ハロプロは良い悪いとか好き嫌いとかいう問題じゃない
――Berryz工房は何がきっかけだったんですか?
「彼女たちは〈ハロー!プロジェクト・キッズ・オーディション〉で入った(ハロー!プロジェクト・)キッズで、最初は映画『仔犬ダンの物語』や『ミニモニ。じゃムービーお菓子な大冒険!』に出演したりしていたんだよね。その当時はハロプロの名が付くものはすべて観に行ったり買ったりしてたから、また新しい仲間がハロー!に入ってきたんだなと、その映画も初日に浅草東映まで観に行った。そこで『仔犬ダンの物語』にえらく感動してしまって。良く出来てる映画だなって思ったし、出演している子たちも可愛いし。最初は清水佐紀ちゃんを好きになったんだけど、嗣永桃子ちゃんに推し変したりして。それからBerryz工房が結成されることになって、好きな子たちがメンバーだったから応援しようと思ったんだよね。そして上野にあるハロプロ・ショップ※で熊井友理奈ちゃんに出会うわけですよ。生写真をよく買いに行ってたんだけど、この子可愛いなと思ったらBerryzの熊井ちゃんで、その写真を買った。それでいろいろ熊井ちゃんのことを調べていくうちに、どんどん好きになってまた推し変したんだよね。それから熊井ちゃんの生写真を集めはじめるんですけど」
※ハロプロのオフィシャル・ショップ〈Hello!〉。言及されている東京・上野店は、現在秋葉原店と統合されている。
――相当な枚数をお持ちなんでしょうね。
「これも『タモリ倶楽部』で言ったんだけど、ホント(たくさん)買ってたね。持ってないものは全部欲しい!みたいな。だけど熱中して生写真を集めていたのは1年間だけなんだよ。1年間に1500枚ぐらい買った」
――ちなみに、それは1枚いくらなんですか?
「定価は150円。だけど古いものになると何万もする写真がある。熊井ちゃんが写ってたら全部欲しかったから、〈見切れ〉のやつまで。僕の集めていた見切れ写真は『タモリ倶楽部』で一部紹介したんだけど、まだ結構あるんだよね。そこで紹介できなかったものをSNSにアップしたら評判良くて。これが熊井ちゃん(と見切れ写真を見せる)」
――顔写ってないじゃないですか。
「これは嗣永桃子ちゃんの写真なんだけど、(見切れて写っている)熊井ちゃん目的で買ってるの。だけど、熊井ちゃんが(見切れてても)写ってる写真は全部欲しくて集めてるうちに、(全部は)集まらないことに気付いたんだよね。あまりにもいっぱい出てくるから。それで集めるのを諦めた。でも、そういうのがおもしろいんだよね。もともとコレクター気質だから、Berryzにハマって生写真を買ったりとか、そういうのがアイドルの楽しみ方のひとつだと思うから。それでもう15年ぐらい経つからね、ハロー!にハマってから。いまだに応援してるし」
――年季入ってますね~。私、全然長続きしないので(苦笑)。
「心が折れそうなことは何度かあったけど」
――それはどうして?
「つまんなくなっちゃったの、曲が。高橋愛ちゃんがモー娘。のリーダーになった頃からだんだん曲に魅力を感じなくなっちゃったんだよね。女々しい曲が多くなって、〈僕の好きな楽しいモーニング娘。は……〉っていう思いもありながら、Berryz工房もだんだん大人になってきて。それまではリリースされた作品は迷いなく買っていたのに、だんだん〈これ買うのか?〉という気持ちになってきた。前に、渋谷店でむてん娘。の“あっぱれ回転寿司!”を一度手に取って戻したこともあるもんね(笑)。試されてる感じがした。だけどそういう作品全部買いながら、ツアーがあると必ず初日や最終日、中日とか必ず何回か観に行ってたのね。それもだんだん減ってきて(ひとツアーで)1回しか観に行かなくなってきたんですよ。それが2007年~2009年末とかかな。その頃はPerfumeがおもしろかったの。Perfumeが2006年にコンプリート・ベスト(『Perfume ~Complete Best~』)がリリースされたあたりから楽しくなって、そっちに夢中になったんだよね」
――浮気ですか。
「だけどハロプロ関連の卒業コンサートには全部行ってて、モー娘。から久住小春ちゃんが卒業するっていうので、久しぶりにひとつのツアーで2回観たんだけど、卒業コンサートぐらいは観に行こうと思って、厚生年金会館へチケットを取って観に行ったんですよ。その卒コンがね、素晴らしかった! それでライヴが終わった後に新宿の〈さくら水産〉へヲタと行って、ちょっと懺悔したね。こんなにすごいライヴをやるグループになってたのかと。それを僕は斜に構えて中野(サンプラザ)だけしか観に行かなかったりしたことをすごく反省した。そこからまた熱心に観るようにしようと。ちょっと気に喰わないからって、そこでライヴを観る回数が減るとか、CD買うのを悩むとか、そういうのは良くないなと思ったの。〈全部受け入れる〉ことが大事だと。良いとか悪いとか、僕らが言う話じゃないんだと」
