タナカヒロキ(ギター)のバイク事故を受けて約1年の活動休止を余儀なくされるも、今年に入って再始動。4月にレーベルをA-Sketchに移籍して、バンド表記を大文字に変え、シングル“RAINBOW”で完全復活を果たしたLEGO BIG MORL。通算4枚目となるフル・アルバム『NEW WORLD』は、“RAINBOW”で提示したニュー・フォームをよりアップデートした楽曲が並び、文字通り新しいバンドの世界観を確立した、手応え十分の作品である。
そもそも“RAINBOW”という楽曲は、バンドでのリハーサルが行えないなか、ヤマモトシンタロウ(ベース)を中心にプロトゥールスを用いたループ主体の曲作りにチャレンジした結果生まれた、LEGO流のダンス・ミュージックであった。そして本作では、シーケンスなども大胆に採り入れることで、プロダクションのさらなる強化が図られている。いまの日本のロック・シーンにおいて、バンドがダンス・ミュージックに接近するとサカナクションとの比較は避けられないところがあると思うが、LEGO BIG MORLはあくまでロックがベースであり、テクノやハウスの熱心なリスナーというわけではない。デビュー当時はthe band apartのフォロワー的な立ち位置だったり、ギターの単音フレーズがストロークスを連想させるなど、世代から考えても、彼らの直接的なルーツとなるのは洋邦問わず90年代後半から2000年代前半のバンドたちで、エレクトロニック・ミュージックの消化にしても、その頃のバンドがモチーフのはずだ。
例えば、“絶望は希望より美しい”のグルーヴィーなベース・リフはカサビアンのようであり、ミニマルなサウンドが特徴の“スイッチ”で聴くことのできるツイン・ギターの絡みは、ラプチャーあたりを連想させる。音像は全体的にリヴァーブがかかっていて、ディレイやフィルターも多用されているためにかなりトランシーだし、アサカワヒロのドラムにしても、ミュートの効いたダンス・ミュージック仕様になっているものの、あくまで生の演奏を活かし、バンド感が失われていないところに彼らのこだわりが感じられる。そして、そんなトラックの上で、カナタタケヒロ(ヴォーカル/ギター)がキャッチーなメロディーを伸びやかなヴォーカルで歌い上げることによって、大衆性と革新性を併せ持った彼らの楽曲が完成するのだ。
曲ごとに見ると、ベース・ミュージックにも通じる“夢中夢の羊”や、ソフトな歌唱と跳ねたリズム、“RAINBOW”同様にディレイのかかったギターを軸とすることで淡いサイケデリアを浮かび上がらせる“Rise and Set”などが印象的。また、ミニマルなファンクから徐々にメロウなギター・ロックに展開していく“Spark in the end”からのラスト3曲はスケールの大きな曲が並び、“LAIKA”でのスペイシーなサウンドスケープからエンディングの昂揚感溢れる“a day in the live”へと至る流れは、ACIDMANにも通じる壮大なもの。光と闇、朝と夜、始まりと終わりを繰り返し描き出しながら、最後に〈僕は生きていく〉と自分自身に立ち返ったとき、あなたの眼前にもまったく新しい世界が広がっているだろう。
▼LEGO BIG MORLの作品
左から、2009年作『Quartette Parade』、2010年作『Mother ship』、2011年作『Re:Union』(すべてORS-LLP)、2014年のシングル“RAINBOW”(A-Sketch)
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