INTERVIEW

South Penguin × 岡田拓郎(元・森は生きている)─インダストリアル経由でシティー・ポップへ、2人の異端児が初EPの制作秘話を語る

(左から)South Penguin・アカツカ、岡田拓郎

 

決定時点ではライヴ経験がゼロだったにもかかわらず、7月24日(日)に〈フジロック〉の〈ROOKIE A GO-GO〉へ出演する東京の4人組バンド、South PenguinTaiko Super KicksYogee New Wavesとの交流でも知られる彼らが、元・森は生きている岡田拓郎をプロデューサーに、葛西敏彦をエンジニアに迎えたデビューEP『alaska』をリリースした。東京インディー・シーンきってのアウトサイダーたちが、見よう見まねで描き上げたシティー・ポップのレプリカ。それはオリジナル以上に精巧で、ともすれば見分けがつかない危険性さえあるが、当の本人たちは意に介さず、あわよくばそのイメージを利用してやろう、ついでにオイシイ思いをしてやろう(?)という、怖いぐらいのしたたかさを持ち合わせている。そんなバンドの中心人物であるアカツカ(ヴォーカル/ギター)とプロデューサーの岡田拓郎が、〈SPKコナン・モカシン〉というないものねだりの組み合わせから生まれた、アラスカのペンギンのようにシュールなサウンドの制作秘話を語ってくれた。

South Penguin alaska RALLYE(2016)

 

常にふざけてるからこそカッコイイ、だからニューウェイヴが好き(アカツカ)

――アーティスト写真でサングラスとかかけてたから、ヤバイ人なのかと思ったんですけど。

アカツカ「全然そんな……。ただ、和柄とかが好きなだけで(笑)」

岡田拓郎「どこのヤンキーなんだよっていう(笑)」

――この写真だけ見てると、どういうバンドだかわからないですよね(笑)。それでいてこういう、爽やかな音楽だから。

アカツカ「笑わせたいっていうのはあるんですよね。ちょっと行き過ぎたぐらい、グラサンかけてスカジャン着て、デニム履いてとかってやると、笑わせられるかなと思って。でも僕、煙草とか吸わないんですよ(笑)」

岡田「初めて会った時もスカジャン着てて、後ろ向いたら〈alaska〉って書いてあってちょっとおもしろかった(笑)」

――それって、EP『alaska』のアートワークにも出てくるスカジャン?

アカツカ「そうですね、あれを着てたんですよ。〈alaska〉って書いてあるスカジャンが7着ぐらいあるんですけど」

岡田「そんなにあるの? すげえ(笑)」

――それはアラスカにこだわりがあるんですか? それともペンギンありきみたいな?

アカツカ「でも、アラスカにペンギンっていないんですよ。北極にもいなくて、南極にいるんです。曲を作るようになる以前に、単純にスカジャンが好きだったんですよ。それでスカジャンを買ってみたら、やっぱり目につく文字だから〈alaska〉というのが頭の中にあって、曲を作っている時に仮タイトルも“alaska”にした」

岡田「あ、スカジャンが先なんだ」

アカツカ「曲に合わせてスカジャン買ってたら寒くないですか(笑)?」

――ハハハ(笑)。そもそも、どうしてペンギンなんですか?

アカツカ「これも本当に適当なんですけど、ペンギン・カフェのライヴへ行った帰りにバンド名を決めて」

――確かに、アートワークはペンギン・カフェっぽいですよね。

アカツカ「完全にそうですね。2014年に横須賀でペンギン・カフェを観て、〈すごい良かったな~〉と思いながら帰りに〈バンド名どうしようかな〉と思って、〈ペンギン〉を入れようと。横須賀だし、スカジャン買ったし。本当にそれだけですね(笑)」

ペンギン・カフェの2014年のライヴ映像
 
森は生きているがカヴァーしたペンギン・カフェ・オーケストラ“Air A Danser”
 

――ステージでもスカジャンは着るんですか?

アカツカ「それはないですね、普段は着ますけど。僕はダウンタウンが好きで、浜ちゃんがスカジャンを着てるっていうのもある」

――浜ちゃんは最近、スカジャン着てなくないですか?

