

タワーレコード・スタッフの〈耳〉と〈直観〉を結集させ、まだ世間で話題になる前のアーティストをいち早くピックアップする独自企画〈タワレコメン〉。Mikikiでは、全国のバイヤーが候補作をプレゼンし合う〈タワレコメン〉会議の模様を毎月掲載していますが、これより同企画をさらに盛り上げるべく、〈タワレコメン〉に選出された作品からMikikiが注目したアーティストをフィーチャーする〈タワレコメンに迫りコメン〉をスタートします!
第1回は、11月度の〈タワレコメン〉に選ばれたシンガー・ソングライター/マルチ・プレイヤーであるTHE CHARM PARKの初ミニ・アルバム『A LETTER』をピックアップし、彼にインタヴューを行いました。流麗なメロディー・ラインと美しい鍵盤の音色が耳に残る、ウェルメイドなポップソングを全6曲収録。穏やかで優しい歌声が心を潤わせてくれます。落ち着いた曲調のなかに激しいセンチメンタリティーを秘めているところには、ヴェルヴェット・ティーンやキーンあたりと近しいエモさを感じたりも。では、レッツ迫りコメン! *Mikiki編集部
THE CHARM PARKの『A LETTER』には、耳にした者の気持ちを直ちに惹きつけ、スーッと心に染み渡っていくような特別な魅力がある。この世の中に情緒的な音楽は山ほど溢れているが、この『A LETTER』からは単なるテクニック的なところからだけでは生み出せない透明感が伝わってくるのだ。作り手自身が本物の感情を音楽に込めたからこそ、美しいメロディーやハーモニーがいっそう味わい深い輝きを伴っているのだと思う。果たして、本作の背景にはどのような気持ちがあったのか、以下のインタヴューで本人の口から語ってもらおう。
――『A LETTER』では、作詞・作曲・歌だけでなく演奏もすべて自分1人で行なっていますね。
「そうですね。でも今回は、たまたま1人でがんばったという感じで、将来的にはどうなるかわからないです。THE CHARM PARKというアーティスト名にした理由のひとつは、今後の可能性を表したいということから〈THE〉を付けてバンドっぽい名前にしたんですよ」
――ホーム・レコーディングということで、作曲やアレンジと録音が同時に進行した感じになったのでしょうか。
「はい、同時です。全部作曲してからレコーディング、というよりも、どんどん録音しながら〈あ、この音良いじゃん〉って足していって、もっと良くなったり。でも、すっごい昔に書いた曲も2曲入っています。“Beautiful World”と“It’s not the same”は5~6年前に書いた曲ですね。もちろん今回、リリースするにあたってアレンジし直したり、リレコーディングしたりしています。それ以外の曲はみんな去年か今年に書いた曲です。宅録で良いことの1つは、やっぱりすぐ作ってすぐ完成させられるということ。1人で判断できるし、他の人に楽器を頼む時間もかからないから、そこはフットワークが軽いというか。1曲目の“A LETTER”なんかは発売の2か月前にゼロから書きはじめた曲です」
――まさに出来たてのほやほやですね。じゃあ、この曲はアルバムの全体がだいぶ見えてきたところで、トップに置くことをイメージして書いたような感じですか?
「まさにそうです。この世の中に出る1曲目じゃないですか。なので、やっぱりそれっぽい曲を作りたいなということを意識して書きました。アルバム名も『A LETTER』なんですが、歌詞的にも〈こう作りたい〉というテーマがあったうえで作りましたね」
――“A LETTER”の歌詞の日本語になっている部分は、他の曲からちょっとずつ引用していますね。
「あ、気付いていただけました? ちゃんと聴いていただいて、ありがとうございます(笑)」
――ハハハ(笑)。それもあるし、最後の曲に〈P.S.〉が付く終わり方も含めて、ミニ・アルバムとはいえトータルな構成を非常によく考えて組んである印象を持ったのですが。
「はい、そこはとても意識してますね。そうじゃないとアルバムの意味はないなと思ってます。いまはもう配信のほうが強くなってきて、曲単位で買ってる人も多いし、ラジオでかかるのはリード曲だけ、みたいな時代になってきていますけど、自分は〈アルバムってステキだったな〉という想いがあります。ちなみにいま、自分のなかではLPレコードがすごいきてて。その良さの1つは曲を飛ばせないというところ……まあ飛ばそうと思えば飛ばせるんですけど(笑)」
――普通は飛ばさないですよね。しかも途中でひっくり返して。
「ひっくり返すのも面倒臭いけど楽しいというか(笑)。レコードの時代のアルバムは、全体の流れをすごく考えて作ったんだろうなってところがとっても良いと思うんですよ。いまのアルバムはそうじゃないものが多い気がして……リード曲だけガーッとフックがあって、残りはまあまあ……みたいな場合も多いですよね。それは絶対イヤだなと思って、曲と曲の間にもいろいろインタールードを入れました。実はそれはCDだけで、配信のほうには入ってないんですよ。そういうところも楽しんでほしいと思ってます」
――そうした全体のイメージに合わせて曲を用意したのか、それとも先に曲があって全体のコンセプトが浮かんできたのか、どちらなのでしょう?
