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メジャー・デビューから丸2年が経過し、飛躍的に活動のスケール感を増しているロック・デュオ、GLIM SPANKYがニュー・アルバム『Next One』をリリースした。同作には〈ONE PIECE〉の作者・尾田栄一郎氏から直接指名を受けたことで実現した、映画「ONE PIECE FILM GOLD」の主題歌“怒りをくれよ”をはじめ、大型タイアップ曲を多数収録。それは、2人の音楽が多方面で支持され、愛されていることの証左であると言えるだろう。そうしてさまざまな要望に応えながらも、60~70年代のロック・サウンドを基盤にした自身の音楽性の芯をブラさず、さらに磨き上げた楽曲が並ぶ『Next One』はまさに〈Next One〉――次のステップに進んだアルバムなのである。

そんな新作のリリースを記念して、GLIM SPANKYの2人と、彼らのメジャー・デビュー当時から折に触れて楽曲プロデュースを手掛けている亀田誠治氏との鼎談を敢行。これまでにライヴ共演や亀田氏のラジオに2人がゲスト出演したことはあったものの、意外なことに対談という形で膝を突き合わせるのは今回が初だという。そんな両者の出会いからお互いの印象、そして亀田氏の最新プロデュース曲である“怒りをくれよ”の制作エピソードまで、幅広く語ってくれた。相思相愛とはまさにこのこと! お互いへの愛とリスペクトに溢れた、笑顔の絶えないインタヴューとなった。

GLIM SPANKY Next One ユニバーサル(2016)

GLIM SPANKYと出会って、〈生きてて良かった!〉くらいの衝撃があった(亀田)

――GLIM SPANKYのお2人が亀田さんに初めてお会いしたのはいつでしたか?

亀本寛貴(ギター)「実はだいぶ前なんですよ」

松尾レミ(ヴォーカル/ギター)「2012年ですね」

亀田誠治「僕がウェブでやっている〈亀田大学〉というのがあって、才能のあるアマチュアの方々を紹介する〈亀田大学サークル〉というコーナーに、2人が応募してきたんですよ」

亀本「人づてではあったんですけど、亀田さんに音を聴いてもらえるというので、その人を介して音源を渡してもらって」

亀田「それを聴いた僕が一発で気に入って、〈亀田大学サークル〉に入りなよ!と。その後に〈子亀祭〉というライヴを渋谷BOXXで開催して、そこに出てもらったんだけど、その時もパーフェクトだったんですよね。だから、僕がお声掛けしなくても、何らかの形でこの子たちは絶対に出てくるだろうなと思っていたら、なぜだか僕のところにお話がきて。だからもう本当にご縁だよね?」

松尾「本当にそうですね」

――最初に亀田さんへお渡した曲はなんだったんですか?

松尾「“ダミーロックとブルース”(2013年の初ミニ・アルバム『MUSIC FREAK』収録)だっけ?」

亀本「あとは“MIDNIGHT CIRCUS”(2014年のシングル“焦燥”カップリング曲)とか」

松尾「ロックンロールな感じのものが多かったですね。王道の古臭いロックというか」

亀田「でも、僕のところに送られてきた何百本ものデモテープのなかに、あんなことをやっている人は誰一人いなかったよ。それぞれ個性のあることはやっているんだけども、オーセンティックというか、伝統を踏まえたうえで自分たちのカラーを出している若者はいなかった」

――その頃からもう目を惹くものがあったと。

亀田「はい。いまのGLIM SPANKYがそこにあったし、この子たちは自分たちの音楽をやる覚悟がもう決まっているんだなと思いましたね。そういうアーティストと音楽を作れるというのは、やっぱり僕も嬉しいし、なんかこう……生きてることを実感するわけ。自分も音楽をやっていたからこそこうやって巡り会えて、〈生きてて良かった!〉みたいな。それぐらいの衝撃がありましたよね」

松尾「本当にありがとうございます」

――初めて対面した時の亀田さんの印象はいかがでした?

