INTERVIEW

この世代ならではの表現で世界に衝撃を与える! WONKが語る、東京発〈エクスペリメンタル・ソウル〉の神髄

WONK 『Sphere』/タワレコメンに迫りコメン【第4回】

タワーレコード・スタッフがブレイク前のアーティストをピックアップし、総力をあげてプッシュする企画=〈タワレコメン〉に選出された作品から、 Mikikiが注目したアーティストをフィーチャーする不定期企画〈タワレコメンに迫りコメン〉。第4回は、2016年9月度の〈タワ レコメン〉に選出されたWONKが登場です。それでは、レッツ・迫りコメン!

ネオ・ソウルのディープなフィーリングとビート・ミュージック以降の先鋭性を併せ持つ4人組、WONK長塚健斗(ヴォーカル)、江﨑文武(キーボード)、井上幹(ベース)、荒田洸(ドラムス)という90~92年生まれのメンバーによって構成され、桁外れの演奏力とオリジナリティー溢れるライヴ・パフォーマンスによって、ジワジワとその噂を広めている彼らのファースト・アルバム『Sphere』が、ついにリリースされた。いまもっとも注目される若手ジャズ・ドラマーの石若駿や、DianKANDYTOWN)らラッパー陣もゲスト参加する今作には、自身の音楽世界を〈エクスペリメンタル・ソウル〉という言葉で表現するWONKのめざすものが色鮮やかに描き出されている。今回は、このバンドの背景を探ると共に、自身の表現を世界へと発信していくうえでのさまざまなヒントが隠されたメンバー全員のインタヴューをお届けしよう。

WONK Sphere EPISTROPH(2016)

日本人にしかできない音楽 ≠ 日本人にしかウケない音楽

――結成されたのは2013年ですよね。どのような経緯で集まったバンドなのでしょうか。

荒田洸「メンバーそれぞれ、通っていた大学も活動しているコミュニティーも違ったんですけど、僕が各々と知り合いだったんです。ベースの(井上)幹さんは唯一同じ大学で、ブラック・ミュージックのコピーをやっているサークルの先輩。キーボードの(江﨑)文武は違う大学のジャズ研で一緒で、長塚さんは大学の外で参加していたバンドで知り合いました。僕がリーダーで、みんなに声をかけた形です」

――結成にあたって、音の方向性ははっきりと決まっていたんですか?

荒田「最初は〈J・ディラ系譜のビート・ミュージックをバンドでやる〉というのがコンセプトでした。ただ、コンセプトはあったけど、2013年の時点で音そのものはいまほど固まってなかったと思います」

井上幹「1年間ぐらいかけて方向性を模索していたんですよ」

江﨑文武「バンド名を決めたり、ウェブサイトを作ったり、そういうことばかりやってましたね。音楽制作以外のことも含め、通常はレーベルがやるようなことも全部自分たちでやっていきたいと思っていたんです。そういう活動と並行して、スタジオでは曲のアイデアを固めていった。全員ジャズを通っているし、なかでもここ(江﨑と荒田)はジャズをしっかりやってきたこともあって、セッション感覚である程度のコード進行を作って曲は出来ちゃうんです。でも、当然それだけじゃダメなわけで、セッションを元にした大筋の方法論を作るのに1年ぐらい時間がかかりました」

J・ディラのトリビュート・ミックス
 

――WONKは〈エクスペリメンタル・ソウル〉を謳っていますが、この言葉はどこから出てきたんでしょうか。

井上「音楽活動をやっていくなかでは、実際に音を聴いてもらう以前にどういうことをやってるのかを(リスナーに対して言葉で)伝えないといけない場面が出てくるんですよね。それで自分たちの音に〈エクスペリメンタル・ソウル〉と付けようと。ただ、〈ソウル〉とは名乗ってるけど、ソウル・ミュージックそのものというよりも、心にグッとくる音楽をやりたいという意識があって。そういう意味での〈ソウル=魂〉。自由度の高い音楽をやっていきたいというイメージは(メンバー間で)共通して持っていたので、そこに〈エクスペリメンタル〉という言葉を加えました」

井上幹(ベース)
 

――ライヴではディアンジェロの“Africa”(2000年作『Voodoo』収録)もカヴァーしてますよね。〈エクスペリメンタル・ソウル〉としてのひとつの道標が、ディアンジェロの『Voodoo』あたりに設定されているようにも思えたのですが。

荒田「それはあるかもしれない」

井上「確かにそうですね。でも、僕は『Voodoo』やネオ・ソウルがルーツですけど、メンバーそれぞれ聴いてきたものが違っていて」

荒田「僕はヒップホップです。ジャズも聴きますけど、特にビート系のヒップホップが好きです」

江﨑「僕は入り口がクラシックで、中学生の時にビル・エヴァンスと出会ってからはずっとジャズ・ピアノの作品を中心に聴いてきました。学部時代はクラシックをしっかりやる音大にいたので、ヒップホップやファンクはほとんど通らずに、クラシックとジャズをやってきました」

江崎文武(キーボード)
 

――〈J・ディラ系譜のビート・ミュージックをバンドでやる〉というのがWONKの最初のコンセプトだったわけですけど、江﨑さんはそのコンセプトをどう捉えていたんですか。

江﨑「最初は〈J・ディラって誰?〉って感じでした(笑)。ジャズ研でよく話題に上っていたロバート・グラスパーが最近やっていることが、ヒップホップ的な文脈にあることは何となくわかっていたんだけど、自分自身はそこをあまり掘り下げていなくて。当時は静寂を大切にした音楽が好きで、ECMの音源ばかり聴いていたんです。でも、勧められてJ・ディラを聴いてみたら、ロバート・グラスパーがどういうところからアイデアを持ってきたのかがわかってすっきりした。だから、僕の場合はこのバンドを始めてからヒップホップやソウルを聴くようになったんですよね」

