ART-SCHOOLやacid androidとのコラボ・イヴェントも交えながら、今年5月から毎月開催されてきたTHE NOVEMBERSの対バン・シリーズ〈首〉は、9月11日(日)に東京・渋谷CLUB QUATTROで開催される〈首 vol.13 - Redder Than Red -〉で一区切りとなる。今回ゲストに迎えられたのは、フロントマンの小林祐介が〈ロックというものの原体験〉と語るなど、バンドに多大なる影響を与えたチバユウスケ率いるThe Birthday。世代やキャリアは異なるものの、共に結成11周年を迎えた実力派同士の2マンということで、白熱したステージになるのは間違いないはずだ。
今回はイヴェント開催を前に、チバと小林による対談企画が実現。〈思い出作りをするために共演するわけじゃない〉とかねてから公言している小林が、このタイミングでThe Birthdayとの共演を望んだのはなぜか。また、チバの目にTHE NOVEMBERSというバンドはどのように映っているのか。音楽評論家の小野島大氏を進行役に迎えて、じっくりと語ってもらった。
ちなみに、〈首 vol.13 - Redder Than Red -〉の前売りチケットはすでにソールドアウトしているが、THE NOVEMBERSは9月21日にニュー・アルバム『Hallelujah』をリリースしたあとに全国ツアーを控えている。片やThe Birthdayも、11月から12月にかけて全国12都市を回る〈“シャム猫の絶叫” TOUR 2016〉のほか、秋に多くのライヴを予定しているのでぜひ足を運んでみてほしい。
節目だらけだから、節目がないのと結局一緒なんだよ(チバ)
――お2人はそもそも面識はあったんですか。
小林祐介(THE NOVEMBERS)「初めてお会いしたのはdipのトリビュート・イヴェント※の時ですね。THE NOVEMBERSも出演させてもらったし、チバさんもdipトリビュート・バンドに参加されていて。小野島さんも出てましたよね」
※2012年8月に開催された〈dip tribute -9faces- RELEASE PARTY〉
チバユウスケ(The Birthday)「DJやってたじゃん」
――そうでしたね。あの時が初対面でしたか。
小林「その時に挨拶させてもらって。そのあとは僕がROMEO'S bloodでベンジーさん(浅井健一)と一緒にやってた時に、The Birthdayと対バンをやったり(2015年9月、福岡 Beat Stationにて)。あとはウチのメンバーのケンゴ(マツモト/ギター)が大ファンでライヴをよく観に行ってますね」
――なるほど。今回の対バンの話はどこから出てきたんですか。
小林「僕らがここ数か月、対バン企画を毎月開催してきたのとは関係なく、昔からいつかThe Birthdayと共演したいとメンバーとずっと話していて。今回の対バン企画は一旦9月が最終なんですけど、やはり最後は満を持してThe Birthdayがいいだろうということで、思いきってお誘いしてみようと」
――チバさんの音楽は昔から聴かれてたんですか。
小林「子供の時に、お兄ちゃんがミッシェル・ガン・エレファントが大好きだったんですよ。そこからずっと聴いてます」
――最近のThe Birthdayのライヴはどんな印象ですか?
小林「いやもう圧倒的というか……カッコ良くて(笑)」
チバ「(照れ臭そうに)困るね、こういうの(笑)」
――チバさんはTHE NOVEMBERSに対してはどういう印象を?
チバ「うーん……。最初のヤマジ君(dipのヤマジカズヒデ)のイヴェントの時……あの時のライヴはあまり覚えてないけど、その時か別の時だったか、4曲入りのCDを聴かせてもらって。なんだっけ、メンバーの上半身裸の写真が載ってる……」
小林「『Fourth wall』っていうミニ・アルバムですね」
チバ「あれ4曲だっけ?」
小林「あまり曲っぽくない曲も入ってるので、実質4曲ですね」
※本当は6曲入り
チバ「昨日聴いてきたんだけどな(笑)。ライヴはちゃんと観たことないと思うけど、音源はカッコイイと思って」
――対バンの話がTHE NOVEMBERSから来た時は?
