INTERVIEW

Yasei Collective松下マサナオとDJ大塚広子が語る、〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉がこれからの音楽シーンにもたらす役割

Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2016特集:最終回

Yasei Collective松下マサナオとDJ大塚広子が語る、〈Blue Note JAZZ FESTIVAL〉がこれからの音楽シーンにもたらす役割

いよいよ今週末、9月17日(土)に神奈川・横浜赤レンガ野外特設ステージで開催される〈Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2016〉(以下:BNJF)。総力特集の最終回では、〈BNJF〉初の試みとなる〈THIS IS OUR MUSIC powered by MINI〉をフィーチャー。〈ジャズの今、ジャズの未来〉をテーマに、ホット・サーディンズYasei CollectiveEma with セサル・ロペスRM jazz legacyDJ大塚広子と気鋭の5組が出演するこのステージは、なんと観覧無料。フェスのチケットを持っていなくてもライヴを楽しむことができる。この新たな施策からも、未来を担う才能をフックアップし、新しいジャズ・フェスの在り方を提示しようとする意図が窺えるはずだ。

そこで今回は、Mikikiでもお馴染みYasei Collectiveのドラマー・松下マサナオと、RM jazz legacyの総合プロデュースを手掛け、〈BNJF〉にDJとしても出演する大塚広子の2人に、〈BNJF〉の魅力と出演の意気込み、さらにこのフェスが現代と次世代の音楽シーンにもたらす役割について、希望的観測も含めつつ語ってもらった。 *Mikiki編集部

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取材協力:Brooklyn Parlor SHINJUKU

 


このステージだからこそ聴けるバンドの音がある、その特別感も魅力

――かねてより交流のあるお2人でますが、お互いの印象は?

大塚広子「Yasei Collectiveはフェスでも盛り上がれるし、聴き込めば聴き込むほどハマれる。マサナオさんのドラミングは特に。そういうセンスのあるバンドにこれまで出会ったことがなかったので、めちゃくちゃイマっぽい音楽だと思いました。ヤセイとは2年くらい前に出会ったんですけど、わたしもクリス・デイヴや、 マーク・ジュリアナの来日公演のDJをしていたので、彼らとの共通の話題になったりその頃すでにいま盛り上がってるジャズの潮流にハマっていて、早いなと」

松下マサナオ「嬉しいです」

――早いって感じでしたよね。

大塚「そうそう。海外のミュージシャンの真似ではなくオリジナリティーがある。縦ノリで踊れたりもするし。そういう要素のあるバンドはなかなかいないと思う」

Yasei Collectiveの2016年作『Light』収録曲“Lindner”のライヴ映像
 

――マサナオさんは、大塚さんのDJはどう思いますか?

松下「とりあえず、最初聴いた時はめっちゃマニアックだと思いました。写真で顔しか見たことがなかった時は、いわゆるクラブ・ジャズをかけたりしてるんだろうなと思ってたから(笑)」

大塚「ハハハハハ(笑)」

松下「そうしたら、めちゃめちゃディープな曲ばっかりかけていて。菊地成孔さんのDJを初めて聴いた時と同じような感覚でした。菊地さんとはこの間も一緒になって、その時は映画に合わせてどんどん選曲していくDJだったんだけど、会場にいたお客さんの7割以上は知らない曲だろうなというものばっかり(笑)。アンダーグラウンド志向なわけじゃないけど、その感覚でカッコイイことをやろうとしているのがいまでも出ていて、そういう感じが僕は大好き」

――RM jazz legacyはどうですか?

松下「仲間がやってるバンド、みたいな(笑)」

大塚「本当に初期の頃、mabanuaさんが入ってやるようになったくらいの時にマサナオさんをライヴへ誘ったりしましたよね」

松下「その時は行けなかったんだけど。でも、今度10月に一緒にやるんですよね」

大塚「10月9日(日)に〈ARK HiLLS CAFE:JAZZ FESTIVAL〉でRMのライヴをやるんですが、そこではマサナオさんにドラムを叩いてもらうんです。セカンド・アルバムを作るにあたって気鋭のドラマーを入れたくて、マサナオさんにオファーしているんですが、その関連でレコーディングと併せてライヴも一緒にできたらと思って」

――お2人とも、ジャズの要素を採り入れつつ、これまでになかった感じの生演奏を聴かせるバンドをやっていますよね。

松下「各々のヴェクトルは違いますけど、そうですね。僕にとってジャズというものがカッコイイ音楽の中心にあって、そのカッコイイものの周りにある要素を、自分たちの使いたい部分だけ使ってる。それが往年のジャズ・ジャイアンツやそのファンたちにどう見られても、それは別にいいかなと。RMも同じように4ビートの曲なんてほとんどないし、でもジャズじゃないかといえば……。ジャズでもなんでも、やっぱり変わっていかないものは不自然だと思うんですよ。もちろん、変わらずにやり続けているカッコ良さも絶対的に認めなくちゃいけない。そこはちゃんとわかってやっているつもりです」

