目一杯の〈好き〉を抱えてソロ・デビュー!

 「3歳から習っていたクラシック・バレエがきっかけで人前に立つことが好きになって。母とお婆ちゃんがピアノをやっていたので子供の頃に教わったり、ハープも趣味で練習しています」。

山崎エリイ 全部、君のせいだ。 コロムビア(2016)

 そうしたお嬢様なエピソードを披露しながら屈託なく微笑む山崎エリイ。2011年に〈ホリプロタレントスカウトキャラバン〉のファイナリストに選出され、2013年に声優としてデビュー。翌年には木戸衣吹と共に声優ユニットのevery♥ing!を結成し、音楽活動にも勤しむ19歳だ。かねてより歌唱力の高さに定評のあった彼女が、このたびファースト・アルバム『全部、君のせいだ。』でソロ・アーティストとしての第一歩を踏み出した。

 かつて、自身がMCを務めるラジオ番組のテーマ曲をソロ名義で歌ったことはあるが、今回収録された11曲は本人が制作会議にも参加し、本作のために新しく仕立てたもの。例えば“cakes in the box”は「『ローゼンメイデン』シリーズが大好きで、(主題歌を担当していた)ALI PROJECTさんの曲もすごく聴いていて、そういうゴシックな雰囲気の曲を歌いたい」と提案して作られた、マスカレードな世界観のオーダーメイド品。兄の影響で最近聴いているというEDMのテイストが注入されたカワイイ系ダンス・ポップ“Zi-Gu-Za-Gu Emotions”なんて曲もあり、とにかく彼女の〈好き〉を目一杯に詰め込んだ内容だ。80年代のアイドルが大好きで、前述のオーディションでも松田聖子“天使のウィンク”を歌ったという憧れの気持ちは、佐藤清喜microstar)が作/編曲したドリーミーで甘酸っぱいミディアム“雨と魔法”にも表れている。

 「背中をそっと押してくれるような歌詞が、高校時代に同級生の女の子が公園で泣いてしまって、ブランコに乗りながらずっとなぐさめていたときの気持ちと似ていて。初めて歌入れのときに泣いちゃいました(笑)」。

 さらに、「中森明菜さんとグループ・サウンズを混ぜた感じ」という言葉そのままのアダルトな歌謡ロック“Lunatic Romance”、フワフワと重ねられたコーラスが最高にスウィートな“ドーナツガール”、家族のことを思い浮かべて歌ったという温かなバラード“My first love”など、個性豊かな楽曲がズラリ。甘く可愛らしい声質を活かし、恋に恋する少女にも妖艶なプリマにも変じる巧みな歌い分けは、曲ごとに歌の世界観をしっかりと作り込み、歌唱法も自身で試行錯誤しながら細かく調整していった賜物だ。

 「自分の声を聞くお仕事に就いたので、余計に自分の声質とか、得意不得意とか、今後やりたい歌い方を考える時間が増えて。今回はそれを試した感じもあります」。

 そして、アルバムのリード曲でもある“全部キミのせいだ”。メルヘンチックに弾むサウンドと共に描かれるのは、〈キミとボク〉が出会う夢の世界。「鏡の国のアリス」をイメージしたというMVには、白い服を着た〈いまの自分〉と紫のドレス姿の〈なりたい自分〉――ふたりの山崎エリイが登場する。

 「この曲を最初に録ったんですけど、いちばん難しくて。色で表すと透明というか、最初はどう表現すればいいかわからなかったんです。誰かと出会ってワクワクしている気持ちなのか、それともいま悩んでいる自分がいて、別の世界に自分の望んでいる誰かがいて、その人に近付きたいという憧れ目線なのか」。

 そう、この曲では彼女が新しいファンと出会ったとき、そして新しい理想の自分を見つけたときのドキドキが同時に表現されているのだ。

  「アルバムはいまの見せたい自分と、チャレンジしたい自分、なりたい自分をギュッと詰めた感じで。今後、自分の成長次第で変わっていく曲が多いと思うので、ひとつひとつを大事に歌っていけたらと思います」。

 

山崎エリイが参加したキャラソン作品を一部紹介。