シャムキャッツの主宰する全国ツアー〈EASY TOUR〉が絶賛進行中だ。昨年までは〈EASY〉として東京・渋谷TSUTAYA O-WESTとO-nestの2会場を使い、ライヴ・サーキット形式で開催されてきたイヴェントだったが、今年はツアーへと趣向を変えて、鹿児島から北海道・札幌まで、全国各地のライヴハウスで彼らがリスペクトするバンドを招き行われている。〈EASY〉同様に、各会場ではZINEの展示・販売があり、またステージ転換時のBGMには出演バンドやその土地にちなんだ選曲家が配されている〈EASY TOUR〉は、メンバーの大塚智之が〈EASYのこの雰囲気を東京以外の場所でもやれたらいいよねって事!〉とオフィシャルサイトでコメントを寄せているように、彼らが東京で築き上げた〈EASY〉を各地方でプレゼンする機会になっているのだろう。
そんな同ツアーも残すところ6月19日(日)に東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催されるツアー・ファイナルと、先日発表された7月の大阪、仙台での追加公演のみ。今回は、KIRINJIやGREAT3といったビッグネームから、盟友のどついたるねんに、Taiko Super Kicks、The Wisely Brothersとフレッシュな新鋭まで、シャムキャッツらしいラインナップによる東京公演を中心に、〈EASY TOUR〉のコンセプトや各アクトの見どころ、さらにバンドが迎えつつあるニュー・モードまで、フロントマンの夏目知幸とギタリストの菅原慎一に語ってもらった。
その土地ならではの空気感がおもしろい
――今回の〈EASY TOUR〉は、シャムキャッツが理想とする音楽の場を全国規模に拡大していった印象です。
夏目知幸「まさにそう。最初は無邪気に、ツアーやりたいな、いろんな人とやりたいな、じゃあ〈EASY〉という看板にすればいいんじゃない?とノリで始めたんですけど、いざやってみると、昔よくやっていた3バンドや4バンドで対バンする楽しさを自分たちでも思い出したりして。バンドって少し軌道に乗ると、ワンマン・ライヴ以外はやりづらくなってくるんですよ。正直ワンマンのほうがお客さんも来るし。ただ、やっぱりワンマンだけじゃつまらなくて、自分たちも3~4バンドとやるイヴェントで刺激を受けてきたし、そういうのはもっとあったほうが良いんじゃないか、とずっと感じてはいたんです。いまはそれを〈EASY〉としてできている実感がある。お客さんにもそれが良い感じに伝わっていれば良いですね。バンドが3つ4つ集まった化学反応があり、お客さんにも新しい視点が生まれる、みたいな」
――〈EASY〉というコンセプトを引き継いだうえで、ツアーならではのテーマはありますか?
菅原慎一「行く土地の人たちと交流する、ということだと思う。なので、ZINE SHOPはできるだけ会場となった地方に関係のある人たちを呼びました。俺らの誘った人が自分の友達や知人に〈ZINE作ろうよ〉と声をかけて集まってくれているし、各会場でその土地ならではの色をめちゃくちゃ感じています」
夏目「ライヴ会場の雰囲気は、結構シンプルに演者たちの仲の良さやバンドとライヴハウスのスタッフの関係性とかが出ると思っているんです。イヴェントはそういう関係性の集積で出来上がる気がする。〈EASY TOUR〉では、その出方が違うおもしろさを常に感じています。例えば広島だと、僕は弾き語りでもちょくちょく行っているし、個人的に仲の良い現場の人も多いから、やっぱりそのムードがライヴにも出るんですよね。逆に金沢では会ったことない人もたくさんいたし、〈初めまして〉から始まる雰囲気があり、その空気もフレッシュな感じがして良かった」
――なるほど。土地ごとの空気感を意識したうえで、バンドとしてマイナー・チェンジを繰り返している面はありますか?
夏目「セットリストはその土地ごとに変えていますね。名古屋にはよく行くから、ファースト・アルバム『はしけ』(2009年)からの曲、“チャイナは桃色”や“忘れていたのさ”のような最近のライヴではあまりやらない曲を入れたりとか。『GUM』(2011年)から“BOYS DON’T CRY”もやった。で、広島は名古屋ほどじゃないにせよ、ちょいちょい行くから、ちゃんと“渚”はやりつつ、“BOYS DON’T CRY”もやるとか。あとツアーに合わせて放送しているUSTの番組〈ごんぶとTV〉 で、広島の人からリクエストをもらった“シンパシー”もやりました。逆に長野だと、最近あまり行けていなかったからベスト的なセットで臨んで、という感じです。3つくらいベーシックな流れがあって、そのどれかを基調にしつつ、そこに聴きたいと言ってくれた人がいる曲を加えたり。なので、1人の一言が大事だったりする」
――6月19日のLIQUIDROOMは、どんなセットになりそうですか?
