体的に俯瞰して、現在のジャンルからはみ出した音楽の成り立ちをそのルーツと共に音で聴いて楽しむ。という配置にしています。

 

さて、New ageというジャンルはそもそもはヨーロッパ、アメリカ発祥のヒッピー文化~自然回帰思想から生まれた瞑想、ヒーリング的な音楽を指しているのですが(もちろんこういった作品も取り扱っております)、タワレコ独自の文化で、New ageという文字通り新しい音楽をジャンルレスで幅広く紹介する場所の名前としても使用しています。

ちなみに、チルウェイヴ/グローファイやOneohtrix Point Never、UltrademonのSea punk等の登場以降、能動的に逃避を選択する時代の気分や、ネットによる情報の均一化等も影響したアトモスフェリックな音像に対する形容詞として、〈ニューエイジ〉という言葉がメディアによって使用され始め、現在はその意味でも定着しています。

コーナーはこういった成り立ちで出来ており、現在も洋/邦やジャンル関わりなく、様々な音楽をセレクトしてコーナー展開しています。

では今回はいくつか、上記で言うところのルーツが分かりやすくコンパイルされている盤と書籍をご紹介致します。