「短く答えると、どちらかと言えば後者ですね。タワーレコードさんと一緒にやることになった時、最初に気に入ってもらえたのが2曲目の“Holding Hands”――いまYouTubeにMVが上がってるやつですが、そういう雰囲気のミニ・アルバムを作りたいという話になったんです。それで僕も〈なるほど、じゃあ曲をどうしようか〉と考えた時、新しい曲も書きましたけど、〈昔の曲でも合うものがあるかも〉とラフなデモとかを聴き直してみたら、歌詞的にも合ってるし、新しくアレンジしたら良さそうなものがあってリアレンジしました。“It’s not the same”は、以前に作っておいたデモとはだいぶ変わってます」
――元はどんな感じだったんですか?
「もうちょっとロック色が強かったですね。でも、テンポとかメロディー、歌詞はそんなに差はないかな」
――じゃあ、本作で聴けるサウンドは、レーベルの希望に応えようという気持ちもあるんでしょうか?
「僕は本当にいろんなジャンルの音楽が好きなので、EDMの要素が入ってるような曲とかも作っていたし、いまでも好きです。でも、最初に人に聴かせるのにヴァラエティーがありすぎると器用貧乏な感じになるし、それは良くないなと。そこはタワーさんから言われたのもありますが、自分でもそうだと思っていたので、お互いに納得できた」

大事なことは自由であること。挑戦でもあるけれど〈音楽でそれをやらなかったらどうするんだ〉と思ってます
――なるほど。そうやって完成した作品には、過去に郷愁を覚えつつも、そこに区切りを付けて前に進んでいこうというような気持ちが表れていると思ったのですが、いかがでしょう?
「それは絶対に入っていますね。わかりやすいところでは、“A LETTER”という曲は何についてかと言うと、小学校の頃に〈将来の自分へ手紙を書こう〉という宿題があったんです。それで将来の自分がどうなっていてほしいか希望を書いた記憶はあるんですけど、いまは内容をよく覚えてなくて……その手紙自体も家に残ってないし、どこにあるかわからない、つまりそれはいまの僕には届いてない。それはちょっと悲しいし、過去に対して何かを失った気がする。“A LETTER”は〈幼い頃の純粋さもなくなってきているのかな?〉ということをメイン・テーマにしてます。他の曲の歌詞も、それに寄った内容が多い気がしますね。まさに過去を振り返りながら、いまはこう変わったけども、このまま進んでいく、そういうテーマですね」
――では、〈手紙〉というのは過去の自分との間の手紙だったんですね。
「そうです。そして、最後の曲である“It's not the same”の終わりには、手紙みたいに〈P.S.〉が付いていて、こちらは幼い頃の自分に向けたものになっています」
――なるほど。今回そういうテーマが浮かんできた理由は?
「年齢ですかね、やっぱり。僕は今年28歳で若いといえば若いですけど、ちょっと歳を取ったというか、なんか変な、微妙な時期にいるような気がしていて。30代に向かううえで〈いままで何をしていた?〉ってことを自分に尋ねることもある。そういうところから出てきたテーマです。たぶん誰でも1回くらいはそんな感情を持つだろうし、共感してもらえるんじゃないかと思います」
――“Beautiful World”や“Dear Sunshine”といった曲名には、そこで肯定的な気持ちに辿り着いている心境が表れているように感じました。
「そうですね。“A LETTER”の歌詞の日本語のところが僕の本音というか、いろんなことがありますけど、それでも世界は美しいし、もともと自分が持っていた夢がないと生きる意味もない、〈君がそばにいないと“It’s not the same”〉という部分も含めて、そういう感じです」
――ちなみに、歌詞はあえて英語メインにしたのでしょうか?
「僕はアメリカで育って、向こうでの暮らしのほうが長いんです。今作のテーマをすべて日本語で書こうとしたら結構べたっとなると思ったので、ちょっとさりげないくらいのニュアンスで、ゴリ押ししていない感じにしたかったんですね。単純に音楽だけを聴いて、何かを感じ取ってもらえたら嬉しいし。一応こういう取材の場があれば、喜んでテーマについて話しますけど、それが絶対ということではないんです」
――わかりました。自宅でコンピューターに向かって制作したこともあってか、鍵盤がメインのサウンドになっているように感じたのですが、具体的な作曲の進め方について教えてもらえますか。
「4つのやり方があります。僕はもともとギターから入った人なので、ギターでリフやらコードやら何か良いのが浮かんだらそこにメロディーを乗せるという形がまず1つ。それから、ピアノで作る形が2つ目。ピアノは昔ちょっと独学で弾いてただけなんですけど、ギターではできないようなものが出てきたりするので、おもしろい世界だなと思ってがんばってます。3つ目はいちばん〈いま〉っぽいかもしれませんけど、パソコンでレコーディングしながら曲を作るやり方。ちょっとでも良いものがあれば、歌でも楽器でもなんでもいっぱい入れて、形になってきたら今度はそこから少しずつ減らしていく、そういう形もあったりしますね。そして最後の4つ目は、歌詞というか言葉から。なにか響いてくる言葉を携帯にメモっておいて、あとで〈これどうしようかな〉って振り返るところから始まる曲作りもあります」
――1人で全部作ったということもあって、なんでもありという感じですか?