夏目「新曲を3曲くらいやっちゃおうかなと思っています」
菅原「リキッドでは、さらにその次を見せたい気持ちだよね。〈EASY TOUR〉が終わって〈これから僕たちはこういうことをします〉というモードも伝えたい」
――名古屋公演にも出演していたTaiko Super Kicksを除いて、リキッドも他会場と出演バンドには被りがないんですね。ファイナルでありながらツアーの集大成といった組み方でなく、他の会場と同じように位置付けているのがすごくシャムキャッツらしい気がしました。ZINE SHOPも15組以上が参加するようですが、こちらもすべて東京のみの出店ですよね?
菅原「ZINEも被りがないですね。去年の〈EASY〉で出してくれた人も、今回はその人の地元での出店をお願いしている」
――全出店者がオススメなのは前提として、今年は特にこの人を発見してほしいというアーティストは?
夏目「僕的には菊池勇生くんというSNSを一切やってない作家かな。友達からこの人おもしろいよとフライヤーをもらって、去年の夏に展示を観に行ったらすごく良かった。そこで声をかけたら、ぜひぜひと言ってくれて。〈ちょうどいま石を拾っているから、石を売ります〉と言っていました(笑)。これは良い感じが来たぞと」
――ハハハ(笑)。あと意外にも小田島等さんは今回が初参加なんですね。
夏目「小田島さんが2月に神田のTETOKAでやった〈アイロニカルな肯定、その愛。〉という展示がものすごく良かったんですよ。別にそれまでオダジが沈んでたわけではないんだけど、そこで僕は完全なる小田島復活を感じたんです。オダジも〈4~5年ぶりくらいにキタんだよね〉と言っていて、その良い感じの風を〈EASY〉にも吹かせてほしいなと思って誘ってみた。展示にあたって寄せた文章もすごく良かったんですよね」
菅原「ZINEもバンドを誘う感覚と同じなんです。小田島さんをリスペクトしてる若い作家が多いから、彼らがZINEで小田島さんと共演するというのはすごく良いと思った。それはエキサイティングなんじゃないかなと」
――EASY BGMも各地方ごとに選曲家が異なっていますね。
夏目「東京で過去2回やったときと考え方は一緒ですね。ちょっと話が変わるんですけど、僕は2月にスコットランドへ行ったんですよ。スコットランドの大地を踏み、風を浴びながら、アズテック・カメラやプライマル・スクリームを聴くと、よりいっそう彼らの音楽をわかった気がした。その土地のものは出産地で食べるのがいちばん美味しいのと同じで、BGMもその土地に住んでいる人、もしくは出演するバンドのことを知っている人が選ぶのがやっぱり美味しいんじゃないかと。毎回BGMが作る雰囲気の違いをすごく感じています。めちゃくちゃ地方性も出るし、本当におもしろい」
――ツアーの特設サイトには、各会場のBGMのセットリストを掲載していますね。このバンドの前にあの曲がかかってすごく良い雰囲気になったとか、これまでの会場でそういったミラクルが起きた瞬間はありました?
