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なぜコミュニオンズだけが〈オアシス×ストロークス〉という不可能を可能にしたのか? 久保憲司が特別な魅力を解き明かす

なぜコミュニオンズだけが〈オアシス×ストロークス〉という不可能を可能にしたのか? 久保憲司が特別な魅力を解き明かす

テン年代になったあたりから、アイスエイジの台頭で世界が注目する音楽磁場となった、デンマークはコペンハーゲン。同地の新世代として話題を集めているのが、20代前半の4人組であるコミュニオンズだ。2014年の結成直後から〈ストーン・ローゼズ×リバティーンズ〉と称された蒼く眩いサウンドが、耳の早いインディー・リスナーを魅了。今年の2月にリリースしたファースト・アルバム『Blue』では、力強さとスケール感を増したロック・サウンドがそれまで以上に幅広いリスナーからの支持を集め、初来日を果たした〈Hostess Club Weekender〉でのパフォーマンスも、オープナーとは思えないほど多くの聴衆を熱狂させていた。さらに、先日〈SUMMER SONIC 2017〉への出演も発表され、今後ますます新たなロック・スターとしての地位を駆け上がっていくことは間違いない。

リアム・ギャラガ―を彷彿とさせるマーティン・レノフの粘り気のある歌声と圧倒的な存在感を放つメロディーから、オアシスを引き合いに出されることも多い彼ら。しかし、これまで星の数ほど現れては消えていったオアシス・ワナビーとは一線を画すポテンシャルを感じさせるのも確かだ。では、なぜコミュニオンズだけが特別たりえているのか? オアシスやニルヴァーナなど数多くの伝説的なロック・バンドを撮影してきたカメラマンにして、昨年には「久保憲司のロック千夜一夜」を刊行するなど音楽ライターとしても活躍している久保憲司に、氏曰く〈不可能を可能にした〉という彼らの魅力を教えてもらった。 *Mikiki編集部

COMMUNIONS Blue Fat Possum/Hostess(2017)

 

びっくりするでしょう、オアシスとストロークスを融合させたバンドがいるんですよ

ちょっと前(6年前くらいかな)にアラン・マッギーに会った時「パンクにガレージ、サイケと、アランが好きだったものが今の音楽の主流になったね。なんかすごいね」と言ったら「俺が好きなものが主流になっているかい?」と否定されたので、「マイブラの再評価とかすごいじゃん、アメリカで評価されるなんて思いもしなかったよ」と答えたら「あっ、マイブラか、マイブラよりもね、オアシスの再評価が始まったら大変なことになるぞ」と言っていた。

その時はオアシスの再評価なんかくるのかなと思っていたんですけど、すごいところからきましたね。今一番おもしろい音楽シーンであるデンマーク、コペンハーゲンからオアシスに影響されたバンドが出てくるとは思いもしませんでした。しかもストロークスまで取り入れている。びっくりするでしょう、オアシスとストロークスを融合させたバンドがいるんですよ。なんて書くと〈えーっ、オアシスとストロークスを一緒にやれるわけないだろう!〉という怒号が聞こえてきそうですが、コミュニオンズはうまくやっているのです。彼らのファースト・アルバム『Blue』の1曲目、“Come On, I’m Waiting”を聴いてみてください。

ストロークスの疾走感、初期オアシスのいなたいドラムとリード・ギターによるサウンドの上に、ジュリアン・カサブランカスの知的でセクシーなヴォーカルとリアム・ギャラガーのたった一人で世界に立ち向かっているかのような巻き舌ヴォーカルが、うまくブレンドされているのです。

しかも彼らは、ルックスも最高。ヴォーカルは金髪の美少年マーティン・レホフです。2014年にマーティンの弟マッズ(ベース)と高校からの友人、ヤコブ・ファン・デュース・フォーマン(ギター)とフレデリック・リンド・コペン(ドラムス)とで結成。これまでにシングル2枚とEP2枚をリリースし、10代後半~20代前半という若さと〈ストーン・ローゼズ×リバティーンズ〉と評されたサウンドで、世界中のインディー・キッズが夢中になりました。ここ日本でも、12インチ「Communions EP」は予約で完売するなど大きな話題となったそうです。僕はあまりストーン・ローゼズとリバティーンズの感じは受けなかったのですが、〈この手があったか!〉と思わず叫んだくらい、オアシスとストロークスの感じをうまく自分たちのものにしているなと思いました。