「なんでもありですね。MVも”Holding Hands”と“Dear Sunshine”は、自分で撮影して編集して作りました。それも昔だったらちょっと考えられなかったですね、自分はこういうこともできるんだって。今年になってから映像もおもしろくなってきて、そういうところも含めて、なんでもできる可能性を自分のなかに感じてますし、それを皆さんにも伝えることができたら良いなと思ってます」
――最初に音楽に夢中になった時の話を聞かせていただけますか?
「僕はLAで育ったんですけど、LAには結構なんでもあるというか、そんななかで小学校の時に初めて聴いて衝撃を受けたのがX JAPANだったんです。当時のアメリカ、僕の周りではスパイス・ガールズがめちゃくちゃ流行ってたんですけど、僕は〈メインストリームの音楽は聴かない、あんたたちとは違う音楽を聴く〉という、学校に1人はいるタイプで(笑)。それで日本の音楽を聴きはじめました。X JAPANはギターがカッコイイと思ったので、自分でもギターを始めて。速弾きのソロとかにハマって、そういうギターをコピーするのが学生の頃の趣味でしたね。そのうち、ちょっとずつ自分で曲も書くようになって、ジャズとかファンクとか、もっといろんな音楽を聴くようになってここまできたという」
――そういった過去から、この『A LETTER』で聴けるような音楽性には、どのようにして辿り着いたのでしょう?
「こういう音楽も実際、自分のなかにずっとあったんだと思います。それがルーツではないにせよ、昔から聴いていましたね。ロックのギターとは別の世界だと思っていただけで。いまそれがこうして出てきた理由は……まずは年齢ですかね。こういう音楽が良いと思うようになって、少しゆっくりしたいという気持ちもあるし……そんなに歳取ってるわけじゃないですけど(笑)。あとは周りの音楽に、こういうものがないということ。こっちのほうが、もうちょっと良い答えですね。いまのチャートを見ていると、BPMの速い曲ばっかりなのが納得できない。もうちょっとヴァリエーションがあって良いんじゃないかと思ってます。僕が一目惚れした時の日本の音楽にはものすごくヴァラエティーがあった。良い意味で訳のわからない曲というか、この人がなぜ1位なのかわからないというものが1位になっていたりして、日本はリスナーもすごいなと思った。ASIAN KUNG-FU GENERATIONが大好きなんですけど、〈これがあそこまで受け入れられるんだ!〉ということが衝撃でした」
――じゃあ、以前の日本の音楽シーンにあったおもしろさがいまは失われてきていると感じているのですね?
「何かが変化しましたよね。日本に住みはじめてからは、日本の音楽業界を客観的に見られなくなってきたということもあるかもしれないけれど、確実に何か違うような気がします。それはオリコンの年間チャートを見てもわかると思いますし」
――では『A LETTER』は、そうした状況に対するカウンターとまでは言わないにせよ、少し感じていることがあって作ったものだということなんですね。
「〈こういう音楽もありますよ〉ということは言いたいですね。でも、リスナーはちゃんと求めているのに、どちらかというと業界が自分の首を絞めている感じがします。メジャーのアーティストへの曲提供や録音にギターで参加する機会もあるんですけど、どの会社も求めてくる音がみんな同じだったりするんですよ。そのことに気付いた時〈それはあまり良くないな〉と。そういうことも経験したから、『A LETTER』のサウンドに出た部分も何かあると思います。まあ、これが出たところで世の中に変化が起きるかはわからないですけど。〈僕はがんばっているよ〉ということは伝えたい」
――なるほど。
「いまの世の中、音楽だけでなんとかしようとしてる人が少ないような気がしますね。音楽以外にも話題を作らないと売れないという決めつけがあるような……タイアップとか、ヴィジュアル的な何かとか……それでは音楽が可哀そうだと感じています。逆にせっかく良い曲でも、イメージ的な要素が嫌で素直に聴けないということもあるんじゃないかな。だから、そうじゃないところから出したいという想いは強くありました。それがいまのレーベルから出した理由でもありますね。まさに自由度と、音楽を大切にしている感じ。それならやりたいという気持ちになりました。自由、大事ですよね。危険なこともありますけど、そこは挑戦というか、〈音楽でそれをやらなかったらどうするんだ〉って思います」
<TOWER RECORDS レーベル presents>
THE CHARM PARK & Ryu Matsuyama リリース記念インストアライブ
●タワーレコード難波店
イベント内容:ミニライブ&サイン会
開催日時:2015年12月13日(日)13:00~
場所:タワーレコード難波店 5Fイヴェントスペース
出演: THE CHARM PARK / Ryu Matsuyama
参加方法:観覧フリー
●タワーレコード新宿店
ミニライブ&サイン会
開催日時 :2015年12月30日(水)16:00~
場所:タワーレコード新宿店 7F店内イヴェントスペース
出演: THE CHARM PARK / Ryu Matsuyama
参加方法:観覧フリー