菅原「すごくあるんだよな。特にオープンしたときの1曲目でその場の空気感が作られるんですよ。俺は札幌のあびちゃん(安孫子真哉)のときに強く思ったな。ネイキッド・シティの“Bonehead”がかかって、まさにあびちゃんならではの選曲だし、その日出演してもらったNOT WONKにも合っているし、これこそ〈EASY〉だなと思った」
夏目「金沢はRallyeの近越(文紀)さんに選曲してもらったんですけど、シャムキャッツ前の転換でビルト・トゥ・スピルの“Big Dipper”がかかって。僕がビルト・トゥ・スピルを好きだというのはあんまり言ったことがないけど、感じてくれていたのかなと嬉しかった。最高だなと思いながらセッティングしました(笑)」
可愛いんだけど大振りというか、外国人外野手みたいな感じ
――では、リキッドでの出演バンドについて、それぞれオファーした理由とおふたりが感じている魅力を教えてください。まずはThe Wisely Brothers。
菅原「今年の初頭に俺の友達の企画があって、それに遊びに行ったら彼女たちが出ていたんです。ヴォーカルのHaruko Madachiさんはたまに見かけていて、不思議な魅力を持った子だなと思っていたんですけど、バンドをやっているとは知らなくて、本当に偶然ライヴを観られた。それが、その時点での自分の年間ベストを叩き出すくらいに良かったんです。20代前半のバンドはいっぱいいますけど、がっつりオーソドックスなロック・バンドは少ないじゃないですか。でも、彼女たちがそれをやっていて、そこに勇気をもらった。もうその場で〈EASYに誘おう〉と決めて、いちばん最初に決定したよね?」
夏目「決まったというか、菅原が勝手に決めていた(笑)。僕も植本一子さんの天然スタジオのフライヤーとかで存在は知っていたけど、ちゃんと音楽を聴いたことはなくて」
菅原「表現していることのスケールが大きかったから、リキッドで観てみたいと思ったんです。そう思わせる感覚も珍しいなと思った」
夏目「可愛いんだけど大振りというかね。外国人外野手みたいな感じ(笑)」
一同「ハハハハ(笑)!」
菅原「チャットモンチーみたいとは言いたくないけど、チャットモンチーくらい大きくなりそうな雰囲気があるよね」
コマーシャルっぽさがなくて、若い頃の自分たちと同じ匂い
夏目「Taikoは自主制作のEP『霊感』(2014年)からすごく気に入っていたんですよ。なのでシンプルに誘いたいと思っていた。音を聴いてもそうだし、メンバーと喋っていても、コマーシャルっぽい感じが驚くくらいにないんです。シャムキャッツもちょいちょい長くやってきて、いまは少しは賢くコマーシャルもできるようになってきたけど、昔はほんとにできていなかったし。いまの若いバンドはみんなコマーシャルが上手いですよね。でもTaikoはそういうところにはいない感じがする」
菅原「俺もまったく同感で、若い頃の自分たちと同じ匂いを感じるんですよね。ギタリストとしての共感もあって、樺山(太地)くんがずっと下を見て朴訥と弾いているのにいきなりすごくデカい音を出すところとか」
夏目「あとは彼らのレコ発ツアーのチョイスね。山本精一や井手健介を誘っていて、あきらかに彼らと同世代のバンドとは違うセンスだった。僕らも『はしけ』のレコ発に出てもらったのは、赤い疑惑とゆーきゃんだったし、地方ではand young…や紙コップスと一緒にやったり、当時の同世代のバンドがレコ発に呼んでいたようなバンドとはやってなかったんですよね。その感じと近いのかな」
雑種のなかの最強バンド
夏目「彼らとはずっと仲が良いし、常にカッコイイなと思っているんです。藤村(頼正)がどつのサポート・ドラムをやっていたときもあったしね。話は前後しちゃうんですけど、GREAT3とKIRINJIが決まったあとに、ここはどついたるねんでしょ、となったんですよ。僕はRCサクセションの“わかってもらえるさ”という曲がすごく好きで、その歌詞の〈気の合う友達ってたくさんいるのさ 今は気付かないだけ 街ですれ違っただけで わかるようになるさ〉という感じを〈EASY TOUR〉では伝えたいんです。それには、どついたるねんがぴったりじゃんと思った」
菅原「藤村がずっと推してたんですよね。むしろ毎年推してた(笑)。決め手になったのは、彼らが今年の3月にリキッドで開催した47都道府県ワンマン・ツアーのファイナル公演でした。あのライヴが超良かった」
夏目「バンドをやってライヴをやるにはちゃんと練習しないといけないし、音も外さないほうが良いし、リズムとかもノレるほうが良いんだけど、感動の本質はそれとは全然別のところにあるとも思うんです。そんなに上手くなく、そんなに見てくれも良くないものが急激にガッと入ってくることがある。その点に関してはジャンルや技術は関係ない。それを本質として考えると、KIRINJIもGREAT3もどついたるねんも、今回の全出演者は同じ強度を持っていると思う」
――シャムキャッツはライヴで自分たちのことをオルナタティヴ・ロック・バンドと呼ぶじゃないですか。そういう言い方をするなら、どついたるねんはどう表せると思いますか?
夏目「まあでもパンクじゃないかな」
菅原「アルバムごとにジャンルが変わるおもしろいバンドで、気の合う仲間たちでそのときにハマっている音楽をワイワイガヤガヤとやっている。R&B期があればヒップホップ期もあったり。いまは雑種のなかの最強という感じになっていますよね。でもやっぱり奥底にあるのは初期衝動で、〈音楽楽しい、友達最高〉というところな気がする」
夏目「僕にとっては初期衝動というよりは〈でもやるんだよ感〉かな。それをロックと言うのかパンクを言うのかはわからないんだけど」
クラスのいちばん人気ではないんだけど、みんなよりお洒落な奴
夏目「GREAT3はいつか対バンできないかなと思い続けていた存在なんです。ロック・バンドとしての先輩であり、コマーシャルとの付き合い方という面でもすごく洒落ていて、そこをおもしろがってやっているが故の音楽だという気がしている。その感じに格好良さを感じるし、そのセンスは僕らも欲しいと思っているもので(笑)」
菅原「あきらかに異質なバンドですよね。それなのにめちゃくちゃカッコイイし、多くの人からリスペクトされている。その真髄を突き止めたい」
夏目「小学生のクラスに例えると、クラスのいちばん人気ではないんだけど、いつもみんなよりお洒落な格好をしている奴というか」
――GREAT3以外でそういうポジションにいるバンドは思いつきますか?
