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海外勢に同世代、意外な〈ゲスト〉に縁の深い先輩まで
シャムキャッツの歩みが反映されたO-WEST
 

 

フワン・ウォーターズ(Juan Wauters)

 

――そして、〈EASY 2〉にはついに海外のミュージシャンも登場するんですよね。しかもフワン・ウォーターズだと聞いて驚きました。これはどういう経緯で?

菅原シー・ライオンズ(Sea Lions)というアメリカのバンドが来日したときに、対バンしたらメンバーと仲良くなって。SNSとかInstagramで繋がってやり取りしてたんです。それで今年新譜を出すって言ってるから、そのタイミングで〈EASY 2〉に出てもらおうと声かけたんですけど、彼らのスケジュールが合わなくて」

――あのときの対バンも〈日米夢の共演〉感がありましたもんね。彼らとシャムキャッツは重なる部分がいろいろ多かったというか、音楽性もそうだし……。

菅原「あと見た目とか(笑)。それでシー・ライオンズを招聘していた(twee grrrls clubの)sumireちゃんに相談してみたら、彼らと仲のいいミュージシャンに声かけていいよって流れになって。その候補にフワンの名前があったんですよ。〈お、マジか!〉って」

夏目「すごく聴いてたんです」

菅原「シャムキャッツ内で盛り上がってた」

――しかも、〈EASY 2〉にもピッタリですよね。よく言われるようなジョナサン・リッチマンっぽさもたまらないし、ウルグアイ出身で英語とスペイン語が入り混じる感じとかもよくて。

夏目「確実に日本語ではやれない表現だし、憧れますね。もしやったら倉内(太)くんみたいな感じになるのかな。投げ飛ばすような歌い方っていうか。センスがいいし、今年出た新作のジャケットも最高ですよね」

――しかも、タイトルが『Who Me?』でしょ。カッコよすぎる。

 

菅原「17歳でNYに引っ越して、自分の故郷が2つあるってインタヴューで話していて。たぶん居場所が見つからなくて、でも歌いたいし家族に感謝したいし、友達大好きって言いたいみたいな」

――それを聞くと、両方の言葉で歌うのも納得というか。

夏目「どっちでも歌にしたいんだよ。泣けるよね」

※フワン・ウォーターズ来日ツアー特設サイトはこちら

 

踊ってばかりの国

 

夏目踊ってばかりの国は、バンドのみんなもそうかもしれないけど、俺がただ単に好きなんです。自分が女だったら下津光史みたいなやつと付き合いたいなって」

――そんなになんだ(笑)。対バンとかは……。

夏目「全然してない。こないだ大阪でツーマン誘って。ちょいちょい顔合わすことはあるんで、顔見知りですけど」

――世代も結構近いのかな?

夏目「出てきたのはだいたい一緒ぐらいの時期。年齢は、下っちゃんのほうがちょっと下ですけど」

菅原「他のメンバーは俺たちのひとつ下くらいだよね。すごくシンパシーがある」

――それは初期の頃から?

菅原「初期の頃は、“悪魔の子供”って曲がYouTubeで一気にバーって話題になっていたのを見ていた感じですね」

夏目「最初のアルバムの頃は、僕はあんまりわかんなかったんですけどね。『世界が見たい』が出たあとライヴを観る機会があって、〈うわー、カッコいい〉って思った。下っちゃん歌上手いしね」

――同世代であるとか、同じ頃にデビューしたとか、そういう点で意識したりシンパシーを抱いたりはします?

夏目「同世代に関しては、いま残ってるバンドは続けてるってことですからね。それだけで結構タフで強い表現してるということですよね。昔よりそういう気持ちは自然と強くなってるかな。シンパシーっていうか、お互いよくやっているねっていう」

大塚「尊敬とか敬意みたいなものはありますね。同世代は必要だし。上も下もどちらにしろ」

菅原「でも、その同世代で共演するのがTHE NOVEMBERSと踊ってばかりの国か。そんな2015年は予想してなかったな(笑)」 

 

THE NOVEMBERS(photo by 佐内正史)

 

――THE NOVEMBERSはさっきも話に出てきたけど、仲良かったんですね。

夏目「そうです。(活動終了した昆虫キッズの)高橋翔を介して」

――へぇー!