アカツカ「意外と着てますよ。この間の〈ガキの使い〉でも着てましたし。僕がダウンタウンを好きになったのは、〈松本人志もつまらなくなった〉とか言われていた時ですけど、『放送室』というラジオ番組がすごく好きで。全然おもしろいじゃんとか思いながら、いまでも7周8周って聴いてるんです。そういうところから、服装は浜ちゃんを意識してますね。ハマダーなんです」

※2001年10月~2009年3月まで、JFN37局ネットで放送されていた〈松本人志の放送室〉。松本と高須光聖(放送作家)の2人が、互いの近況や出演番組の裏話などについてひたすらトークする人気のラジオ番組だった

――〈ハマダー〉って言葉も90年代で終わってますからね(笑)。でも『ダウンタウンDX』とかでも、松ちゃんのコメントの切り返しはおもしろいですよね。

アカツカ「めちゃくちゃおもしろいですね。他にもバナナマンおぎやはぎとかは、ミュージシャンよりも尊敬しています。ハライチも大好きなんですけど、澤部(佑)は〈フジロック〉が大好きらしくて、僕らの出演が決まった時も、それが一番嬉しかったです。〈これはもしかしたら、(現地で)澤部が見られるかもしれない〉――そういうところを音楽にも出していきたいですね(笑)」

岡田「適当だなあ(笑)」

アカツカ「〈芸人さんのイイ話〉ってあるじゃないですか。こんな芸人さんだけど、実は裏ですごく泣けるエピソードがあって……みたいな。ダウンタウンにもそういうイイ話はたまにありますけど、だいたい最終的にオモシロ話になっちゃうんですよね。単純に泣けるだけの話はないんですよ。常にふざけてるからこそ、それがカッコイイっていう。だから、バンドも本当はふざけたいんですよね。堅苦しいのは苦手なんで、やっぱりちょっと抜けた感じというか。だからニューウェイヴが好きなんですよ。すごく完成された音楽──例えばジェイムズ・ブレイクも最初に聴いた時から〈これはダメだ!〉と思ったし。すごすぎて聴けない。カッコ良すぎるのは怖いんですよ」

――確かに、音楽の好き嫌いを決める時は〈笑えるかどうか〉が結構大事な気がしますね。

アカツカ「すごく重要ですよね。もともと俺がこのバンド始めたきっかけは、藤岡みなみさんがすごく好きで。バンドで売れたら、彼女にも聴いてもらえるんじゃないかと思ったんですよ。South Penguinの〈South〉も、藤岡みなみさんの〈みなみ〉から取ってます。それとペンギン・カフェ。好きなものを2個繋げときゃいいだろうって(笑)」

岡田「マジかよ(笑)! いいねえ、思ってた以上にアホだったわ(笑)」

アカツカ「プリンスが死んだ時に、悲しくてタワーレコードのプリンスのコーナーの前でボーッとしてたんですよ。そうしたら隣に藤岡みなみさんがいて。ビックリして、逆に引いちゃうぐらい。もちろん話しかけることもできないし、もう見ていられなくて、2~3秒だけ見てから走って『クレヨンしんちゃん』の映画を観に行きました(笑)」

藤岡みなみ&ザ・モローンズの2016年のEP『まるで、』収録曲“脱水少女”

 

うだつの上がらない状況が続いた時に、いまはネオアコが来てるぞと(アカツカ)

――そういえば、今回のEP『alaska』を聴いていたら歌詞にSPKとか(アインシュテュルツェンデ・)ノイバウテンみたいなインダストリアル系バンドの名前が出てきて驚いたんですけど、もともとは全然違う音楽性のバンドをやってたんですよね。最初はどういうバンドだったんですか?

アカツカ「もう本当に、ナンバーガールみたいな感じでしたね」

アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの81年作『Kollaps』収録曲“Kollaps”
 

――その頃はまだジャーマン・ニューウェイヴみたいな音楽は聴いてなかったんですか?

アカツカ「いや、その頃から好きでした。ジャーマン・ニューウェイヴは音楽を始める前から好きなので、根底にはあって。もともとトーキング・ヘッズがすごく好きだったし、わりとニューウェイヴでファンキーで、ちょっと踊れるようなものが好みでしたね。ただそのアプローチが……。トーキング・ヘッズは頭が良かったけど、僕は頭が悪かったから(笑)、表現の仕方が全然わからなくて、とりあえず歪ませようと(笑)」

――ジャーマン・ニューウェイヴにもいろいろあって、デア・プランみたいなテクノ・ポップっぽいバンドもいると思うんですけど、どういうのが好きだったんですか?

アカツカ「きっかけはパレ・シャンブルグという、80年代前半に活動していたバンドですね。ギター、ベース、ドラム、シンセっていう普通の編成なんですけど、全員が不協和音を出し合う、みたいなバンドで」

――そもそも、どうやって知ったんですか?

