INTERVIEW

蔦谷好位置やShingo Suzukiらが新たな表情引き出した奇蹟の歌声―Uruが麗しい潤い湛えた新シングル“The last rain”を語る

蔦谷好位置やShingo Suzukiらが新たな表情引き出した奇蹟の歌声―Uruが麗しい潤い湛えた新シングル“The last rain”を語る

奇蹟の歌声、ふたたび――穏やかに広がり、確実に浸透を見せるその存在は、麗しい潤いを湛えたニュー・シングルで、またしても心に降り注ぎ、染み渡っていく……

 

共有される歌

 去る9月10日、11日の両日。デビュー後初となったUruのライヴが東京グローブ座で開催された。〈デビュー後〉とは言っても、彼女が人前に立ってその歌声を披露したのは、それ以前も含めて数回だけ。自分のなかをまだまだ未体験の感覚が占めていたであろうその日のことを、Uru自身はこう振り返る。

 「緊張したのはもちろんなんですけど、普段通りのことを発揮するのは難しいんだなって思いました。ライヴが始まって最初の5分ぐらいは、もう……。2Daysというのが初めてだったので、2日目は緊張しないかなって思っていたんですけど、全然そんなことなくて(笑)。場数の問題じゃないのかもしれないですけど、良い緊張感のなかでやれるようになりたいですね」。

 それでも彼女の歌、歌声は、ステージを静かに見つめる人たちの心にしっかりと届いていた。本人の感想とは裏腹に、抑えきれないほどの緊張のなかでも丁寧に、心を込めて歌を届けているUruという〈人〉に、観衆はどんどんと惹きつけられていった様子だった。アンコールの最後に歌われたデビュー・シングル“星の中の君”では、彼女の求めに応えて会場全体での大合唱。〈物静か〉な楽曲だけにちょっと意外な展開だったが、印象的なシーンだった。

 「すごく好きな曲っていうのもありますけど、ブログのコメントで〈カラオケでも歌ってます〉っていう書き込みを見たので、みなさんが歌っているのを聴きたい、一緒に歌えたらいいなと思っていたんです。しんとした雰囲気の中だったので、歌ってくれるかな?っていう心配はあったんですけど、歌っていただけて嬉しかったです」。

 この、歌を〈共有する〉という感覚は、Uruというシンガー・ソングライターのキャラクターを形作っている大きなファクターだろう。作り上げた世界観に〈共感を求める〉というのとはまた違って、彼女の歌う世界観が聴き手の日常にとってまったくのフィクションであっても、歌という〈響き〉を通じて心を通わせたいと思わせる意志……。YouTubeにアップしたカヴァー曲の歌唱が反響を呼び、デビューのきっかけを掴んだ彼女だが、そもそも人前で歌うことが苦手。それが友人の誕生会で〈歌わされた〉時に予想外の喝采を浴び、自信をつけたところから歌い手として目覚めはじめた――“星の中の君”リリース時に聞いたエピソードも、なるほど、となる。

 「自分でギターを弾いたりピアノ弾いたり、音楽好きな方ってたくさんいるじゃないですか。いつか叶うなら、大きな体育館みたいな場所で楽器を持ち寄ってもらって、みんなで合奏や合唱ができたらいいなって。大勢で歌うのは楽しいですし、私の歌をみんなで歌ってほしいっていう気持ちはありますね。自分の歌が届いていくということは私自身もちろん嬉しいんですけど、喜んでくださる方の声を聞くことのほうが嬉しいです」。

 

たっぷり泣いてほしい

 さて、そんな“星の中の君”から早4か月。「ものすごく早かったなと思います。実際には4か月ですけど、デビューできたっていうことを実感するまで時間がかかったので、私自身は1週間ぐらいの感覚ですね」という時間を経て、Uruのセカンド・シングル“The last rain”が届けられた。表題曲としては初めて彼女自身が詞、曲を手掛けた楽曲。蔦谷好位置による荘厳で美しいアレンジが施された悲恋のバラードとなった。

