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そして脱皮の時期へ

 そして、〈いままででいちばん肩の力を抜いて作った〉というニュー・シングル“街の報せ”は、そうしたさまざまな活動を続けてきた2016年のceroをそのままパッケージしたような一枚。『Obscure Ride』期の締め括りであると同時に、次の展開を垣間見せる作品だと言っていいだろう。表題曲の“街の報せ”は荒内による作曲で、もともと『Obscure Ride』のタワレコ特典音源に収録されていたナンバーだったが、トランペットに黒田卓也、トロンボーンにコーリー・キングを迎え、NY録音で新たな命が吹き込まれた。

 「今回のコンセプトをあえて言うなら、〈やったことがないことをやろう〉だったんです。いままではミックスも全部自分たち、もしくは得能(直也)さんと共同でやってましたけど、今回は奥田泰次さんにお願いしたり、“街の報せ”も初めてホーンのフレーズをすべては自分で作らずに、黒田さんに投げてみたんです。そうしたら、RHファクターの“Crazy Race”のオマージュっぽいフレーズが入ってたり、ホントに素晴らしかったんですよね」(荒内)。

cero 『街の報せ』 KAKUBARHYTHM(2016)

 髙城作曲の“ロープウェー”では、ファンクやソウルをベースとしたビート・ミュージックをさまざまな名義で発表するsauce81と共にトラックを制作。橋本作曲の“よきせぬ”は唯一のバンド録音で、今後の方向性を予感させる一曲に仕上がっている。

 「僕、今年の前半はちょっと体調を崩しちゃってて、リハビリ的に、何かをモチーフにして曲を作ってみようと思ったときに、今回のジャケットになってる滝本淳助さんの写真を思い出して、それを元に作ってみたんです。なので〈新しいceroをご覧あれ〉みたいな感じではまったくなくて。トラックも原型は自分で作ったけど、結果的にsauce81さんにお願いすることになったし、曲自体めっちゃ手癖で作ってるんですけど、それはそれでいいなって」(髙城)。

 「“よきせぬ”に関しては、今回の3曲のなかではいちばん後出しだったので、先の2曲と比べてテンポを遅すぎず速すぎずにして、全体が良い起伏で流れていくように意識して作りました。また、新しいメンバーでツアーをすることも決まっていたので、その編成内でできる曲を作ろうと思って、定番の管楽器は断腸の思いで抜きました(笑)」(橋本)。

 現在は光永渉と厚海義朗というリズム隊に加え、トランペットに古川麦、パーカッションに角銅真実、キーボードに小田朋美を迎えた新編成で〈MODERN STEPS TOUR〉を開催中。充実した1年半を経て、次のステージへと向かうバンドの姿をきっと感じることができるはずだ。

「ceroってアルバムごとに編成が変わってて、解散と再結成を繰り返してるようなバンドなんですよね(笑)。別に〈次のアルバムに向けて変えよう〉って話し合って決めてるわけではなく、バンドのバイオリズムがあって、それを何となく察知したんだと思うんです。なので、また脱皮の時期を迎えつつあるんじゃないかと思いますね」(髙城)。

 

ceroのライヴBD/DVD「Outdoors」(KAKUBARHYTHM)