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姉妹ならではの阿吽の呼吸。待望の初共演盤が満を持して登場。

 ソリストとして第一線で活躍するだけでなく、定期的に共演を重ねている児玉麻里姉妹。特にラ・フォル・ジュルネ(LFJ)では第2回からソロと併せデュオとしても毎年出演し、バッハメシアンエトヴェシュなど、様々な連弾・2台ピアノ作品を聴かせてくれている。しかしながらこの2人、意外にもデュオとしてのアルバムはこれまで出していなかった。したがって今回は、満を持しての姉妹初共演盤となる。

児玉麻里,児玉桃 チャイコフスキー・ファンタジー PentaTone Classics(2016)

 チャイコフスキーの3大バレエ音楽といえば2012年のLFJでも《くるみ割り人形》を披露してくれていたが、その時はエコノム版での演奏だった。今回の録音ではラフマニノフアレンスキー(世界初録音)、ドビュッシーランゲリの連弾用の編曲を用いている。

 それぞれの編曲者の個性はどのように出ていると感じられましたか?

 「ラフマニノフは彼特有の、深い地の底から響いてくるような、悠久の大地というテイスト、ドビュッシーはハーモニーを巧みに使った軽めのタッチになっていますね。アレンスキーは、原曲のオーケストレーションが素晴らしくが繊細かつ緻密に描かれているので、その分、徹底的に考えて編曲しています。きわめて複雑に組み立てられていて、細部がとても綺麗にできている建物のような感じ」(麻里)

 チャイコフスキーの作品は特に色彩が重要だと思いますが、ピアノで彼の作品を表現するにはどのような工夫が必要なのでしょう?

 「それがやはり難しいところです。ピアノは大抵のことはできる楽器ですが、それでもこの作品を1台でやるのは、たとえば下がピッツィカートで、上がレガートといった場合、ペダルの問題で無理なんです。どれだけやっても、どこか妥協せざるを得ません」(麻里)

 それで連弾ではなく、2台で演奏されたのですね。

 「実は、相手にペダルを任せて自分は手だけ弾くというのもものすごく難しいことなんですよ」(桃)

 「鼻半分で息をしながらマラソンするみたいな感じ(笑)」(麻里)

 「もちろんラヴェルの《マ・メール・ロワ》やシューベルトの曲など、1台のピアノでしか不可能なように書かれた作品もあります。しかし、色彩が細やかで、しかも音がとても多いチャイコフスキーの場合、オリジナルの魅力を損なわずに、それらを整理してクリアに聴かせるためには様々なグラデーションが必要です。その微妙なバランスを実現するには、やはりすべてを自分がコントロールしないといけない。そういった理由で2台のピアノにしました」(桃)

 続編も楽しみにしています。