ロバート・グラスパー・エクスペリメントの2013年作『Black Radio 2』収録曲“Calls”
 

――クラシックとジャズにルーツのある江崎さんに、荒田さんが声をかけた理由はどこにあったんですか。

荒田「WONKを始める前、それこそジャズ研で文武といちばん最初にセッションした段階から、〈あ、これだな〉と思っていたんですよ」

江﨑「ジャズ研の部室でやったセッションはいまでも覚えています。〈お、スゲエ奴がいるわ〉と思えたし、やりたいことが見えるドラマーだなって……自分たちで言い合うのもアレなんですけど(笑)」

荒田「ハハハ(笑)」

――では、長塚さんのルーツは?

長塚健斗「中学に入った頃にバンドが流行っていたこともあって、ロック……それもハード・ロック/ヘヴィー・メタル。ベースの幹ちゃんとは高校の頃にエクストリームミスター・ビッグのカヴァー・バンドを一緒にやっていました。大学入学後にブラック・ミュージックと出会ってからジャズ・バンドを始めて、スタンダードを歌うようになったんです。その後にディアンジェロなどネオ・ソウル系の音を聴くようになって、その手のバンドを始めるようになりました」

――エクストリームのカヴァー・バンドでもヴォーカルをやっていたんですか?

長塚「そうですね……でも、まともに歌えてたのかなあ(笑)」

エクストリームの90年作『Pornograffitti』収録曲“Decadence Dance”
 

――WONK結成以降の話に戻ると、最初の段階からウェブサイトに力を入れていたそうですが、ウェブサイト上のテキストはすべて英文ですよね。歌詞も英語ですし、世界に向けてWONKを発信していこうというスタンスは最初から固まっていた?

江崎「〈日本人にしかできない音楽〉と〈日本人にしかウケない音楽〉がイコールになってしまってはダメだなと。そういうわけで、海外にも届くような作品を作っていきたいというのは、最初から固まっていました。でも、ただ向こうの音楽っぽいことをやりたいわけじゃなくて、まずは〈東京でこんな音楽をやってるバンドがいる〉ということをちゃんと海外に届けられる導線を張っておきたかったというか」

荒田「だから、ホームページのドメインも〈.tokyo〉にしたし」

――〈東京発〉という意識がはっきりあったということ?

江崎「そうですね。だから、バンド名のロゴにも〈Tokyo, Japan〉という文字を入れています。〈東京発〉ということはずっとアピールしていきたいと思ってますね」

WONKの2014年のライヴ映像
 

――2015年1月には『From the Inheritance』という4曲入りのミニ・アルバムをフリーでリリースされましたが、この作品をフリーで出した理由は?

荒田「とりあえずは(WONKのことを)知ってほしいということですよね。あと、これは配信のみの作品にしたんですけど、どういうリアクションが得られるかを実験してみたかったんです。フィジカルの売り上げが落ちているという話はどこでも聞くけど、実際どうなのかを自分たちで検証してみたかった」

江崎「ウェブの分析ツールを使って、どこの誰がダウンロードしたかという情報を収集するようにしていて、なおかつそこからどう拡散されていくのか見てみようと。どこの県が多いのか、意外と海外にも届いたな、といった分析をしたんです」

WONK『From the Inheritance』
 

――ダウンロード数はどうでした?

井上「思ったより行かなかったですね」

荒田「日本はやっぱりフィジカルだなと」

江崎「それが今回のアルバムのリリース方法に繋がっていて、(データよりも)先にフィジカルを出そうと。ショップにCDを並べてもらって、手書きのキャプションが付かないとシーンの土俵に乗れないんでしょうね」

井上「ショップに並べられることによって与えられる〈ちゃんとしたもの〉っていう印象が、日本ではまだ重要だということがわかりました」

江崎「ただ、アメリカやイギリスなど海外のリスナーも少しずつ伸びていたので、インフォメーションを英語で書くのはやっぱり重要だと思いましたね。それが功を奏したのか、LAやローマのラジオ局から突然メールが来たこともあったし。あと、〈フランス在住、ブラック・ミュージック好きの30代〉といったふうにターゲットを絞って、Facebookの広告を打ったこともあって、そこでのリアクションを踏まえても、僕らの音楽は海外で受け入れられるはずだという手応えを感じることはできましたね」

――そこまでやってるのは凄いな。活動方法に関してはかなり戦略的にやってるわけですね。

井上「音作り以外のところはかなり細かくやっています。でも、音に関しては各メンバーがやりたいようにやることが重要なので、そこは戦略的にはやっていません。音作りまで戦略的にやっていたら、こういう音は出てこなかったと思う」

――ところで、ライヴでは女性のコーラスやホーンが入ったりと、かなり大所帯でやることもありますよね。一方では4人だけでやることもあって、ライヴでの編成もフレキシブルに変えているんですか。

江崎「場所のスケール感に合わせて変えているんですよ」

荒田「あとはこっちの気分(笑)」

江崎「最近はコーラスやホーンの入った曲も増えてきたので、しっかりしたライヴをやりたい時はきっちりメンバーを揃えるようにしています。ただ、僕らはカフェみたいな場所でもやってきたので、どんなスペースでもできるバンドにはなりつつありますね」

井上「3人でやったこともあります(笑)」

江崎「僕が日本にいないことがあって、その時は僕以外の3人でやってもらいました。それが最小人数かな(笑)」

WONKの2016年のライヴ映像
 
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