松尾「初めてご挨拶させていただいたのは〈子亀祭〉の時だったんですけど、私のなかでの亀田さんは東京事変のイメージだったので、かなり尖っていてヤバイ人なんじゃないかと思っていて」

東京事変の2011年作『大発見』収録曲“新しい文明開化”
 

亀田「ハハハハハ(笑)!」

松尾「でも実際にお会いしたら本当に懐の大きい方だったので、良かったなと(笑)。あと、ライヴの後にその日の出演者を亀田さんがお客さんに紹介していたんですけど、私たちのことを〈腰でノれて、60年代、70年代を感じさせる王道のロックだよね〉と言ってくださったんです。その後の打ち上げでお話させてもらった時には、〈みんなの前で60~70年代のロックと言ってしまったけど、ちゃんとオリジナリティーがあることはわかってるからね〉と言ってくださって」

亀田「うん、覚えてる。〈このまま行け!〉ということを言ったんだよね」

松尾「そうです。それを曲げずに貫いたらいいよと言ってくださって。それがすごく嬉しかったですね」

――亀田さんがプロデュースされた楽曲は、リリースされたもので言うと“褒めろよ”が最初でしたが、この曲が初の共同作業だったんですか?

亀本「いや、最初は“大人になったら”(2015年作『SUNRISE JOURNEY』収録)でした。“焦燥”(2014年のシングル)を録り終わってすぐだったので、2014年の春だったかな。ディレクターに〈この曲がすごくいいから先に録りたいんだけど、亀田さんと一緒にやってみない?〉と言われて」

――亀田さんは、2人と制作してみていかがでしたか?

亀田「レミちゃんもカメちゃんも、自分たちのやりたいことが明確に音に出ているし、会話をしていてもそれが出てくるので、僕はその写し鏡のような感じでいようと。僕と話すことで〈私たちはこれでいいんだ〉と確信を持って進められるようなガイド役をいつもしている感じですね。でも、プロデューサーとミュージシャンという関係だし、年齢も親子ぐらい離れてはいますけど、やっぱり一緒に作る時は〈共作者〉であって、同じバンドのメンバーのつもりで作っています。あと、幸運にもGLIM SPANKYにはベースがいないから、僕が弾けるんですよ! これはいつも言ってるんだけど、僕は合奏が大好きなんですよね」

亀本「そうですね(笑)」

亀田「あと、(GLIM SPANKYとの作業は)全部がクリエイティヴなんです。2人は、自分たちのやろうとしていることや、音楽家としてのモチヴェーション、良心みたいなものを目一杯に詰め込んで曲を作ってくるんだけど、それを拡げていく作業というのがすごくクリエイティヴで。僕もそうだし、参加してくれるドラムの人もそうだし、エンジニアの南石(聡巳)さんも、(いしわたり)淳治さんも、みんながとにかくグリムのサウンドを良くしようという気持ちで関わってる気がする。そこは2人の人徳もあるんですよね。音楽をいちばん大事にしていることが伝わってくるし、プレイに対してもすごく建設的だから、〈なんか違うね〉みたいな感じにならないもんね?」

松尾「そうですね。みんなで前に進んでいく感じでレコーディングをしているので」

亀田「本当に素晴らしいチームワークなんですよ。でもそれは、GLIM SPANKYのやりたい音楽が明確だからだと思う」

亀本「そこはまさに意識しているところでもあるんです。やっぱり僕らがこういうことをやりたくて、こういうふうにしたいんですっていうのがないとダメだし、そこは人に頼っちゃいけないところだと思っていて」

松尾「自分たちがしっかりしていないのに人に頼むのは失礼だし、そこでブレていたら頼まれた側もどうしていいかわからないと思うので。自分たちが何十年も背負っていく曲を作る気持ちでいるから、生半可な気持ちではやっぱりできないですよ」

亀田「2人ともそういう意識がとても強いから、ものすごい質量、重量のある球が毎回飛んできます」

2015年作『SUNRISE JOURNEY』収録曲、亀田がプロデュースした“褒めろよ”

 

亀田さんが本当にバンド・メンバーの一人だという気持ちでできる(松尾)

――いまお話されている様子からも、制作現場のムードが良い感じなのが伝わってきます。

松尾「そこはやっぱり亀田さんのパワーだなと思いますね。どんなミュージシャンやディレクターに訊いても、亀田さんについては良いことしか言わないというか(笑)。そもそも亀田さんが嫌いな人はこの世界にいないんじゃないかっていう」

亀田「ハハハハハ、そうかな(笑)」

松尾「でも、それぐらいすごいんですよ。ちょっとした不安があっても、亀田さんがポンと背中を押してくれると、〈よし!〉っていう気持ちになる。演奏やサウンドはもちろんですけど、ムード作りの部分でも亀田さんは大きな存在だと思います」