――音楽がつまらなくなって離れるというのは、すごくありますね。でもそこからまた戻ってくる、そのうえ離れてしまったことをめちゃめちゃ反省しているという……。
「そこで知ったんだよね、〈曲が好きじゃない〉という理由で離れるというのは。あそこで離れていたら、僕のハロプロ人生は終わってたかもしれないからね。つまり、道重さゆみちゃんの代になってオリコン連続1位というモーニング娘。の復活劇にも立ち会えなかったわけでしょ。しかも、当時あんまり好きじゃないと思っていた曲も、いま聴くと良かったりするわけよ」
――それは腹を括ったからですね。
「もうね、良い悪いとか好き嫌いとかいう問題じゃないんだよ。ハロー!プロジェクトはそんな小っちゃいもんじゃないの。僕みたいなやつが批評する対象じゃないんだって。好きになるまで努力すること、ハロプロを体験することが大事だと思う。もはや宗教だよね(笑)」
――は~……なるほど……すごい説得力です。
「つんく♂さんが曲を書くことが減っているのは心配なんだけどね」
――ホントそうですよね……。そして、それ以降は変わらずハロプロに愛を注がれていると。
「そうだね、2009年12月6日(久住の卒コンの日)以降だから2010年。おもしろかったのが、ここでもう一度真剣にモー娘。を、と思った時に9期メンバーのオーディションが始まるのよ。それがいまいる鞘師里保ちゃんや譜久村聖ちゃんとかで。久住小春ちゃんが卒業して、亀井絵里ちゃんやジュンジュン、リンリンも卒業することになって、(グループが)変わろうとしている時だったのはちょっと運が良かったなと」
――やっぱり道重さゆみさんというのは近年のモー娘。における象徴的なメンバーだったと思うんですよ。そんな彼女が卒業して、いまのモーニング娘。’15はどうなんですか?
「この前ね、道重さん卒業後初のツアーがあったの。その日本武道館公演がすごかった。道重さゆみちゃんがいた頃よりもさらに熱いエナジーを発してたね、彼女たちは。座って観る席で観てたんだけど、メドレー形式で展開していたところでは、どんどん背筋が伸びていったもんね。背筋を伸ばして観なきゃいけないぐらい、緊張感があってスゴイものを観せられたなと思う良いライヴだったし、長年モーニング娘。を引っ張ってきた道重さゆみちゃんがいなくなっても全然大丈夫だなと。9期以降しかいない、本当の意味でも新生モーニング娘。だから、それを観てすごく安心できた。近年稀に見る良いライヴだったんじゃないかな」
――そうだったんですか、良かったです! やっぱりそういったパフォーマンス力というのも年を追うごとにどんどん上がっていたりするものなんですか?
「高橋愛ちゃんの代の前後でダンスの振り付けが難しくなってるんだよね。たぶんあの頃はアジア戦略を練ってたんで、韓国や中国へ行くにはそれなりの歌やパフォーマンスが要求されるからね。そういった国でもちゃんとしたパフォーマンスを見せるという意味で、4年以上メンバー・チェンジもしなかったから」
――ほほ~、そうだったんですか。
「あくまでも僕の推測だけど。モー娘。が誕生して丸10年経った2007年頃にちょうどアジアへ進出するようになったんですよ。K-Popが日本に来るちょっと前なんだよね」
――気付けばモー娘。は〈スキル重視〉みたいな言われ方をするようになったと思うんですけど、それがその頃からなんですね。
「やっぱり高橋愛ちゃんの代以降かな。〈カワイイ〉から〈カッコイイ〉って言われるようになったよね。女性ファンはみんな〈高橋愛ちゃんカッコイイ〉って言うし。さくら学院の(磯野)莉音ちゃんも〈社長、私モーニング娘。好きなんですよ〉って話してきて――〈僕がモーニング娘。好きなこと知ってるんだ、この子は〉って思ったんだけど(笑)」
――そこですか(苦笑)。
「それはともかく、莉音ちゃんが〈高橋愛ちゃん時代のプラチナ期※がすごくカッコイイです〉って言ってたぐらいだから、すごく年齢層広く女性ウケしたんだろうなと。確かに“リゾナント ブルー”(2008年のシングル)のPVもカッコイイもんね」
※2007年~2010年頃、高橋愛がリーダーを務め、メンバー・チェンジがほとんど行われなかった時期のこと
――確かに。
「“泣いちゃうかも”もカッコイイし、ダンスの映像にすごく緊張感があるよね。フォーメーションを裏の拍子をすごく強調して踊るというのはすごく難しいだろうなって思う。そういうことを当時は気付かなかったんだけど、いまになって思えば。そこがカッコイイって女性ウケしたポイントかもしれないね。そこからいまに繋がってる感じ」