現代ジャズの充実ぶりを伝える傑作が、またひとつ新たに届けられた。黒田卓也(トランペット)、西口明宏(サックス)、宮川純(キーボード/ピアノ)、中林薫平(ベース)、柴田亮(ドラムス)によるMEGAPTERASが、本日2月15日にファースト・アルバム『Full Throttle』をリリースした。匠の技を随所でアピールしつつ、グルーヴィーな演奏そのものは実に取っ付きやすく、広い層にアピールしそうな一枚。黒田が作曲したタイトル曲のダイジェスト版ミュージック・ビデオからも、このバンドの勢いが伝わってくるはずだ。
躍動的な2管をフロントに、メロウな鍵盤やR&Bを咀嚼したリズム・セクションは、黒田のソロ作からの延長線上とも言えそうな趣。しかし、このMVで聴ける演奏の続きには、スペイシーなシンセが挿み込まれたあと、ダブ的な音像を纏ってもう一盛り上がりするという、別々の2曲を繋げたような展開が用意されている。そういった攻めのアイデアを気持ち良くスリリングに聴かせるところにも、メンバー各自の確固たるプレイヤビリティーを感じずにはいられない。
NYのニュースクール大学出身の黒田と、バークリー音大で知り合った西口と柴田、さらに彼らと同世代の中林と、一回り若い宮川純という日米のジャズ・シーンで活躍する精鋭が集ったMEGAPTERASが結成されたのは2011年。そこから自主リリースやライヴ活動を重ねたあと、2016年の秋にNYへと渡り、現地のミュージシャンも交えて『Full Throttle』の制作が行われた。
本作にはネオ・ソウルを経由したサウンドやエレクトロニック・ミュージック的なアプローチに加えて、昨年の来日公演も盛況だったNYの女性シンガー・ソングライターであるカミラ・メザを迎えたフォーキーな歌モノ“Love And Guts”や、ストリングス・クァルテットを伴った優雅な“Signs”、スナーキー・パピーの一員であるパーカッショニストの小川慶太が参加したアフロビート“Snail's Pace”まで、5人それぞれが作曲したヴァラエティー豊かな楽曲が収録されている。さらに、プロダクション面でも飽くなき執念を見せており、エフェクターやシンセ・パッドを駆使したテクスチャー/立体感へのこだわりや、細かいニュアンスを使い分けた演奏の妙は、ヘッドフォンでじっくり聴き込んでみたくなるはずだ。
次々と名盤がリリースされる今日のジャズ・シーンにおいても、一際眩しい輝きを放つ本作の完成度は、各々がリーダー・バンドを率いて活躍する5人の、MEGAPTERASに対する意気込みの表れとも言えるだろう。若き実力派ジャズ・ミュージシャンたちの快進撃は、ここからさらに加速していきそうだ。