タワーレコード・スタッフの〈耳〉と〈直観〉を結集させ、まだ世間で話題になる前のアーティストをいち早くピックアップする独自企画〈タワレコメン〉。Mikikiでは、全国のバイヤーが候補作をプレゼンし合う〈タワレコメン〉会議の模様を毎月掲載していますが、これより同企画をさらに盛り上げるべく、〈タワレコメン〉に選出された作品からMikikiが注目したアーティストをフィーチャーする〈タワレコメンに迫りコメン〉をスタートします!

第1回は、11月度の〈タワレコメン〉に選ばれたシンガー・ソングライター/マルチ・プレイヤーであるTHE CHARM PARKの初ミニ・アルバム『A LETTER』をピックアップし、彼にインタヴューを行いました。流麗なメロディー・ラインと美しい鍵盤の音色が耳に残る、ウェルメイドなポップソングを全6曲収録。穏やかで優しい歌声が心を潤わせてくれます。落ち着いた曲調のなかに激しいセンチメンタリティーを秘めているところには、ヴェルヴェット・ティーンキーンあたりと近しいエモさを感じたりも。では、レッツ迫りコメン! *Mikiki編集部

 

THE CHARM PARK A LETTER TOWER RECORDS(2015)

 

 THE CHARM PARKの『A LETTER』には、耳にした者の気持ちを直ちに惹きつけ、スーッと心に染み渡っていくような特別な魅力がある。この世の中に情緒的な音楽は山ほど溢れているが、この『A LETTER』からは単なるテクニック的なところからだけでは生み出せない透明感が伝わってくるのだ。作り手自身が本物の感情を音楽に込めたからこそ、美しいメロディーやハーモニーがいっそう味わい深い輝きを伴っているのだと思う。果たして、本作の背景にはどのような気持ちがあったのか、以下のインタヴューで本人の口から語ってもらおう。 

『A LETTER』のダイジェスト

 

――『A LETTER』では、作詞・作曲・歌だけでなく演奏もすべて自分1人で行なっていますね。

「そうですね。でも今回は、たまたま1人でがんばったという感じで、将来的にはどうなるかわからないです。THE CHARM PARKというアーティスト名にした理由のひとつは、今後の可能性を表したいということから〈THE〉を付けてバンドっぽい名前にしたんですよ」

――ホーム・レコーディングということで、作曲やアレンジと録音が同時に進行した感じになったのでしょうか。

「はい、同時です。全部作曲してからレコーディング、というよりも、どんどん録音しながら〈あ、この音良いじゃん〉って足していって、もっと良くなったり。でも、すっごい昔に書いた曲も2曲入っています。“Beautiful World”と“It’s not the same”は5~6年前に書いた曲ですね。もちろん今回、リリースするにあたってアレンジし直したり、リレコーディングしたりしています。それ以外の曲はみんな去年か今年に書いた曲です。宅録で良いことの1つは、やっぱりすぐ作ってすぐ完成させられるということ。1人で判断できるし、他の人に楽器を頼む時間もかからないから、そこはフットワークが軽いというか。1曲目の“A LETTER”なんかは発売の2か月前にゼロから書きはじめた曲です」

――まさに出来たてのほやほやですね。じゃあ、この曲はアルバムの全体がだいぶ見えてきたところで、トップに置くことをイメージして書いたような感じですか?

「まさにそうです。この世の中に出る1曲目じゃないですか。なので、やっぱりそれっぽい曲を作りたいなということを意識して書きました。アルバム名も『A LETTER』なんですが、歌詞的にも〈こう作りたい〉というテーマがあったうえで作りましたね」

――“A LETTER”の歌詞の日本語になっている部分は、他の曲からちょっとずつ引用していますね。

「あ、気付いていただけました? ちゃんと聴いていただいて、ありがとうございます(笑)」

――ハハハ(笑)。それもあるし、最後の曲に〈P.S.〉が付く終わり方も含めて、ミニ・アルバムとはいえトータルな構成を非常によく考えて組んである印象を持ったのですが。

「はい、そこはとても意識してますね。そうじゃないとアルバムの意味はないなと思ってます。いまはもう配信のほうが強くなってきて、曲単位で買ってる人も多いし、ラジオでかかるのはリード曲だけ、みたいな時代になってきていますけど、自分は〈アルバムってステキだったな〉という想いがあります。ちなみにいま、自分のなかではLPレコードがすごいきてて。その良さの1つは曲を飛ばせないというところ……まあ飛ばそうと思えば飛ばせるんですけど(笑)」

――普通は飛ばさないですよね。しかも途中でひっくり返して。

「ひっくり返すのも面倒臭いけど楽しいというか(笑)。レコードの時代のアルバムは、全体の流れをすごく考えて作ったんだろうなってところがとっても良いと思うんですよ。いまのアルバムはそうじゃないものが多い気がして……リード曲だけガーッとフックがあって、残りはまあまあ……みたいな場合も多いですよね。それは絶対イヤだなと思って、曲と曲の間にもいろいろインタールードを入れました。実はそれはCDだけで、配信のほうには入ってないんですよ。そういうところも楽しんでほしいと思ってます」

――そうした全体のイメージに合わせて曲を用意したのか、それとも先に曲があって全体のコンセプトが浮かんできたのか、どちらなのでしょう?

「短く答えると、どちらかと言えば後者ですね。タワーレコードさんと一緒にやることになった時、最初に気に入ってもらえたのが2曲目の“Holding Hands”――いまYouTubeにMVが上がってるやつですが、そういう雰囲気のミニ・アルバムを作りたいという話になったんです。それで僕も〈なるほど、じゃあ曲をどうしようか〉と考えた時、新しい曲も書きましたけど、〈昔の曲でも合うものがあるかも〉とラフなデモとかを聴き直してみたら、歌詞的にも合ってるし、新しくアレンジしたら良さそうなものがあってリアレンジしました。“It’s not the same”は、以前に作っておいたデモとはだいぶ変わってます」

『A LETTER』収録曲“Holding Hands”

 

――元はどんな感じだったんですか?

「もうちょっとロック色が強かったですね。でも、テンポとかメロディー、歌詞はそんなに差はないかな」

――じゃあ、本作で聴けるサウンドは、レーベルの希望に応えようという気持ちもあるんでしょうか?

「僕は本当にいろんなジャンルの音楽が好きなので、EDMの要素が入ってるような曲とかも作っていたし、いまでも好きです。でも、最初に人に聴かせるのにヴァラエティーがありすぎると器用貧乏な感じになるし、それは良くないなと。そこはタワーさんから言われたのもありますが、自分でもそうだと思っていたので、お互いに納得できた」