亀本「今年出したミニ・アルバム(『ワイルド・サイドを行け』)は、タイトル曲以外は自分たちでプロデュースしたんです。そこで、あたりまえの話なんですけど、亀田さんの手際がいかにいいかを改めて感じたんですよね。自分たちもストレスなくできるし、余計なことを考えなくていいというか」

2016年のミニ・アルバム『ワイルド・サイドを行け』収録曲、亀田がプロデュースした“ワイルド・サイドを行け”
 

亀田「結局、音楽ってそこに注ぎ込まれる〈波動〉なんですよね。音楽は空気の振動じゃないですか。音に気持ちの振動をどれだけ閉じ込められるかによって、10年、20年に渡って聴かれる作品になるかどうかが変わってくるような気がするんです。だから、納得しながら進んでもらいたいけれども、無駄な寄り道はしなくてもいいよと。無駄な寄り道をしそうになった時に、〈こっちで大丈夫だよ〉と僕が言うというか」

松尾「そうですね。良い方向に導いてもらえています。私、昔はプロデューサーという存在に良いイメージがなかったんです。プロデューサーが曲をすごいイジって、サウンドも最初に作ったものから全然違うものにされて、気付いたら勝手にリリースされたりするんじゃないかとか」

亀田「ハハハハハハ(笑)」

松尾「でも、亀田さんにプロデュースをしていただく前にいしわたり淳治さんと一緒に曲を作ったことでそういった不安がなくなって、亀田さんの仕事ぶりからプロデューサーは自分たちが持っているものを引き立ててくれる人なんだなと確信できました。すごく健全なんだなと思えたし、亀田さんが本当にバンド・メンバーの一人だという気持ちで毎回一緒にできますし」

亀田「リズムも〈せーの!〉で一緒に録るもんね。僕が録音ブースの向こうの部屋でふんぞり返って、〈もう1回いってみようかー。はい、テイク・ツー〉みたいな感じじゃないですよ(笑)。〈早くやろうよー!〉って、なんか僕のほうが子供のような感じになってるもんね」

松尾「ハハハ(笑)。だけど、本当に私たちと亀田さんが同年代のような気持ちで音を鳴らせるというのは、本当に特別なことだなと毎回思いますし、純粋に私たちは亀田さんのベースが大好きなんですよ」

亀田「ありがとう」

松尾「私が勝手に感じていることなんですけど、私はビートルズが大好きで、亀田さんもビートルズがお好きなんですよね。で、亀田さんのベースは、ポール(・マッカートニー)というよりも、〈ビートルズ〉なんです。ポピュラリティーがあるものや、めちゃくちゃブルージーなもの、サイケデリックなものとか、あの4人で結成から解散までいろんなタイプの曲を作っていましたけど、あの音楽性の幅広さを亀田さんのベースに感じるんです」

亀本「亀田さんは、レコーディング当日に思いついたものでも〈これリフにできるんじゃない?〉っていうぐらいすごいフレーズを弾いてくれるんですよね」

亀田「ありがとうございます。僕も、レミちゃんの歌もカメちゃんのギターも大好き。お互いに対してリスペクトがあるんですよね。年齢や歩んできた道、ジャンルとかは関係なく、音楽家として尊敬し合えているというのはありますね」

GLIM SPANKYの2015年作『SUNRISE JOURNEY』収録曲、亀田がプロデュースした“リアル鬼ごっこ”のライヴ映像
 

――なんかもう、お互いへの愛がすごいですね。

松尾「ハハハハ(笑)。やっぱり好きじゃないと頼みたくないですから」

亀田「そこはすごく大事なことだと思うよ。結局音楽って、その音楽を好きな人が一生懸命やるのがいちばん。僕はGLIM SPANKYが好きだから(プロデュースを)引き受ける。やっぱりお金やしがらみのために演奏したり、プロデュースはできないよ」

――それは素晴らしいことですよね。新作『Next One』では、“ワイルド・サイドを行け”と“怒りをくれよ”を亀田さんがプロデュースを手掛けています。“怒りをくれよ”は、映画「ONE PIECE FILM GOLD」の主題歌になっていますが、映画の製作サイドから楽曲について要望はあったんですか?