アカツカ「〈DOMMUNE〉か何かを観ていた時にパッと出てきて、石野卓球が中学生の時のフェイヴァリットだった、みたいな話を聞いて。石野卓球が昔好きだった音楽には、そういうおもしろいものが多いイメージがあったんですよね。でもその時は石野卓球が好きだったわけでも、他のニューウェイヴが好きだったわけでもなくて。ただ〈ニューウェイヴ〉というキーワードはトーキング・ヘッズで頭にあったから、他にもそう呼ばれているバンドを聴いてみようと掘り下げてみると、ドイツがわりとおもしろくて、自分の好きなタイプでしたね」

パレ・シャンブルグの81年作『Palais Schaumburg』収録曲“Wir Bauen Eine Neue Stadt”
 

――他にはコナン・モカシンが好きだと聞いたんですけど、そういうインディー・ロック的な音楽を聴くようになったきっかけは?

アカツカ「最近の海外の音楽は、それこそ大学のサークルの先輩だった、Taiko Super Kicksのヴォーカル(伊藤暁里)とかに教えてもらったんですけど、それまではUSインディーと呼ばれているようなバンドをまったく知らなくて。本当にどのジャンルも昔の音楽しか知らなかったんですよ。それで自分もいろいろ聴いていくうちに、なんか悔しくなってきて。みんなはいろんな音楽を教えてくれるのに、俺は何も教えられるものがないから、じゃあSoundCloudを漁ろうと思いついて(笑)。そうしたらコナン・モカシンに出会い、結構すごいのを見つけたぞと思って、みんなに〈知ってる?〉と。2作目の『Caramel』(2013年)が出た時ぐらいの話かな。よく聴くのは、“Faking Jazz Together”っていうファースト(2010年作『Forever Dolphin Love』)の曲ですけど、セカンドはプリンスっぽいと思ったんですよね。 声もおもしろいし」

コナン・モカシンの2013年作『Caramel』収録曲“I'm The Man, That Will Find You”
 

――今回のEPには入ってないですけど、SoundCloudに上がっていた“aztec!”という曲が、South Penguinとして一番最初に書いた曲なんですよね。歌詞にペンギンが出てきたり、ちょっとバンドのテーマ曲っぽい感じもあって。あれははっきりとしたコンセプトがあったんですか?

アカツカ「そうですね、あれは考えてやりました。最初というのもあったんで、まだ1曲しかないけど、友達に絵を描いてもらって、アートワークもしっかり作ったりして。バンドのコンセプトは〈やりたいことをやる〉なんですけど、当時のモードみたいなものは完全にありましたね」

――それは具体的に言うと?

アカツカ「やっぱり、本当にうだつの上がらない状況が続いてたので、新しくバンドをやろうという時に、まず誰かに引っ掛かってもらわないとしょうがないと思ったんです。それこそ僕の周りでは、Taikoがちょっと話題になってたし、Yogee New Wavesも友達だけど、どんどん売れていったし。〈こいつらイイなあ〉と見ているなかで、やっぱり何かしらの変化をつけて、局地的でもいいからどこかで(South Penguinが)話題になってくれないとヤバイんじゃないかなと思いはじめた。それで時流に乗ったと言ったらアレですけど……、やっぱり当時はコナン・モカシンとも仲の良いマック・デマルコとかが人気だったじゃないですか。それは当然、Taikoのヴォーカルも言ってくるんですよ。〈最近はマック・デマルコってヤツが熱いぞ〉みたいな話を(笑)。でも確かにこれはカッコイイなって。いまこういう音楽をやると、もしかしたら目につくかもしれないというのもちょっとあって(笑)。〈いまはネオアコが来てるぞ〉と」

――じゃあやっぱり、“aztec!”というタイトルもアズテック・カメラから?

アカツカ「いや、あれはカッコイイ言葉だなと思って拝借しただけなので、全然関係なくて(笑)。実はフリッパーズ・ギターの“偶然のナイフ・エッジ・カレス”という曲のオマージュで、サビの歌詞もメロディーもほぼそのまま。テンポだけ落としたような曲なんです」

フリッパーズ・ギターの90年作『CAMERA TALK』収録曲“偶然のナイフ・エッジ・カレス”
 

――まあでも、フリッパーズ・ギターもアズテック・カメラとかいろんな音楽をパクってますからね。

アカツカ「それもありましたね。〈フリッパーズ・ギターがパクってるんだから、フリッパーズ・ギターをパクってもいいだろう〉っていう(笑)」

――ハハハ(笑)。RALLYEからEPをリリースすることになったのは?

