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JOHANN JOHANNSSON
『メッセージ』に続き、『ブレードランナー』の続編の音楽を担当することが決定!

 突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船と人類とのコンタクトを描いた米作家テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」。この原作をもとに従来のSFの枠組みを超える重厚なドラマに仕立て上げられた映画『メッセージ』の劇中音楽を手掛けたのがアイスランドを代表するポスト・クラシカルの旗手、ヨハン・ヨハンソンだ。

 これまでも様々な映画/演劇音楽を手掛けてきた彼の出自は、他のポスト・クラシカルの作曲家と比べると少し異質なもので、自身のキャリアをロックバンドのギタリストから始めている。アイスランドという特殊な音楽土壌で、自身の主宰するレーベル「キッチンモーターズ」を通じて様々な音楽に触れてきた彼は、2002年に発表したソロ・デビュー作『Englabörn』以降、クラシック音楽とエレクトロニカ/アンビエントを折衷した独自の音楽性と情感の機微を捉えるような表現で、ジャンルを越えた現行のアーティストにも大きな影響を与えている。

JOHANN JOHANNSSON Orphee Deutsche Grammophon(2016)

 そんな彼の最新アルバムが昨年、クラシックの名門であるドイツ・グラモフォンからリリースされた『オルフェ』。ギリシャ神話の原典のひとつである詩人オウィディウスの『変身物語』をモチーフにした今作は、6年もの歳月をかけて素材の脱構築/再構築を繰り返し、楽曲そのものに変化/成長を与えることを止めなかったという。弦楽四重奏、弦楽オーケストラ、エレクトロニクス、ドローン、オルガン、ピアノ等で構成された楽曲は荘厳でスタジオ録音ならではの臨場感溢れるものである一方、ジャン・コクトーの映画『オルフェ』にインスパイアされたというラジオの短波放送のようなノイズも時折挿入され、単なる室内楽で着地していないところが彼らしい。また、フレーズのループを用いている事で、作品に通底して感じられる「悲しさ」のようなものが強調され、最終曲である『シアター・オブ・ヴォイセズ』の讃美歌でついにそれが報われる大きな流れは、ヨハン自身の抒情詩を受け取ったかのような印象を受ける。 (渋谷店 山岡弘明)

 

ヨハン・ヨハンソン JOHANN JOHANNSSON
1969年アイスランド生まれ。数々の受賞歴に輝く作曲家/ミュージシャン/プロデューサ。電子音とクラシックのオーケストラ・サウンドを融合させたヨハ ンソンの音楽は多種多様。映画音楽も数多く手がけジェームズ・マーシュ監督『博士と彼女のセオリー』(14)でゴールデン・グローブ最優秀作曲賞も受賞している。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と4本目のコンビ作となる『ブレードランナー』の続編(2017年10月全米公開予定)の音楽も担当、映画界でも活躍する人気コンポーザーである。