チバ「いや、〈やろうよ!〉って。スケジュールが合うんだったらやろうと」
――対バンの申し込みはよくあるんですか。
チバ「うん。今年はなぜかすごく多いね」
――ワンマンもあるし対バンもあるし、フェスみたいな場もあるわけですが、それぞれの違いはどういうところにあるんですか。
チバ「まあ……ワンマンはワンマンで、長いじゃん。(演奏するのは)20曲くらいかな。そのなかで流れを考える。フェスとか対バンは短いからね。10曲とかそれくらい。そのなかで何を表現するかっていうのは考える。そういう違いはあるね」
――自分のなかの何を見せるか。
チバ「そうだね、きっと」
――20曲もあればやりたい曲は大体やれるけど、10曲だと絞り込まないといけない。
チバ「うん」
――選曲の基準ってあるんですか。
チバ「まあ、その時の気分じゃない?」
――対バン相手によっても変わったりするんですか。
チバ「変わんないねえ」
――今回だったらTHE NOVEMBERSのファンも来るから、そういう人たちに向けてここをアピールしようとか……。
チバ「ああ、オレそういうのはないなあ。わかんないんだよ(笑)。そんなこと考えたってどうしようもないし」
――その時にやりたい曲をやるだけ。
チバ「うん。あとは……対バンやる時は好きなバンドとしかやらないから、楽しくはあるよね」
――ちなみに今回はどんなセットリストを考えてますか。
チバ「まだ何も考えてない」
――いつもどれぐらいの時期に決まるんですか。
チバ「……前の日だね(笑)」
――なるほど、楽しみです。THE NOVEMBERSはここのところずっと対バン・シリーズをやってきましたよね。しかも大物や個性的な人たちも多くて、普段のワンマン・ライヴとは違う手応えがあるんじゃないですか。
小林「そうですね。僕たちも共演する場合は好きなバンドとしかやってないので、対バンのバンドを観るのが毎回すごく楽しみなんですよ。ステージに立つ時は、いつも通りの自分でやるのが一番カッコイイ、というつもりでやってるんですけど、やっぱり影響は受けるんですよね、いい意味で。僕らはセットリストは結構早いうちから考えるほうで。〈The Birthdayと一緒だからこんなモードで、こんな気持ちで臨もう〉〈こんな曲をやればこんなものが表現できるんじゃないか〉とか考えたりするんですよ。でも考えているうちに、結局いつも通りになるんですけど(笑)」
――なるほど(笑)。
小林「例えばこの曲は、チバさんに影響を受けたセンスで作ったとか、自分だけがわかってることってあるじゃないですか。そういう曲をひっそり入れてみたりとか。これまでの対バン企画でもそういったことは毎回ありましたね。影響は自覚的にも無自覚的にも受けているけど、結局はいつも通りの自分たちになる、という感じです」
――演奏する曲はその都度変えるわけですよね。
小林「変えてますね。でも、あーだこーだ考えつつ、最終的には(その時の)気分になっちゃう。気分で曲を並べて、あとから理由が付いてくることのほうが多いかもしれないですね」
――曲を選ぶ時に、チバさんたちに聴かせるために選ぶのか、The Birthdayのファンの人に聴いてもらいたいのか。
小林「あー、どうだろうな……。僕はThe Birthdayの人たちに聴いてもらう意識が強いですかね。ほかのメンバーがどう思ってるかはわからないけど」
――チバユウスケに向けて、オレのこういうところを聴けと。
小林「見てほしいですね(笑)。僕のロックというものの原体験は、やっぱり小学校の頃に出会ったベンジーさんとチバさんだったんです。そのあとにどんな思春期を過ごしても、そこからスタートしたんだなって思うし、大人になって、プロになって、改めてそう自覚することが増えたというか。いつまでも色褪せないし、何より2人ともいまだに第一線でバリバリでやっているじゃないですか。こんなふうに音楽と共に歳を取っていきたいなと思える存在は、そんなにいないんですよ。みんな途中でいなくなっちゃうし、格好悪くなってダサくなっちゃう。こういうふうに歳を取りたくないな、と思う人はいっぱいいるけど、その逆の典型が僕にとってはベンジーさんとチバさんなんですよね」
――それは時代が移ろっても信念を曲げない、変わらないことが良いのか、時代に応じて柔軟に変わっていく良さなのか。
小林「どうなんでしょうね。電車に乗ると風景が流れていくように見えるけど、実際に動いてるのは自分自身じゃないですか。だから、その都度で見えることが変わっても、見ている自分が変わったのか、相手が変わったのか、実はそんなにわかってなくて。でも、ベンジーさんやチバさんは、いつどんな時に見ても、少なくとも僕の目にはカッコイイものしか届いてないんですよ。だから、ダサイ奴が嫌いというよりは、カッコイイ人がカッコイイというシンプルなところかもしれないですね」
――小林さんから見て、いまのチバさんは小学校時代に見ていたチバさんと変わらない?
