We Love David
[ 特集 ]デヴィッド・フォスターの世界
この男の足取りに触れてみることは、ポップ音楽史を知ることでもある。もはや説明不要のヒットマン……なれど、必要ならばここで説明しよう!

 


 

We Love Disney
デヴィッド・フォスターのプロデュースするディズニー・ソングブック! みんな大好きな永遠の名曲を、こんなに豪華な顔ぶれがお届けするよ

VARIOUS ARTISTS We Love Disney Verve/ユニバーサル(2015)

 「ディズニーはみんなを子供に戻すんだ。たとえ3歳であろうと、103歳であろうと、〈ディズニー〉と聞けば、心がキラキラ輝くよね。お気に入りのディズニー・ソングがない人なんて地球上のどこを探しても存在しないさ」。

 そうコメントするのは、現在ヴァーヴの会長職に就くデヴィッド・フォスター。そして、このスーパー・プロデューサーをして「これまでやってきた本当にたくさんの仕事の中でも、もっともやりがいのあるプロジェクトのひとつ」と言わしめた作品こそ、カリフォルニアのディズニーランド開業60周年を記念して今回リリースされた『We Love Disney』であります。彼の言葉通り、長い年月をかけて愛されてきたディズニー曲たちは、膨大なカヴァーやトリビュート作品を生み出してきました。日本ではパンクやハウス、V系、ジャズ、EDMなどさまざまなフィールドの豪華なメンツが集った企画盤でお馴染みでしょうし、ブライアン・ウィルソン『In The Key Of Disney』(2011年)やMay J.の新作『May J. Sings Disney』のように単独アーティストによるディズニー・ソングブックも珍しいものではありません。

 そんななかでも今回の『We Love Disney』は、かつてハル・ウィルナーの指揮下にトム・ウェイツロス・ロボスらが集った画期的なトリビュート盤『Stay Awake』(88年)を凌ぐ、モダンかつゴージャスな内容になっています。この頁でズラリと紹介した面々に加え、新鋭ブレナ・ウィテカーとマレーシアの才女ユナによるボーナス・トラックも充実した全16曲――ここからまた新たなお気に入りのナンバーが生まれそうですね!

 

1. “Friend Like Me” by NE-YO
90年代のディズニー映画を代表する名作「アラジン」(92年)からニーヨが選んだのは、ランプの魔人・ジーニー(ロビン・ウィリアムズ)の歌ったスウィンギンなナンバー。今年リリースした『Non-Fiction』(Compound/Motown)も堅調なニーヨですが、ディズニーとは「プリンセスと魔法のキス」(2009年)に“Never Knew I Needed”を提供した縁もありましたね。

 

2. “Part Of Your World” by JESSIE J
いわゆる〈ディズニー・ルネッサンス〉の幕開けとなった「リトル・マーメイド」(89年)でも人気の、ヒロインのアリエルが歌うロマンティックなナンバー。日本では結婚式で使われることも多いそうですが、本作では“Bang Bang”を輩出した昨年の『Sweet Talker』(Lava/Republic)も記憶に新しいジェシーJがシアトリカルに歌い上げています。

 

3. “Can You Feel The Love Tonight” by JASON DERULO
エルトン・ジョン(とティム・ライス)が書き歌って世界的なヒットとなった「ライオン・キング」(94年)の主題歌。ゴールデングローブ賞とアカデミー歌曲賞に輝いた雄大なスケールのエルトン節に挑むのは、『Everything Is 4』(Beluga Heights/Warner Bros.)もヒット中のジェイソン・デルーロ。〈いちばん感動したディズニー・ソング〉との理由で選んだそうです。

 

4. “Rainbow Connection” by GWEN STEFANI
カーミットが「ザ・マペッツ」(79年)で披露し、シリーズ屈指の名曲として愛されてきたポール・ウィリアムズ&ケネス・アッシャー作のナンバーで、カーペンターズウィーザーのヴァージョンで知った人も多いかも。ここで歌うグウェン・ステファニーは、最近はTV番組「The Voice」のコーチ役で活躍し、2012年の『Push And Shove』(Interscope)発表後に再休止したノー・ダウトも再々起動したばかり!

 

5. “Zero To Hero” by ARIANA GRANDE
主題歌“Go The Distance”も著名な「ヘラクレス」(97年)から選ばれたのは、映画本編のゴスペル・フィーリングを象徴するようなこの曲。劇中ではタワサ・エイジーらを含むクワイアで昂揚感たっぷりに披露されましたが、今作ではアリアナ・グランデが力強く歌います。昨年の『My Everything』(Republic)に続く新作『Moonlight』からの先行シングルも公開目前!