夏目「なんか、小林くんも高橋翔もすごいフェミニンな人なんです。女性性が強いっていうか。僕は自分自身にはそれは感じてないんですけど、あの2人は僕に対してそういうイメージがあるらしくて。〈男の女々しさ〉みたいのが好きな人たちらしいです。それに俺もひっかけてもらってるという」

――いい話(笑)。でも夏目くんの歌の艶っぽさとかにもフェミニンを感じるし、言われてみれば共有している部分はいろいろあるんだろうなって。

夏目「あと、THE NOVEMBERSは実力者ですよね、それを〈EASY 2〉で見せつけてほしい」

――言うまでもなくシャムキャッツとは音楽性が全然違うわけだけど、彼らのサウンドについてはどうです?

夏目「カッコいいなって感じ」

――そうとしか言えないよね(笑)。

夏目「そう。カッコいいし、やっぱり変かな。特に最近は、ポップっぽくなるのを回避してるように感じられるときもあって。メロディもちょっとモリッシーみたいだし、始まってからどこに着地するのかよくわからない。それでギターの音大きいし」

――海外の音楽が好きだって公言してる感じとか、自分たちが好きなものを大事にしてる感じっていう意味でも、音楽性とかキャラクターはお互い全然違うのかもしれないけど、通じ合ってる部分もあるのかなと。

夏目「そうですね。ヴィジュアル含めたコーディネートもカッコいいし。ゴスっぽい感じなんて、俺たちには絶対出せないやつだから。まぁ、バンビは出せるかもしれないけど」

大塚「〈EASY 2〉をきっかけに仲良くなれるかな」

一同「(笑)」

夏目「小林くんとか、包み隠さずラルク(LArc-en-Ciel)が好きそうじゃないですか。俺たちは斜に構えてしまうから、真っ直ぐにカッコいい感じでやれていることへの羨ましさもありますね」

 

 

POLYSICS

 

――POLYSICSは今回のラインナップでも、一番のサプライズでした。

夏目「仙台のライヴの打ち上げで、呑み屋で〈ARABAKI ROCK FEST.〉の映像が流れてたんですけど、そのときのPOLYSICSがとにかくカッコよくて。それで急に気になりだして、周りに訊いてみたら、〈ライブすごいよ〉ってみんな言うんです」

――位置づけ的には前回のGRAPEVINEに当たるのかもしれないけど、明らかに立ち位置が違うじゃないですか。

夏目「正直、自分は絶対交わらないと思ってた人たちだから、これはおもしろいんじゃないかと思って」

大塚「でもライヴの映像を観てたとき、ロック感というか、〈EASY〉感がすごくあったよね」

夏目「あったあった」

大塚「俺らみんなが、あのとき感じてた気がする。全然聴いてこなかったけど、ライヴは想像と違っていて。〈EASY〉に出るバンドはみんなライヴ感があるから、呼べそうじゃんってそのときにすごく思った」

藤村頼正「〈EASY〉に出てくるイメージが浮かんだよね」

菅原「大物というか、ゲスト・バンドみたいなのは必要だなと思ってたから」

――それで声かけたら本当に出てくれることになった、と。

夏目「そうです」

――自分たちの想像と、モニター越しで観たライヴのギャップについて、もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?