アカツカ「(RALLYEオーナーの)近越文紀さんが、SoundCloudに上げていた“aztec!”を聴いてくれたんですよ。ネオアコとかが好きな人だから、〈フリッパーズのことをパロってる〉みたいなことを何かのタイミングで耳にして覚えていて、それで連絡をくれたんです」

――時流に乗ったにしろ、すぐにこういう完成度の高い曲が書けるのはすごいですよね。だって、それまではナンバーガールみたいなバンドをやってたわけでしょ?

アカツカ「確かに、そこからはすごくシフトしていった感じですね。だから周りの友達から〈何がやりたいの?〉と言われたりもしました(笑)」

 

超イケてるバンドだと思ったら、ルサンチマンの塊だった(岡田)

――岡田くんと知り合ったきっかけは?

岡田「完全に近越さん経由ですね。実は、森は生きているがデモを作った時もRALLYEがいちばん最初に連絡をくれたんです。SoundCloudに曲をアップしただけの状態で、向こうから連絡が来て」

――そう考えるとSoundCloudは大きいんですね、改めて。

岡田「近越さんはすごくチェックしている印象ですね。それで結局、他のレーベルからアルバムをリリースすることになるわけですけど、その後もちょくちょく連絡をくれて、YeYeさんのリミックスをやったり、RALLYEから出た海外勢のライナーを書かせてもらったり。(South Penguinと)繋がったのは、森は生きているが解散した時に〈一段落しました〉みたいな感じで連絡したら、〈そういえばこういうバンドがいるよ〉と教えてもらって。その前から僕も “aztec!”は聴いてたので、超イケてるバンドなんだろうなと思ってたんですよ(笑)。でも、おもしろそうだと会ってみたら、思いのほかルサンチマンの塊みたいな人が作ってるとわかって(笑)」

――プロデュース的な仕事は、今回が初めてだったんですよね?

岡田「そうですね、自分のバンド以外では。吉田ヨウヘイgroupのミックスを手伝ったことはあったんですけど、ガッツリ自分でああしてこうして、というのは初めてでしたね」

岡田が参加した、吉田ヨウヘイgroupの2014年作『Smart Citizen』収録曲“ブールヴァード”
 

――プロデュースと言ってもいろいろあると思うんですけど、具体的には何をしたんですか?

岡田「録音はエンジニアの葛西(敏彦)さんにお願いして、アレンジとかはその場でやろうと思ったんですけど、僕は(スタジオの)違うブースにこもることになったんですよ。そもそも、録音も2日間しかなかったんですよね。レコーディングするのは全部で4曲だったので2日もあればいいかと思って、前の日に景気付けに呑みに行ったら、そこで食べた馬刺しに当たって、そのままスタジオで別ブースにこもるはめに(笑)。だから僕は、スタジオで何もやってないです」

アカツカ「そんなことないですよ(笑)。本当にいろいろやってもらいました」

岡田「〈こういう音を狙ってみようか〉とか、エフェクトの感じはいろいろ試してみたんですけど、そんな状態じゃ何も判断つかないから、まずは現状のままでみんなに気持ち良く演奏してもらって、あとは持ち帰ろうと、だいたいトイレにいました(笑)。だからプロデュース的なことは、一旦持ち帰ってから始まったような感じでしたね」

――アカツカさんからしたら、(岡田のプロデュースで)どこが一番変わりましたか?

アカツカ「やっぱりミックスダウンの段階で、録った音からリズムのキックとスネアの配置も変わってたりとか、本当に別の曲みたいにしてもらって」

岡田「〈こうしてよ〉って言おうと思ってたけど、お腹が痛くて言えなかったのを、後で勝手にいじりました(笑)」

――差し替える時のドラムはどんなイメージだったんですか?