夏目「ちょっと違うけど、なんとなく近いと思うのはパルプとか?」
一同「あー」
夏目「僕は(パルプのヴォーカルの)ジャーヴィス・コッカーがめっちゃ好きなんですけど、GREAT3の片寄(明人)さんにも同じ匂いを感じるかも。オシャレで気が利いててちょっと妙な感じ。カッコイイっすよね」
関わらないと通れない世界の番人みたいなイメージ
夏目「シャムキャッツの次の音源を作るにあたって、プロデューサーを入れても良いかもというアイデアがあって、じゃあKIRINJIのお兄さん(堀込高樹)にやってもらったらどんなふうになるのかな、と電車のホームで想像したことがあったんです。そういう流れや、昔からの憧れもあり、〈EASY TOUR〉では胸を借りるじゃないですけど、ダメもとでオファーしてみたらOKが出た。作詞・作曲の能力はもちろんアレンジや音の選び方といった編曲面でも、KIRINJIはまあピカイチじゃないですか。昔の僕らはそういう面には興味を示さなかったんだけど、『AFTER HOURS』以降は音の重なりや歌詞に関してちょっとテクニカルに考えられるようになってきたんです。そうなってくると以前よりも俄然KIRINJIの凄さが身に染みてきて、そういうタイミングだからこそ一緒にやりたいなと思った。僕らが変わってきているということは、僕らのことを好きな人たちも少し変わってきているはずだから、共演すれば何か新しい発見を起こせるんじゃないかなと。逆も然りで、KIRINJIを好きな人にもいまのシャムキャッツを観てみてほしいし」
――特に好きな作品と言えば?
夏目「ベタとは思いますけど『3』(2000年)ですね。新しい『11』(2014年)もめちゃ聴いてます」
菅原「俺は『7-seven-』(2008年)かな。“おはよう”のアレンジを考えるときも聴いていました。KIRINJIにはめちゃくちゃ憧れていて、自分にはないものを持っていて、それを使って超素晴らしいことをやっている人たちだと思う。〈関わらないと通れない世界の番人〉みたいなイメージなんですよ。でも、そこは自分も絶対に通りたい」
夏目「最初はよくわかんないまま聴いていましたね。でも、バンドをやっていくうえで、すごさが徐々にわかってきて、だんだんKIRINJIという存在が自分のなかで大きくなっていった。歌詞を研究しちゃったり。コード進行や小節を理解すればするほど、いちいち〈なるほど〉となった」
――自分たちが作り手として知恵や技術を習得すればするほど、彼らの音源に詰まったミュージシャンとしての叡智みたいなものに気付ていったということですよね。
夏目「そうです。GREAT3もちょっと違うけど、そういうタイプのアーティストだという気がする。音楽を作るうえで、俺らが知らない混ぜ方を知っているというイメージなんです」
菅原「外国の料理みたいな感じかな。素材は同じなのに、こうやって料理するのか!みたいな新鮮さを感じる」
――シャムキャッツもそうかもしれないけど、あの両バンドはどちらも教養主義ですよね。でも90年代に活動していたバンドが持っていたそれと、シャムキャッツくらいの世代のバンドのそれとはちょっと違う気がしているんです。そこが出会うべくして出会ったのが今回おもしろいなと思う。そして、20代前半のTaikoにも彼らの世代ならではの教養主義を感じます。
夏目「あー、確かにTaikoはありますね」
菅原「すごくわかるな」
やっとシンプルにロックをやれるときがきた
――最後に、シャムキャッツは新しい音源を制作しているんですよね? 昨年11月に限定公開された新曲“おはよう”は、『AFTER HOURS』(2014年)以降の艶のあるサイケ感を引き継ぎつつ、ビートの効いたロックソングに仕上がっていました。
菅原「俺が持っていった曲なんですけど、『TAKE CARE』(2015年)を終えて、さあ次はどうしようとなり、みんなで長いことガチャガチャとアレンジを試行錯誤してようやく完成に漕ぎ着けた。制作過程もちょっと変わっていて、もともと“Record”というタイトルで俺の歌詞が付いていたんですけど、夏目に歌詞も名前もすべて書き換えてもらったんです。自分の作った曲で夏目がメイン・ヴォーカルをとっているのも初めてですね。今回みたいな作り方をしたことがなかったから、それがおもしろかった」
夏目「僕個人としては『AFTER HOURS』『TAKE CARE』はネオアコ的なギター・ストロークが美しい音楽を意識したんですけど、“おはよう”は結構ガッといくカッティングで、ブラーの“Lonesome Street”みたいなイメージがあった」