Uru The last rain ソニー(2016)

 「2年前ぐらい前に書いていた曲で、そこから何度かサビのメロディーを変えたりしています。この曲は、デビューに向けて動き出してから初めて作った曲なんです。“星の中の君”に収録した“すなお”は、それよりも前に書いた曲で。そういう意味では〈これから〉っていう自覚が前回よりあったかもしれないですね。ちょうど雨の日に浮かんできた曲で。いつもはサビから作りはじめるんですけど、この曲はイントロから作りはじめて、そこから広がっていったメロディーを書いていった感じですね」。

 ジャケットが物語っているように、憂いのある色彩が歌とともに浮かび上がってくる“The last rain”。〈もう会えなくても あなたを愛した この想いは忘れない〉――胸を打つ言葉とメロディーに、他人事とは思えなくなるぐらいの切なさを掻き立てられる。

 「男性も女性もそうだと思うんですけど、相手のことがまだ好きなのに終わってしまった時っていうのは、自分の気持ちを優先しがちだと思うんですね。それを受け入れるまでに時間がかかって、時が経つにつれて前向きな気持ちに変わっていく――その時間の流れを5分間のなかに詰め込んでみたんです。悲しい時はあえて悲しい曲を聴いて悲しみを溢れさせるように、悲しいことがあった方にはこの曲を聴いてたっぷり泣いて、スッキリしてもらえたらいいなあって思います」。

 ところで歌詞の世界は実体験によるものなのだろうか?

 「友達から聞いた話とかが歌詞の元になることが……とくに恋愛の歌はそうなりますね。私自身のことだったら、人に聴かせられるような歌にならないかもしれないですね(笑)」。

 カップリングの“ホントは、ね”は、川村結花による書き下ろし。絶妙な言葉のセンスと音譜の並べ方で、女性がいじらしくつぶやいている様がリアルに浮かび上がってくる、こちらもバラード・ナンバー。

 「川村さんが曲を書かれた“夜空ノムコウ”は、大好きでYouTubeでも歌っていたので、曲をいただけて感激しました。曲作りの段階で川村さんとは直接やりとりはしていないんですけど、とにかく、とても良い曲を書いていただけたな、って。でも、メロディーがすごく難しくて、耳にすぐ馴染むんですけど、歌ってみると難しかったんです。メロディーの作り方も、私だったらこう行ってしまいそうだなっていうところを私とは違ったアプローチに持っていかれるので、勉強になりましたね。他の人に曲を作っていただくことはおもしろいですし、幸せです」。

 もう一曲のカップリングはShingo SuzukiOvall)プロデュースの“Sunny day hometown”。こちらは作詞のみUruが担当。例えばキャロル・キングであるとか、70年代のシンガー・ソングライター風情を漂わせた温かみのあるサウンドを聴かせるアップテンポのナンバー。

 「曲をいただいた時、すごく晴れた日に、口笛を吹きながらスキップしている画が見えてきて。この歌詞は、仕事で上京して、たまに心の癒しを求めて実家に帰るっていう、その道中をイメージしたものなんです。〈これから家に帰るんだ!〉ってウキウキした気持ちで音楽を聴きながら、地元の景色とか友達の顔を思い浮かべて。作っていて2番以降の歌詞がなかなか思い浮かばなくて、私が通っていた小学校や中学校の周りを実際に歩いてみたりもしたんです。こんな場所あったっけ?とか、この道ってこんなに狭かったかな?とか思いながら、景色は変わってもずっと変わらない懐かしい〈匂い〉を感じたりしながらメモをとって」。

 このセカンド・シングルをもって、パッケージとして世に出たオリジナル楽曲はこれでようやく6曲。まだまだミステリアスな部分も多く、現段階で知ることのできる〈素顔〉がぼんやりであっても、〈耳に届く歌声〉で真価を発揮してきたアーティスト・Uruの歌は、ここでまた多くの人の心に染み渡っていくに違いない。もっともっとたくさんの歌が聴きたい――そんなじれったさも聴き手に芽生えさせながら。

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