岡田「808を買えない80sのニューウェイヴの人がマシーンみたいに叩いてるけど、いまっぽいビート・ミュージックの揺れじゃなくて、もっとインダストリアルなところで良い感じに人間の揺れもある、みたいなところを狙ってみたつもりです」

――そもそも岡田くんには、80sやニューウェイヴといったイメージがあまりなかったですけど。

岡田「いや、バンドが解散したあとにいっぱい勉強したんですよ。それにザ・バンドフリージャズだけ好きなわけじゃないです(笑)。80sの音楽とか本当に嫌いでしたけど、解散後にレコード屋で働きはじめたこともあって、聴きたくない音楽も聴かないといけなくなった。でも、〈改めて聴くと結構聴けるなあ〉とか、〈ブルックリンみたいな音って昔からあったんだ〉と発見も多くて。そうして僕のなかでニューウェイヴやポスト・パンクに対するモチヴェーションが最高潮に達した時に、ちょうど話が舞い込んできたんです(笑)」

――ちなみに、最近聴いたニューウェイヴで一番ピンときたのは?

岡田イン・カメラとか、ああいうガチガチで、甘みがないけどジャケだけカッコイイやつ(笑)。バウハウスも恥ずかしながら聴いたことがなかったし。あとは何だっけ、室内楽っぽい……ディス・モータル・コイル

――じゃあ初期の4ADですね。

岡田「そうですね、耽美なものはもともと好きだったので。そういうのとリキッド・リキッドとか、クラブっぽい文脈で再評価されている、勢いでフェラ・クティをやっているようなものをよく聴いてました」

イン・カメラの80年のシングル“Die Laughing”
リキッド・リキッドの83年のEP『Optimo』収録曲“Optimo”
 

――逆にアカツカさんのほうから、岡田さんにリクエストはありました?

岡田「〈SPKとコナン・モカシン〉みたいな、むちゃくちゃなやつが(笑)」

アカツカ「〈上手い具合に混ぜ合わせてください〉って(笑)。これとこれを掛け合わせたらカッコイイんじゃないかと思ったものを、自分は努力しないで岡田さんに投げた感じですね。あと、ゆらゆら帝国はずっと言ってました。ゆらゆら帝国こそ、実際にそういうことをやってのけた人たちだし。ノイズやインダストリアルの感じも残しつつ、日本語のポップスとして提示していて」

岡田「そうやってインダストリアルと言われても、これをどうインダストリアルにすればいいのかっていう(笑)」

アカツカ「曲がまず全然インダストリアルじゃないですからね。エッセンスとしての……思想としての(笑)。それでしかない。音にはなってないから」

SPKの83年作『Auto-Da-Fe』収録曲“Slogun”

 

同世代で新しい音楽を聴く人がいたから、そういうニュアンスを出せた(岡田)

――曲のストックは、EPを作る前からたくさんあったんですか?

アカツカ「いや、全然ですね。コンセプチュアルに作ろうとしないと曲も作れないと思ったんで。途中から〈こういう方向で行こう〉と決めたら、わりと曲が出来てきたんですよ。(EPの)最初の3曲は最近作った曲ですね」

――じゃあ最後の“throw”がいちばん古いんですか? この曲って、聴いた人が後で歌詞を見てビックリするような感じもあるじゃないですか。例えばランタンパレードみたいな。あの人もハードコア・パンク出身だから、音楽的にはソフトなことをやっていても、結構えげつないことを歌ってる。

アカツカ「確かにそうですね。“aztec!”みたいな曲を作った時も、自分がそういう音楽に慣れ親しんできた人じゃないっていう、後ろめたさというか……。だから絶対にパロディーを入れてやろうと思っていて。やっぱり馬鹿正直にそういうことはできなかったですね。ちょっとこう、遊び心を入れたり、距離を置いておかないと、全部が全部入り込んで楽しめない。それはありますね」

――だから出自としては結構ひねくれてるし、パロディーとして、あえてこういう音楽に寄っていったところがあると思うんだけど、出来上がったものを聴くと、意外と真っ当に受け取められてしまいそうな感じもして。例えば〈シティー・ポップ〉と括られちゃいそうな気もするんですけど、そういうところに対する違和感はないんですか?

アカツカ「僕はあんまりないですね(笑)」

――むしろ乗っかっていく、みたいな?

アカツカ「聴いてくれる人が増えるんだったら、それでいいかなと。本当に自分の括られたくないところに括られたら嫌ですけど、そのうち言われなくなると思うから」

――岡田くんから見たアカツカくんはどんな人ですか?