 

6. “In A World Of My Own / Very Good Advice” by JHENE AIKO
古典「ふしぎの国のアリス」(51年)にてアリスが口ずさむ挿入歌を、雰囲気たっぷりにメドレーで披露するのはジェネイ・アイコ。彼女自身の『Souled Out』(Artium/Def Jam)の作風から直結するものではないかもしれませんが、ティム・バートン監督「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年)のイメージ盤に収められたロバート・スミス“Very Good Advice”と聴き比べるのもアリでス。

 

7. “I Wan'na Be Like You” by FALL OUT BOY
一昨年にはロビー・ウィリアムズ&オリー・マーズの粋なデュエットも生んだスウィング・ナンバー。ウォルト・ディズニーの遺作となった「ジャングル・ブック」(67年)でルイ・プリマが歌った曲で、本作では昨年の『American Beauty/American Psycho』(Island)もヒット済みのフォール・アウト・ボーイが賑やかに取り上げています。この曲を選んだ理由は、劇中のキング・ルイに〈パンクの匂いがしたから〉だそう。

 

8. “Colors Of The Wind” by TORI KELLY
エンドソングとしてはヴァネッサ・ウイリアムズが歌い、ゴールデングローブ~アカデミー~グラミーの各賞を総ナメした「ポカホンタス」(95年)の主題歌。日本ではACIDMANも披露していますが、ここでは話題の新星トリー・ケリーが堂々とパフォーマンス。デビュー作『Unbreakable Smile』(Capitol)にも劣らぬ情感豊かな歌を聴かせてくれます!

 

9. “A Spoonful Of Sugar” by KACEY MUSGRAVES
ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」(64年)のなかでも有名な一曲を、昨年の『Pageant Material』(Mercury Nashville)もヒットさせたケイシー・マスグレイヴスがカヴァー。伝統的な音とは真逆の詞世界でカントリー保守層に賛否を巻き起こした彼女だけに、歌詞も違った意味に聴こえてくるかも……。

 

10. “Ev'rybody Wants To Be A Cat” by CHARLES PERRY
「おしゃれキャット」(70年)からの猫ソングを、御大デヴィッド・フォスターからの提案で粋に歌い上げたのは、ゴスペルやミュージカルの世界で活躍してきたブルックリン出身のチャールズ・ペリー。今年ヴァーヴから“Stranger To Love”でデビューし、EP『The Soul Superhero』も配信したばかりのソウルフルな期待株につき、今後も注目の名前ですよ!

 

11. “A Dream Is A Wish Your Heart Makes” by JESSIE WARE
本作中でもっとも昔のナンバーとなる「シンデレラ」(50年)の挿入歌ながら、今年公開の実写版「シンデレラ」のエンドソングでもあったので、世代を問わず馴染みがある人は多いことでしょう。今回は昨年『Tough Love』(PMR/Island)を発表したジェシー・ウェアが、スタンダードやジャズ古典に親しんで育ってきたという素養も露にカヴァーしています。

 

12. “Let It Go” by RASCAL FLATTS & LUCY HALE
昨年には日本も席巻した「アナと雪の女王」(2013年)からの大曲を披露すべく、最新作『Rewind』(Big Machine)に至るまでヒットを続けるラスカル・フラッツと、〈ティンカー・ベル〉シリーズで声優も務めるルーシー・ヘイルが共演! リリック・ストリート出身のラスカル・フラッツはもちろん、ルーシー姫もディズニー系列のレーベルから処女作『Road Between』(DMG Nashville)を出しており、まさにディズニー産カントリーの優等生コラボというわけです!

 

13. “It's A Small World”
これは〈星に願いを〉などと並んで、もっとも有名なディズニー曲の筆頭かも。64年に始まった同名アトラクションのテーマソングとして、シャーマン兄弟が書き下ろしたナンバーです。本作では1~12曲目に参加した全13組でカヴァーしています。

 

16. “Colors Of The Wind” by SARAH ALAINN
日本盤ボーナス・トラックとしてトリー・ケリーと同じく「ポカホンタス」の主題歌を選んだのは、TV番組などでもお馴染みのシドニー出身ヴォーカリスト/ヴァイオリン奏者、サラ・オレイン。デヴィッド・フォスターも絶賛する美唱と演奏は、11月25日に登場するニュー・アルバム『f』(ユニバーサル)でも堪能できるはず。 

 

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