RM jazz legacyの2015年のライヴ映像。メンバーはライヴごとに流動的で、〈BNJF〉には類家心平(トランペット)、坪口昌恭(キーボード)、田中Tak拓也(ギター)、守家巧(ベース)、横山和明(ドラムス)、山北健一(コンガ)が出演する
 

――RMはよりジャズというものを押し出していますよね。

大塚「そうですね、やっぱり一緒にやるメンバーによってちょっと変わりますけど、あえてジャズの要素を入れてみよう、みたいなのはありますね」

松下「やっぱり類家心平さん(がポイント)って気はしますね」

――類家さん、坪口昌恭さんって感じですね。

大塚「もちろんその2人は押さえつつ、それ以外のメンバーでどこまで崩すか、遊べるかを考えていますね。類家さんと坪口さんがいるからこそ、その他の人たちが自由にやってもジャズという範疇に収まっているんじゃないかな」

――スナーキー・パピーのように、ジャズの要素は入っているけど自分たちはジャズだとは思っていない、みたいな、ライヴ・バンド然としたバンドが増えていますよね。

松下「ライヴで再現できなければジャム・バンドは意味がないですからね。僕らもレコーディングよりもライヴのクォリティーのほうが高い感じで常にいたいと思います」

大塚「ヤセイは絶対ライヴで観るべき!」

――ちなみに、〈BNJF〉は〈ジャズ・フェスティヴァル〉なわけですが、今回はお2人ともどういうプランでライヴに臨みますか?

松下「(大塚に)何かあります? いつも通りですよね?」

大塚「うん、いつも通りですね(笑)」

松下「やってみないとわからないですけどね。最近はバンドのセットをフロア・ライヴみたいな感じに組んで、4人が向かい合って黙々と演奏しているんです。今回のステージにそのセットが乗るかはわからないんですけど、そういった僕らの様子を、来場するお客さんがどう思うかに興味があります」

大塚「ヤセイのステージングやセットの組み方には驚かされますね。斬新というか、ありそうでないから」

松下「僕らは逆に、フェイドイン/フェイドアウトとか、スクラッチで繋げたりというような、DJ的な曲と曲の繋げ方を意識してやっていますよ」

大塚「考えてみたら、いまのヤセイのセットはフロアの真ん中にセットを組んで、その周りをお客さんが取り囲んでるわけじゃないですか。それはお客さんからしたら、クラブで音楽を楽しんでるのと同じ感覚な気がするから、DJと通じるものがあるかもしれませんね」

松下「それにしても、僕らが出演する〈THIS IS OUR MUSIC powered by MINI〉は、無料のステージというのもイイですよね。ショウケース的に気鋭のバンドがたくさん出てくるというのがイイ」

――ヤセイやRM、大塚さんのDJ以外にも、古き良き時代のビッグバンド・ジャズを軽やかに再解釈したNYのホット・サーディンズや、新星シンガーのEmaとキューバン・ジャズの大御所サックス奏者であるセサル・ロペスの共演と、野外で聴いたら気持ち良さそうな出演者が揃っている。

ホット・サーディンズの2016年作『French Fries & Champagne』収録曲“Running Wild”
 
セサル・ロペスがプロデュースを手掛けたEmaの2016年のカヴァー・アルバム『Respirar』収録曲“I LOVE YOU”
 

松下「そうなんですよ。あとは欲を言えば、日本のジャズ・シーンを作ってきた人たちのトリオとかが1組くらい出てきたらおもしろいなと思ったけど。例えば大坂昌彦さんのトリオみたいな」

――あぁ、オーセンティックなジャズをやる方たちが。

松下「そう。さらにコンテンポラリーなシーンを牽引してきた人たちも出て、そして俺らみたいなバンドもいる、みたいな。とはいえ、来年以降も〈BNJF〉はどんどん規模も大きくなっていくだろうし、期待したいところですね」

大塚「ほんとですね アコースティックなスタイルやクロスオーヴァーしたジャズが、もっともっとコラボできるような。RMもメンバーそれぞれのリーダー・バンドや参加しているバンドの音は、正統派なジャズ・スタイルだったり、逆にジャズじゃなかったりしますけど、〈フジロック〉の時のようにRMではそれぞれが混ざり合った形になって、とても盛り上がります。このステージだからこそ観れる、聴けるバンドの音があって、その特別感も魅力なんじゃないかな」

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