岡田「僕は〈ルサンチマンからは何も生まれないけど、動機にはなり得る〉とずっと思っているんですけど、初めて会った時に、そういうことを体現しているような古臭いヤツが今時いるんだなあと(笑)」

アカツカ「そんなに憤ってないですけど(笑)」

岡田「自分より年下の人と関わったのも初めてだったし、僕が一方的に思ってるだけですけど、近いことを考えてるんだなって。括られるのとかどうだっていいし、シティー・ポップにも一旦乗っとけと考えるようなタイプだったし……。あ、Mikikiなので音楽的なことを言いましょうか(笑)。最後の“throw”と前の3曲は全然違うけど、こっちのほうが後に出来たという話を聞いて思ったのは、コードが多い曲はいくらでも、誰にでも作れる部分があるんですけど、ミニマルな、例えば2コードで良いメロディーを、しかも展開があるように聴かせるのは難しかったりするんですよ。そこを難なくポンポンと作れてる。日本語でやってもちゃんとスマートに聴かせられる人はなかなかいないし、それが意図的なのかはよくわからないですけど(笑)」

アカツカ「嬉しいです、ありがとうございます」

岡田「最後に家に来てもらって、取りこぼした部分を録音してる時がいちばん楽しかったかな。体調も良かったし(笑)。歌だけ録るつもりだったんだけど、1曲出来たから入れちゃったみたいな」

――インストの“relax”のことですか?

アカツカ「そうです。あれを作ってる時がいちばん楽しかったですね。もともと僕がスロッビング・グリッスルが好きだって話をしたら、岡田さんが〈スロッビング・グリッスルの音が出るシンセがあるよ〉と。そのシンセを使って音を鳴らしていたんですけど、楽しかったので録音してみたら〈いいじゃん〉となって」

岡田「本当は“alaska”がフェイドアウトする時に、曲の終わりにスロッビング・グリッスルを入れてくれみたいな話をされて、〈いや無理でしょ〉と(笑)。でも一旦シンセのパッチングだけ済ませて、ヤバイ音が出せる状態にしておいて、〈とりあえず回しておくから適当に弾いて〉とやらせてみたら、ラップトップの編集も全然しないで、そのままリアルタイムの録音で、あれがちゃんと並んだんだよね。入りのところもクリックに合わせてないのにピッタリ合って」

スロッビング・グリッスルの79年作『20 Jazz Funk Greats』収録曲“20 Jazz Funk Greats”
 

アカツカ「あとは音源には入ってないですけど、いろいろ録っていて。カリンバとかも弾きましたね。インスピレーションで全部やろうって」

岡田「僕の家にある変な楽器をまとめて、とりあえず触らせてみたり。オートハープとか、12弦ギターも使ったかな」

アカツカ「いろいろやったなかで、あのシンセだけ残ったという(笑)」

――最近は岡田くんもソロとしての曲を作っているみたいですけど、今回の経験からのフィードバックはありそうですか?

岡田「それはもう、South Penguinの影響を受けてニューウェイヴをどんどん取り込んで……」

――全然思ってないでしょ(笑)。

岡田「ハハハ(笑)。でも今回のEPは、アカツカくんのような同世代で新しい音楽を聴いている人が周りにいたから、そういうニュアンスを出しながら作れたけど、森は生きているの場合は揃ったのがあのオッサン5人だったっていう(笑)。僕はPitchforkに載っているような音楽も好きだし、〈ウッドストック〉も好きだし、フリージャズも好きなんですよ。だけど純粋に自分一人になったから、いまの時代に自分にしかできないことをやろうと思ってます。全然売れなさそうな感じの曲がいっぱい貯まっていってますけど(笑)」

――SoundCloudに上がっているような曲ですか?

岡田「いや、もっとポップですね。この間、吉田ヨウヘイさんと久しぶりに会ったんですけど、デモを聴かせたら〈岡田くんは最近人と会ってないから、出来る曲がだんだんポップになってきてるね〉と言われて(笑)」

――人と会わないほうがポップになるんですか?

岡田「たぶん〈聴いてもらいたい〉っていう欲求が心のどこかにあるんですかね。だから、いまなら〈シティー・ポップ〉と全然言われたいです。むしろ括ってほしい(笑)」

――なるほど(笑)。最後になりますけど、何か言い残したことはありますか?

アカツカ「まあ、今日話したことは全部嘘ですね(笑)」

 


FUJI ROCK FESTIVAL '16
7月24日(日)26:00~〈ROOKIE A GO-GO〉に出演!
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South Penguin × Ancient Youth Club レコ発ライブ
日時/会場:2016年9月3日(土) 東京・渋谷O-NEST
出演:South Penguin/Ancient Youth Club水中図鑑The Chimney Sweeper
開場/開演:18:30/19:00
料金(1D別):前売/2,500円、当日/3,000円
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