今回の課題盤

ズットズレテルズ 『第一集』 redrec(2009)

 

――今日はぜひハマくんも所属するズットズレテルズの話をしてもらえないかなと思っているんですよ。先日、ファースト・アルバム『第一集』(2009年)がLP化したということもあるので。

「そうしましょうか。他で(ズレテルズのことを)きちんと話したことがないので、個人的には嬉しいです」

 

~ズットズレテルズとは~

ドカットカット(MC)、リョフ(呂布:MC)、セイマン(ラキタ:ヴォーカル/ギター)、ひでちゃん(ギター)、ヒゲメガネ(ハマ・オカモト:ベース)、スコポン(オカモトレイジ、ドラムス)、皿・粉(オカモトショウ:パーカッション)から成る7人組。2008年に同じ高校の同級生を中心に結成。2009年に行われた10代限定のロック・フェス〈閃光ライオット〉に出場して注目を集めるが、その決勝大会のステージで解散を発表。その後ファースト・アルバム『第一集』をリリースする。2012年の〈JAPAN JAM〉で再結成するが、それ以降はステージを踏んでいない。2015年にドカットが急逝。

 

――プロフィールが思いっきり短いですが、ズットズレテルズのあらましから教えてください。

「僕とラキタとレイジとショウで一度だけライヴをしたバンドの名前で、その少し後に俺らの高校の卒業式の〈アフター・パーティー〉という名目のイヴェントをやることが決まって、そのために呂布やドカットも交えた形でズットズレテルズとして出ることになりました、確か……(笑)。レッドクロス(東京・新宿のライヴハウス)でやったそのパーティーには、僕がすでに加入していたOKAMOTO’Sに、呂布とドカットがいたBankRoll、ラキタの弾き語りもあったかな。ズレテルズはそのパーティーでだけ演奏する予定だったんですが、そのライヴの後がちょうど〈閃光ライオット〉が開催されるタイミングだったんです。〈そこで優勝したら100万円もらえるらしい〉という話で盛り上がりまして……」

※ハマ氏はOKAMOTO’Sのオリジナル・メンバーではなく2代目ベーシスト。2009年の初作『Here are OKAMOTO’S』には参加していない

――お!

「それで、1回限りのライヴで解散するのもなんだから、ズレテルズで出てみないかという話になったんです。その応募にあたっては音源が3曲くらい必要だったのですが、曲が足りないのでスタジオに入って、ジャムって作りました」

――生演奏なんだけど〈さんピンCAMP〉的な雰囲気もありつつ、一方で物凄くメロディアスな歌ものもあったりして、なんかよくわからないけどおもしろい、というのが当時の印象でした。

「〈さんピン〉はもちろんリアルタイムではないですが、それはよく言われていました。ズレテルズのラッパー勢と僕は、もともと仲が良かったわけではなくて。でもなぜこうやってバンドを組むことになったかというと、僕が当時好きになりはじめていた黒人音楽を彼らもすごく好きだったというのが大きいですね。ドカットや呂布から出てくる言葉が、スタックスやアイザック・ヘイズ、『スーパー・フライ』といったものに加えて、BUDDHA BRANDあたりだったんです。その流れで〈さんピン〉のVHSをみんなで一緒に観たのがきっかけで」

BUDDHA BRANDの96年のシングル“人間発電所”

――ほ~。

「その時に初めて日本のヒップホップというものに触れて、パイオニアと呼ばれた人たちはこんなにも(ネタを)モロ使いするんだ、ということを知りました。レコードからの音を切り貼りしているとはいえ、演奏者としても盛り上がれるし、カッコイイと思えた。そういうところで(MC勢と)リンクできたので一緒になった、というのはかなり大きいです」

――そこで共通言語が生まれたんですね。

「そうです。みんなでレコードを聴いて、〈このフレーズ弾いてよ〉と言われてコピーして弾くと、〈弾けんだ、ヤベー〉みたいな。〈レコードなくてもイケるんだ!〉と訳のわからないことを言ったりしていましたね(笑)」

――ハハハハハ、ピュア(笑)。

「そういう異文化コミュニケーションが生まれたことによって、モロにネタを持ってくるようなスタイルが出来た。サンプリングを人力でやる――ルーツのようなヒップホップ・バンドがいることは後から知ることになるんですが、当時はまったくそういう人たちの存在を知らなかったので。でも、すごくオールド・スクールなヒップホップの感じがしつつも、バンドの演奏にソロ・パートがあったりするので一体なんなんだ……と言われましたね」

ルーツの96年作『Illadelph Halflife』収録曲“What They Do”

――いわゆるヒップホップ・バンドかというとそういう感じでもないし、っていうことなんですかね。

「日本のヒップホップ史はまったく詳しくないのですが、〈さんピンCAMP〉だけは何度も観せられているので、むしろ僕のなかでのヒップホップは〈さんピン〉しかないし、BUDDHA BRANDしかない、くらいに止まっちゃっています(笑)。(BUDDHA BRANDの)レコードも全部持っていますよ。だから僕やレイジが話しているヒップホップの方々が、主に90年代のレジェンドだったりする理由はそこにあるんです、実は」

――なるほど、そういうことだったんですね。ではせっかくなので、『第一集』を1曲ずつ解説してもらえたらなと!

※すでにアルバムを持っているという人は、聴きながら読むといい感じ!