小林「カッコイイというところだけ変わらないですね(笑)。なんて言ったらいいのかわからないけど……」
チバ「(照れて)まずいなあ…(笑)」
小林「なんというか……マンガから出てきた人みたいな感じですね、ベンジーさんもチバさんも。カッコイイのもあるし、纏ってるものとか。この人は本当にどこから来たんだろうって考えたら、〈マンガ〉っていうのが一番しっくりくるような(笑)。あとは映画とか」
――なるほど(笑)。
小林「音楽に勝ち負けがあるとして、〈勝つ〉ということが何を意味するのかと考えると、筋を通し続けることっていうのが唯一勝ちに近いものなのかなと。そういう美学や美意識とか、(本人たちのなかでは)変わっているのかもしれないけど、僕から見ると筋を通し続けていて、勝ち続けているように映る。貴重な、憧れの存在ですよね」
――変わらない信念がある、ということですか。
小林「仮に変わっていても、それが格好良く見える人と日和って見える人がいる。つまり、人間力ってことなんですかね。この人が言うことなら間違いない、と思えるかどうか。チバさんやベンジーさんは、ずっとそういう人たちであり続けている。だから、いちファンとしての信頼みたいなものがあるかどうかってことかもしれないですね。時代や環境が変わってもそう思えるかどうか」
――という、小林さんの言葉を聞いてどうですか。
チバ「ハハハハッ(照れ笑い)! すごい分析力があるねえ。言葉が上手いっていうか(笑)」
――チバさんを尊敬してます、憧れてましたとか、そういう若い人に出会う機会は多いでしょう。
チバ「うーん……まあね。あんまし考えてやってないからね。単純に、自分のやってきたことを評価してもらえるのは嬉しいよ。さっき小林君が言ってたけど、どんな音楽をやっていても、根本的なところは何も変わらないっていうかさ。昔やってたバンドも、あとから聴き直したり、何かで(曲が)かかってるのを聴いても、全然変わってねえなって思うし(笑)」
――どういうところが変わってないんですか。
チバ「それが難しいんだよな……。でも、やってることはほとんど変わってねえと思うよ(笑)」
――昔から同じことをやってる人はほかにもいっぱいいるだろうけど、時代に取り残されてダサくなってしまう人もいる。何が違うんですか。
チバ「わかんないけど……意外に敏感なんじゃないの?」
――敏感?
チバ「時代に対して。何が起こりそうとかさ、そういうのあるじゃん。なんとなくね。そういうのをどっかで感じてるんじゃないかなって思うよ」
――長いことやってきて、節目と思う時っていつでした?
チバ「節目? 節目ねえ……節目だらけじゃない(笑)? 節目だらけだから、節目がないのと結局一緒なんだよ」
――そんなに器用なほうでもないし。
チバ「器用じゃないねえ」
――その都度、自分のやりたいようにやるしかないし、実際にそうやってきた。
チバ「うん。そうやってやり続けるしかないからね」