菅原「“おはよう”はもともとボサノヴァやサンバ的なものをロック・バンドがやるというコンセプトで作ったんです。だからAメロのリズムとかはわりとそうなっていますね。ダッ、ダダッダ、ダダダダッ、ダという。サビの部分は打って変わって幻想的な美しさをめざして、憂いを帯びたメロディーを乗せられるようなコード進行にしました。映画のワンシーンを思わせる雰囲気にしたくて、ヘンリー・マンシーニの”Moon River”を参考に作ったんです」
夏目「『AFTER HOURS』と『TAKE CARE』は、現実を描くというのがポイントだったんですよ。あんまり想像に頼らずに、日常描写系ではないけどいま思えばユーミンの『PEARL PIERCE』(82年)みたいな、淡々と情景を語りながら内面のエモーションを描く作品を作った。いまはそれをちょっと超えていく感じ、現実をビヨンドしていくものをやろうと思っています。映画『耳をすませば』(95年)で、図書館の階段を降りていくうちに想像の世界に入ってまた現実に着地するような、イマジナリーなもの。“おはよう”はそういうテイストがあるかな」
菅原「ニュー・モードと言い切るよりは、そこに行く過程の曲のように思う」
――なるほど。では“おはよう”を経て、次はどんな作品になりそうですか?
夏目「ポップなものになると思います。この間Mikikiに掲載されたTHE NOVEMBERSとの対談でも言ったけど、もう〈あえて〉では作らない。アイデアがシンプルになってきているから、それを素直に出したい。家族のことを歌ってみたい、初恋の感じを歌ってみたいとか」
――そうした創作スタンスになったきっかけはなんだったんですか?
夏目「実は〈EASY TOUR〉の前に、バンドの危機を迎えた瞬間があったんですよ。大袈裟なことにはならなかったけど、あれ? もしかしたら解散あり得る……みたいなことにまで考えが及んだタイミングがあった。そのときに、バンドを続けていくには、自分の強さやメンバーそれぞれの個性/長所を伸ばすしかないと思った。じゃあ自分のストロング・ポイントはなんなのかと考えていたときに、友人の女の子と話していて、その子から〈夏目くんは男気・恋愛・日常、この3本柱で曲を作れば絶対良いよ〉と言われたんです。意外とそういうもんだよ、と。そこで俺のなかにもそういう考え方で良いんじゃないかとひらめきが起きて、それは大きかったですね」
菅原「ストロング・ポイントというのに合わせて言えば、俺はギタリストなんだからもっとギターを好きになって気持ち良いギターを弾きたいなと思っています。いま、それができつつあるんですよね。良い響き方でギターを鳴らしたい」
夏目「そうだね。ロックやりたいという気持ち。やっとシンプルにロックをやれるときがきたんだよね」
菅原「解散かも……みたいな危機のときにこそ出る感じ、まさしくそれがロックだったというか。そういうときこそ4人の練習で〈オオ!〉となる瞬間があった。それをちゃんとお客さんにも伝えられたら最高だなと。つまりそれがロックでしょ」
シャムキャッツ presents 〈EASY TOUR 2016〉
日時・会場:6月19日(日)東京・恵比寿LIQUIDROOM
LIVE:シャムキャッツ/KIRINJI/GREAT3/どついたるねん/Taiko Super Kicks
/The Wisely Brothers
ZINE SHOP:オカタオカ/HELMETUNDERGROUND & RIKO/WAB/小田島等/菊池勇生
/等身大/the fictional map/STOMACHACHE./サヌキナオヤ/ずっく/日向山葵
/宮崎希沙(MESS)/原田響/玉川ノンちゃん/河村実月/やないももこ/ETCHIRA OTCHIRA/Tokyo Loco magazine/STUDY
BGM:後日発表
開場/開演:14:00/15:00
料金:4,500円(前売/ドリンク代別)
問い合わせ: エイティーフィールド(03-5712-5227)
追加公演が決定!
7月8日(金)大阪・梅田Shangri-La
7月10日(日)仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
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