ROTH BART BARON三船雅也です。今回からブログをスタートします。編集部さんからは現代アメリカーナの感覚を持ったバンドの紹介を中心にと言われていますが、時々脱線するかも知れません、悪しからず。

〈Bilde, Künstler! Rede nicht! Nur ein Hauch sei dein Gedicht.〉
〈形作れ! 芸術家よ! 語るな! ただ一つの息吹だにも汝の詩たれかし。〉(ゲーテ)

せめて語るには皆さんが楽しくなるような物語にしたいところですが、筆無精なのでどうなることやら。

 

ROTH BART BARONは今年、レコーディングのためカナダはモントリオールへ。ゴッドスピード・ユー! ・ブラック・エンペラーテリー・(アマール)が僕らをお出迎え。

とてもいいやつ、テリー

 

ストリングス・レコーディングで〈あなたが指揮しなさい〉とヴァイオリンのジェシカ(・モス)に無茶振りをされたり。

人生でトップクラスの緊張感をもつ背中

 

レコーディングの合間に〈オシェアガ・フェスティヴァル〉に行ったり。

ケンドリック・ラマ―がすごい人気!

 

帰りの飛行機でルーツのメンバーと相乗りしたのは、嬉しいハプニング。僕の楽器を間違えて持って行かれそうになる。

クエストラヴと一緒

 

そんなことをしながらついに10月21日にニュー・アルバム『ATOM』をリリースしました。

 

ツアー初日の東京・代官山UNIT公演は始まるまで不安でしたが、たくさんのお客さんが入ってくれてとても良い演奏ができました。

 

さてさて、今回ご紹介するのはアメリカ、ノースキャロライナのバンド、メガファン(Megafaun)です。

2009年作『Gather, Form & Fly』収録曲“Impressions Of The Past”。バンドを始めたばかりの頃の僕はこの映像にすっかり夢中になった

 

あまり最新の音楽ではないのですが、この髭が素敵な3人組は、所謂USインディーのなかでもっとも過小評価されているバンドと言っても過言ではないでしょう。ホームテープスというレーベルに所属している彼らはジャスティン・ヴァ―ノンボン・イヴェール以前に組んでいたバンドのメンバーであり、(ボン・イヴェールをリリースする)ジャグジャグウォーのコミュニティーにもちょくちょく顔を出しています。ボン・イヴェールも参加していた多人数プロジェクト・バンド、ギャングス(Gayngs)にも参加していたり。最近ではベースのブラッド・クックシャロン・ヴァン・エッテンのバックバンドの一員として来日したことも記憶に新しいです(余談ですがアメリカでは熊のようなヒゲ面兄ちゃんの〈シャロン・ヴァン・エッテンは俺の嫁!〉発言をよく聞きました)。

シャロン・ヴァン・エッテンの2014年のライヴ映像。ベースを弾いているのがブラッド

 

メガファンの音楽は、多くのアメリカ人が持っているであろう心の奥深くにある原風景を垣間見せてくれます。フィル・クックの声はどこか哀愁が漂い、まるでアメリカの広大な自然に取り残されたような虚しさや、アメリカにどこでもある郊外の街での行くあてもない停滞した感覚、アップリフティングになりきれない純度の高い透明な孤独を感じさせ、引き込まれてしまいます。

2011年作『Megafaun』の収録曲“Hope You Know”のライヴ映像

 

アメリカン・ルーツにリスペクトを持ちつつも、フォーク・ミュージックのフォーマットにとらわれないコード進行だったりジャンクなコンピューター・サウンドを使っていたり。

2011年作『Megafaun』の収録曲“These Words”のライヴ映像。ここでは水に飛び込む音、ノイズ、サンプリングのビートが小気味良く混ざっている

 

また、ヴィンテージではなく誰でも手に入れることができる現行の機材で音楽を作っているのも魅力です。

2010年作『Heretofore』収録曲“Carolina Days”のライヴ映像。右でスライド・ギターを弾くのはかつての盟友ジャスティン。珍しく髭のないメンバーたち

 

なにより3人のコーラス・ワークはとても良い味を出していて、彼らのサウンドに欠かせないものとなっています。おもしろいことにアメリカのミュージシャンの多くはメイン・ヴォーカルでなくてもコーラス・ハーモニーを上手に歌うことができます、それも、〈とても高いレベルで自然体に〉です。これは彼らの日常生活のなかで〈どのように声で和音を作っていくか〉を自然に理解する機会が多いからだと僕は考えているのですが。実際アメリカでは街に生の音楽があふれていますし、肉体的な音楽体験が多いというのは影響していると思います。悲しいかな、これはなかなか日本ではお目にかかることはできません。理論で知ることはできても、血や骨、肉体の奥底で知ることは、なかなか一朝一夕にはできないのです。

2008年作『Bury The Square』収録曲“His Robe”のパフォーマンス映像。マイクやPAを使わないことが音楽の根本的な姿だとこういった瞬間に感じます

 

脈々と受け継がれてゆくルーツ・ミュージックに新しいサウンド・テクスチャーを混ぜて古典音楽からひょいと抜け出してしまう彼らのサウンドは間違いなく〈今のアメリカ〉を鳴らしています。 

2011年作『Megafaun』収録曲“State/Meant”

 

ちなみに、ヴォーカルのフィル・クックは今年ソロ・プロジェクトで新作『Southland Mission』を出しています。こちらも2015年の大名盤。聴くべし。

フィル・クックの2015年作『Southland Mission』収録曲“Great Tide”

 

最近はツアーも落ちついてお休み中のメガファン、新作を待ちこがれすぎて首を長くするどころか大変なことになっています。筆者もいずれこんなすてきな髭を蓄えてみたいものです。それではまた次回。

P.S.
バンドは絶賛ツアー中です。
近いうちにあなたの街でお目にかかりましょう。

〈ROTH BART BARON TOUR 2015-2016『ATOM』〉
2015年12月11日(金)松本Give me little more.
2015年12月12日(土)富山フォルツァ総曲輪
2015年12月13日(日)金沢ART GUMMI
2015年12月23日(水・祝)名古屋RAD HALL
2015年12月24日(木) 鴨江アートセンター
2016年1月8日(金)鹿児島SR hall
2016年1月9日(土)宮崎LIVE HOUSE ぱーく.
2016年1月10日(日)福岡the Voodoo Lounge
2016年1月11日(月・祝) 徳島CROWBAR
2016年1月17日(日)大阪CONPASS
2016年1月23日(土)札幌PROVO
2016年2月5日(金)仙台retoro Back Page.
2016年2月11日(木・祝)熊谷HEAVEN'S ROCK 熊谷VJ-1
2016年2月20日(土)東京LIQUIDROOM
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