松尾「これまでの〈ONE PIECE〉のイメージとは違うものを、というお話でした。あと、〈ルフィと戦う気持ちでお願いします〉と。主題歌という形でちょこんと作品に乗ってるんじゃなくて、〈ONE PIECE vs GLIM SPANKY〉みたいな見せ方にしたいということだったので、私たちの得意としているロック感を拡げながらもお茶の間に届くキャッチーさがあり、でもトゲもあるっていう。そこを狙って書いたんですけど、とても難しかったですね」

亀田「やっぱり〈ONE PIECE〉という作品に対するリスペクトがそれぞれにあるので、これまでのイメージとは違うものをと言われても、こちらとしてはリスペクトの欠片を音にして入れちゃったりするんですよ」

松尾「そうそう。そうなんです」

亀田「でも、尾田(栄一郎)さんとしては、もっとそこから離れてほしかったんですよね。だから、最初は良かれと思ってやったことが空振っちゃったというか」

松尾「映画チームと2回ミーティングしたんですけど、1回目はGLIM SPANKYが思う〈ONE PIECE〉の曲を書いてくださいというお話だったんですよ」

亀本「僕らも〈ONE PIECE〉は好きなので、それならこれでしょ!というイメージがあったんです。曲としても自信はあったし、それを亀田さんのところに持っていって、さらにブラッシュアップして出したんですが……」

松尾「そうしたら〈こういうことじゃないんです〉ということになって。それでもう一度映画チームとミーティングさせてもらったら、〈めちゃくちゃロックでいいんです〉〈もっと泥臭くていいんです〉と」

亀本「〈イギー・ポップみたいな感じがいいんです〉とかね(笑)。それで、最初に作った曲の欠片も残さず、完全にゼロから作り直したのが“怒りをくれよ”で」

亀田「でも“怒りをくれよ”が素晴らしい曲になったのは、尾田さんのGLIM SPANKY愛もあったよね」

『NEXT ONE』初回盤DVDに収録のライヴ・ダイジェスト映像
 

――尾田先生から直接指名があったそうですね。

亀田「そう。そこはすごく大きいんですよ。尾田さんはグリムの音楽を愛してくださっているので、2人はそういう注文が来ても求められていることがわかっていたし、自分たちが持っているもうひとつの切り札というか、別のチャンネルに合わせればいいんだなという感じだった。だから第一稿と第二稿とでまったく違う方向性なんだけど、凹んで方向転換する感じではなかったよね?」

亀本「そうですね」

松尾「みんな前を向いてましたよね。歌詞もレコーディング直前までなかなか決まらなかったんですけど、尾田さんから〈僕はこの言葉が好きです〉っていうメールが届いたんですよ。それが、亀田さんのスタジオで、デモの歌入れをした時にパパっと書いた言葉だったんですよね」

――どの部分ですか?

松尾「〈試練何度越えようが 満足を蹴り飛ばし行こうぜ〉というところです。私もそこは歌いたいと思っていたから、それを踏まえて淳治さんとやり取りしながら(歌詞はいしわたり淳治との共作)ギリギリまで書いていたんですけど、精神的に尾田さんと繋がっていたんだなと思えて。すごく清々しいタイアップでしたね」

“怒りをくれよ”の「ONE PIECE FILM GOLD」ヴァージョンMV

 

いい塩梅にしておこう、というのができない(亀本)

――アルバム全体として、それこそ亀田さんがおっしゃっていた〈オーセンティックでありながらオリジナリティーのある音楽〉というところをさらに突き詰めた印象があります。まさに〈Next One〉な作品になりましたが、今作でイメージしていたものはありましたか?

亀本「こういうアルバムにしよう、みたいなコンセプトがあったわけではなく、その時々に書きたかった曲や、求められた曲を作っていたら10曲出来たという、すごく自然な感じでした」

松尾「タイアップ曲も、自分たちの歌いたいことしか歌ってないし」

亀田「そこは本当に素晴らしいことだよね」

――曲調もさまざまですよね。“怒りをくれよ”のようにエネルギッシュなものもあれば、“闇に目を凝らせば”みたいに幻想的でディープな雰囲気の曲もあったり、それぞれすごく振り切れていて。

松尾「私たちのなかに〈中間〉はないんですよ」

亀本「いい塩梅にしておこう、というのができないんですよね」

松尾「そこは曲を作る時や音を選ぶ時もそうですし、レコーディングのメンバーも、この人ならできそうかな、という感じが嫌なんです。本当に好きな人、やってほしい人じゃないとイヤ(笑)。だから一切の妥協も、悔いもない作品になりましたし、気持ちはさらに〈Next One〉というか、次のサード・アルバムに行っています」