いや、嘘です。彼らを聴いてみて〈なるほどな〉と思うのですが、自分ではオアシスとストロークスを混ぜようなんて一瞬でも考えたことありません。こんなことできるなんて思ってもみませんでした。そもそも、オアシスとストロークスは時代が違います。オアシスは90年代、ストロークスは2000年代、それをくっつけたら2010年代の音、そんな単純な話じゃない。90年代と2000年代だと時代が違い過ぎる。彼らがやっていることってレッド・ツェッペリンとヴァン・ヘイレンをくっ付けたようなもの。でも、そんなバンドいませんし、想像しただけでカッコ悪いです。いや、レッド・ツェッペリンとヴァン・ヘイレンをくっ付けたらカッコイイような気がしますが、どうやったらいいのかわからない。オアシスとストロークスを混ぜたらカッコイイとは思いますけど、どうやってできるのかはまったく見当もつきません。でも彼らはやっているのです。そしてカッコイイ。

  

 

音楽に対する純粋さが奇跡を生んでいる

音楽は足し算じゃなく、アップデートされていくものなのです。だから、コミュニオンズは一体なんてことをしてくれたんだ……なんて思わない。カッコイイから、許してしまう。なんでカッコイイのか? うーん、まったくわかりません。デンマーク、北欧の奇跡としかいいようがない。

同郷のアイスエイジによる、完全にジョイ・ディヴィジョンを焼き直したようなデビュー作『New Brigade』は許せました。アイスエイジには、80年代~90年代のジョイ・ディヴィジョン・フォロワーと違った純粋さと初々しさがあった。そして、ジョイ・ディヴィジョンからニック・ケイヴに変わっていく彼らにも何一つ嫌味さを感じませんでした。コミュニオンズにもアイスエイジと同じ魅力が溢れています。

アイスエイジの2010年作『New Brigade』収録曲“New Brigade”
 

デンマークのバンドには音楽に対する純粋さが残っているのです。それが彼らの奇跡を生んでいる。

10年前ほどでしょうか、タフ・アライアンス、レジェンズ、エンバシーといったバンドがスウェーデンから出てきた。これらのバンドは今のコペンハーゲンのバンドと同じように、音楽は違うけどどこか同じ匂いを持っていた。なぜ同じ空気を持っていたのかというと、どのバンドにも80年代のイギリス・インディーのチープだけど無垢なサウンドのテイストがあったから。

タフ・アライアンスの2007年作『A New Chance』収録曲“A New Chance”
エンバシーの2005年作『Tacking』収録曲“It Pays To Belong”
 

コミュニオンズやデンマークのバンドの魅力もまさにこれなのだ。オアシス、ストロークスといった大物バンドのギミックを恥ずかしげもなく取り入れながらも、彼らのサウンドの基本となっているのは80年代の素人臭いイギリスのインディー・サウンドで、それが彼らの核となっている。この部分がオタク志向な日本人に受け入れられている部分だろう。そして、これが彼らの魅力の秘密なのだ。

デンマークのバンドに影響された英語圏のバンドは出てきていないが、2010年頃にスウェーデンのインディーがやっていることに感化されたドラムスというバンドが現れた。それまで北欧のバンドといえば〈ユーロビジョン・ソング・コンテストね〉とバカにされる、甘ったるくてポップな存在だったのが、当時はアメリカの最先端と言われていたドラムスが〈タフ・アライアンスやレジェンズから影響を受けたよ〉と言っていて僕はショックを受けた。時代は変わっていっているんだなと。

ドラムスの2010年作『The Drums』収録曲“Forever And Ever Amen”
 

スウェーデンやデンマークのバンドがやっている、忘れられていたイギリスのインディー・サウンドを現代に蘇らせる手法は、アーケイド・ファイアが世界的なビッグ・バンドになっていったやり方と同じなんで、当たり前といえば当たり前なんですが、コミュニオンズを筆頭とするデンマークのバンドは、それ以上の何かを生みだすんじゃないかという気持ちにさせてくれる。コミュニオンズがアイスエイジのようにコアな方向に走るのか、それともアーケイド・ファイアのようにフェスでヘッドライナーを飾るバンドとなっていくのかはまだわかりませんが、僕は応援します。

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