INTERVIEW

UNTOLD 『Black Light Spiral』

インダストリアルのシャープな快感へと歩を進める重々しいエクスペリメント——黙して語らず、ひたすら肉体に作用するベースとビートは驚くほどに饒舌だ!

UNTOLD 『Black Light Spiral』

 「(初めに影響を受けたベース・ミュージックのDJは)DMZのイヴェントでプレイしてた連中の全員だね。マーラコーキローファースクリームベンガヤングスタとかね。彼らがダブステップを発明したんだ!」。

 ジャンルを超越したエキセントリックなプロダクション、トップ・テクノDJたちに愛されるトラックの数々、極めつけにテクノの聖地ベルグハインでクラウドを一心不乱にダンスさせているプレイを目の当たりにしたら、彼がダブステップのタームから出てきたアーティストだということを忘れてしまいそうになる。しかしジャック・ダニングことアントールドは、前述の発言の通りダブステップ第1世代に魅了され、まぎれもなくそのシーンに関わり、その進化に携わってきた一人である。2008年にヘッスル・オーディオからシングル“Kingdom”でデビューした彼は、同年に自身のレーベル=ヘムロックも立ち上げ、以降ベース・ミュージックとさまざまなエッセンス——テクノやハウスのフィーリングだったり、スカル・ディスコを彷彿とさせる神秘性だったり——の交配を続けたサウンドで、活動当初から一目置かれる存在となっていた。

【参考動画】アントールドの2008年のシングル“Kingdom”

 

 「それはすべて、新鮮な音を求めていくなかで、すごく自然に起こったことなんだ。俺たちは常にいろいろな影響を採り入れて、新しい可能性を追求してる。それと、ダブステップのアンイーヴンなリズムとハウスとテクノのより直線的で躍動的な構成とを繋ぎ合わせるのに、UKファンキーが一役買ってることも忘れちゃいけないよね」。

 そんな彼の方向性が賛同者を多く生み、ブリアルの登場から急速に拡張していったダブステップが現在までその熱狂を維持する重要なファクターになったことは疑いもない事実だ。そして最初のブレイク・ポイントは、あのジェイムズ・ブレイクをヘムロックから世に解き放ったことだろう。

【参考音源】ジェイムズ・ブレイクの2009年のシングル“Air & Lack Thereof”

 

 「何て言うか、俺たちが彼を発見して、結果的に最初の楽曲“Air & Lack Thereof”をリリースしたってことなんだけど、“Stop What You're Doing”のリミックスを俺らに言わずにやって、それが素晴らしくてそれもリリースしたんだ。それから“Limit To Your Love”で一気にブレイクしたわけだけど、その頃もすごくミニマルでヒネリの効いたトラックを送ってくれてたよ。“Pan”とか“Order”ね。これからも何か一緒にできたらって思ってるよ」。 

 こうして順調にキャリアを積み重ねてきたアントールドは、待望されてきた初のオリジナル・アルバム『Black Light Spiral』を今回ついに完成させた。

UNTOLD Black Light Spiral Hemlock/BEAT(2014)

 「一気にたくさんのトラックを作ったんだ。すべて同じ雰囲気を纏っていて、同じルールで似たようなテクニックを使ったものをね。だからそれらの曲からアルバムを完成させるのは、俺にとって当然のことだったんだ」。

 今回の作品はこれまで積み上げてきたスタイルを下地に、邪悪に渦巻く電子音とざらついたビートでバッドトリップした錯覚に陥る(まるで映画「エンター・ザ・ヴォイド」でも観てる気分)“Drop It On The One”や、凄まじい威圧感でジリジリと迫りくるキックと不気味な声ネタが強烈なインパクトを残す“Strange Dreams”といった曲にあきらかなように、照準をインダストリアルやエクスペリメンタルな方向へと定め、新しいアプローチに踏み出している。

 「特定のトーンや歪み、デジタル・サウンドで、粗くもあり、柔らかなものを背景に置くことに関心があるんだ。そうすることで、あるフレーズに対してだけ部分的に音をシャープにしたりして、深みを生み出し、その方法でいろいろと遊ぶことができるんだよ」。

 近年、アンダーグラウンドな世界を中心に支持されてきたエッセンスを吸収し、ダブステップ・サイドから咀嚼してアウトプットした本作は、全8曲、40分に満たないコンパクトなアルバムだが、2014年にリリースされた星の数ほどある音楽のなかで、もっとも記憶に残る作品のひとつとなりそうだ。

 

 

▼アントールドの関連作を一部紹介

左から、ヘムロック音源のミックスCD『Hemlock Recordings Chapter One』(Hemlock)、“Flexible”を収録した2012年のコンピ『Brainmaths Vol.1』(Brainmath)、“That Horn Track”を収録した2014年のコンピ『Bleep:10』(Warp)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

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