夏目「メジャーなバンドだし、単純に言うとカッチリとしたライヴをするんじゃないかと思ってた。ピコピコも入ってるし。でも実際はだいぶパンクだった」

大塚「ポスト・パンクだね」

夏目「あんまりPOLYSICSの音源に汗を感じたことはなかったけど、ものすごい汗くさいものなんだなってそこでわかった。超汗だった、むしろ」

一同「(笑)」

藤村「僕も高3ぐらいの頃に結構好きで。ライヴも一回見たんですけど、汗だくで、めっちゃロックで、カッコいいなって思った印象があります」

 

 

トクマルシューゴ

 

夏目「トクマルさんは去年終わったときに、〈来年もやるんだったら出てくださいよ、アンタのせいでやったんだから〉みたいに言ったんですよ、わざわざ」

一同「(笑)」

夏目「今回のラインナップではちょっと年上というか、キャリアもあるし。あとは単純に、POLYSICSとトクマルシューゴが並んでるのおもしれぇなーって思って」

――意外なことに、ライヴでの共演が全然なかったんですよね。

夏目「なかったです。シャムキャッツはGellers(トクマルも所属するバンド)担当だと思ってました」

――トクマルさんやGellersの存在というのは、シャムキャッツにとっては兄貴というか、活動の初期から本当に大きかったわけですよね。

夏目「こういうインディーの現場で、どうやって自分たちの名前を売っていくのかアドヴァイスをちゃんとくれたのはトクマルさんだけなんですよ。トクマルさんはバンドのやり方、組織の動かし方を教えてくれた先輩なんです。超単純なことからですよ。〈人が集まるところに足を運べ〉〈フライヤーをとにかく置け〉とか」

――そうだったんだ。

夏目「ま、困ってたときに助けてくれたってことです。〈考えてやれよ〉ってことですよね。〈これ、おもしろくね?〉だけじゃダメだぞっていう」

――そういう意味では、この〈EASY〉が実現するきっかけを与えた人でもあり、バンドの考え方や思想にも影響を与えてくれた人でもあり、もっと前からもずっと……。

夏目「僕らのファースト(2009年作『はしけ』)のプロデューサーも、ほぼトクマルさんみたいなもんなんです。なぜか、ずっとスタジオにいたから。だからやっと、いろいろ良い感じになってきた。一緒にやれて嬉しいなって。でもこれで一緒にやっちゃうから、〈TONOFON FESTIVAL〉(トクマルの主催フェス)にはあと3年は出れないかな」

一同「(笑)」

大塚「逆に出れるパターンかも(笑)」

 

 

シャムキャッツ

 

――そして大トリは、もちろんシャムキャッツ。

夏目「出ないって手はないですもんね。究極を言うと、自分たちが出ない状態でフェスだけ、このイヴェント・タイトルだけで動いていったら最終的にはいいなって思ってます。それこそ毎回主催は違う人で、〈EASY〉という催し物が一人歩きしていってくれたら」

――ほう。

夏目「だから50年後とかに歴史を紐解いていくと、〈あぁ!〉って」

――〈あれシャムキャッツが始めたんだ!〉って。

夏目「そそそそ」

――30年後はSaToAがやってるとか。

一同「(笑)」

――(今年3月に発表されたEP)『TAKE CARE』のツアー・ファイナルだった4月のワンマンは個人的にも感動したんですよ。あの日はフロアもパンパンだったし、演奏も堂々としていて。すごいバンドになったんだなーって感慨深かった。

――だから昔と比べて、ライヴへの自信も相当あるんじゃないですか。

藤村「どんどんなくなってきますね」

菅原「うそー(笑)」

夏目「でも藤村が一番上手くなってない?」

藤村「たぶん常に成長してはいるんだけど、どんどんヤだなって思ってる」

――プレッシャーを感じてるということ?

夏目「その話、詳しく聞きたい」

藤村「前よりやれるようになったから、もっとやらなきゃって。俺は個人的に〈EASY〉は踊ってばかりの国の佐藤(謙介)くんとTHE NOVEMBERSの吉木(諒祐)くんをちょっと意識していて。彼らは同世代でドラマーとして地位を築いているし、ミドルテンポのロック・ドラムを叩くのも共通している。だから自分も頑張ろうかなって。結構そういうのが楽しみです」

――お、ライヴァル視点。

藤村「佐藤くんとか、前に踊ってばかりの国と大阪でツーマンしたときに、久しぶりにプレイを観たらメチャクチャうまくなってて」

菅原「なんかドラマーってそういうのが、羨ましい」

――こういうのってドラマー独特の傾向なんですかね。ベーシストのライヴァルとかいます?