亀田「いいねえ。そういう覚悟を持ってやっていることや、半端が嫌だっていうことを2人はちゃんと音にしているんですよね。レミちゃんには抜群のヴォーカル力があって、カメちゃんには抜群のギターセンスとスキルがあることが、すごく大きいと思います。彼らのような覚悟はあっても、そのレヴェルにまで至ることができない人は多いから」

2016年の配信EP『話をしよう/時代のヒーロー』収録曲“話をしよう”、新作『Next One』にも収録
 

――覚悟を形にできるスキルも持っていると。

亀田「そう。だから、どこでそのスキルを身に着けたのか不思議でならないんですよ。いまの時代はいろんな情報を吸収することはできるんだけど……だってカメちゃんは25歳でしょ? 僕が25の時なんてヒヨヒヨのピーだったよ!」

松尾亀本「ヒヨヒヨのピー(笑)」

亀田「僕はちょうどプロの仕事を始めるかどうかぐらいの頃だった。あ、これは伝えておきたいと思っていたんだけど、GLIM SPANKYはこんなにオリジナリティーがあって、自分たちにしか出せないものをやっているんだけど、他の人の音楽を絶対に悪く言わないんですよ」

亀本「フフフフ(苦笑)」

亀田「あ、言ってるの(笑)?」

松尾「いや、もちろん(音楽の)好みはありますよ? そこは私もいち音楽ファン、いちリスナーなんで。例えば“怒りをくれよ”のギター・ソロでは速弾きをしましたけど、個人的な好みとしては80年代のハード・ロック的なギターはそんなに好きじゃないんです。でもGLIM SPANKYの松尾レミとしては、この速弾きがあることによってグリムのことがもっと伝わるだろうと思うからOKなんです」

亀本「なんか、〈俺はいいけどYAZAWAはなんて言うかな〉みたいな感じがあったけど(笑)。そういうこと?」

松尾「そうかも(笑)」

亀本「でも、そこは亀田さんの影響があるのかもしれないです」

亀田「え、〈俺はいいけどKAMEDAはなんて言うかな〉って?」

亀本「そうじゃないです(笑)! なんか、レミさんと2人で曲を作っている時は、レミさんは結構言うんですよ、〈そんなダサイのやめて!〉とか。だけど、亀田さんがいるとそういうことを言わないんです」

松尾「亀田さんがいると不安がないんですよ。ダサイからどう、みたいなことって不安だから言っちゃうんですよね」

亀田「なるほどね。僕が俯瞰で見ていて、それでもグリムらしさが全然残ってるから大丈夫だよと言うから」

松尾「そうです」

2016年の配信EP『話をしよう/時代のヒーロー』収録曲“時代のヒーロー”、新作『Next One』にも収録
 

亀田「とはいえ、僕にも言う時は言うよね?」

松尾「そうですね。〈ここのベース、変えてもらえませんか?〉みたいな。引っ掛かることがあったら、その時はちゃんと言います。そこは自分たちの作品なので……でも亀田さんの場合はそういうことが本当にない。だから〈この曲がグリムの顔になる!〉という、トドメの一撃としてお願いするんですよ」

亀田「そこはいつも覚悟してるよ。グリムの良さは絶対に出しつつ、僕が大きなアンプみたいになって大きな音で外に届けるんだという気持ちを持ってやってる」

松尾「例えば、アルバムのなかでとにかく自分の世界観を出したい曲は、自分の嫌なものは全部排除するんです。そういうものすごく視野が狭いものがあってもいいと思っているので。だけど亀田さんにお願いする時は、本当に大きな心でやりたいんですよ。とにかくGLIM SPANKYをいろんな人たちに届けたいという気持ちでやるから。わかる人にだけ届けばいい、というものにはしたくないんですよね」

――そろそろお時間となってしまいましたが、今後もこの素晴らしいタッグで良い音楽が生まれていきそうですね。

松尾亀本「そうですね」

亀田「うん、やりたいです。僕もグリムと一緒にやってて毎回成長するんですよ。さっきレミちゃんが僕のベースにビートルズを感じるって言ってくれたけど、そうやってミュージシャンとしての自分の位置を確認することができるし、一緒にやってて、僕にもまだこういう引き出しがあるのか!と気が付くこともあるから。往年のマスターピースから得られるような刺激と、次の世代から得られる新しい刺激の両方を感じることができる場所にいられて、自分はすごく幸せだと思いますね」