大塚「ベースはお互いシャイだから、そういう話は絶対にしない」

一同「(笑)」

――今回の出演陣で気になるベーシストはいますか。

大塚「いないけど」

一同「(笑)」

大塚「ベースはバンドの底の部分というか、ベース=バンドみたいなものだから」

――たしかに。

大塚「だから、それぞれのバンドが違うくらい、それぞれのベースが違う。全然価値観とかも違う。そういうの楽しいでしょ。特に俺は全然知らないバンドばっかりなんで。ネバヤンも踊ってばかりの国も、この前初めてちゃんとライヴを観たし。さっきのPOLYSICSのライヴを映像で観たたときにギャップを感じた話と同じで、どのバンドや出演者も、シャムキャッツもそうだと思うけど、ちゃんとライヴで観て感じるっていうのが音楽じゃないですかね」

夏目「真面目だ」

 

――こうして出演者について一通り話してもらったら、〈EASY 2〉がますます楽しみになってきましたよ。

藤村「来てみたら想像を超えた楽しさがあるイヴェントになると思います。前回は特に、僕自身もすごく感動したし。今回も正直、ライヴを観たことない人たちがいっぱいいるので、当日にいろんなことを思えるんだろうなって、そういう自分たちも思ってもみないことが起こる予感がします」

夏目「希望としては、東京のお客さんって割と静かにライヴを観ることが多いけど、すごくいいイヴェントだし、良いメンツが集まっているから騒いでほしいですね。そうじゃないと面白くないと思うんで。〈ライヴをおもしろくするためには、君にだって実は責任があるんだよ〉って本当は言っちゃいけない立場ですけど、〈バンドやってない俺〉がそういうことを言いたくなるときもあります」

菅原「まさしく、去年の〈EASY〉はお客さんが騒いでたよね。それで嬉しくなっちゃって、自分も盛り上がってた」

夏目「俺たち主催だし、そういう雰囲気作りへの気持ちは強いです。みんなが騒げるような環境づくりじゃないけど」

――そういう意味でも、最初の話に戻るけどお客さんにもどんどん参加してほしいって。

夏目「そうそう。ま、プレッシャーに感じることは全然なくて、それぞれが楽しんでくれれば」

――各々が〈EASY〉に。

夏目「うん、〈EASY〉に楽しんでくれよって」

――そして最後に、シャムキャッツは早くも新作を作っているところなんですよね?

夏目「まだ全然形にはなってないですけど」

――このあいだ、夏目くんからコーネリアスの『FANTASMA』とかレディオヘッドの『OK Computer』あたりを意識してると聞いて。

夏目「そうですね、97年の感じ。でもまだ未知数です」

大塚「割とじっくり作りたいよね」

菅原「よくわかんないのって久しぶりだと思って。楽しいですね。今までは結構わかってるものを作ってたけど、いまは全然わかんない。〈EASY 2〉でも1~2曲できたらいいな」

――新曲もやるかもしれないなんて、最高じゃないですか。

夏目「いやー、がんばろう!」

 


 

〈シャムキャッツ presents「EASY 2」〉
日時/会場:2015年10月10日(土)
SHIBUYA TSUTAYA O-WEST & O-nest(2会場同時開催)
開場/開演:12:00/13:00
出演:シャムキャッツ、THE NOVEMBERS、踊ってばかりの国、DYGL、トクマルシューゴ、never young beach、フワン・ウォーターズ、POLYSICS、D.A.N.、SaToA、may.e
料金:前売り4,800円/学割チケット2,500円(いずれも税込/D別)
・ローソン(Lコード:71182)
・チケットぴあ(Pコード:271-502)
・イープラス
※学割チケットについて
・O-nest店頭のみで取り扱い
・高校生以下対象
・購入時・入場時ともに身分証明書の提示が必要
http://siamesecats.jp/easy2/